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「ホンダ『エンジンを捨てる』 新時代に挑む断固たる決意」に注目!

ホンダ「エンジンを捨てる」 新時代に挑む断固たる決意 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日本経済新聞は1月1日、企画「昭和99年 ニッポン反転」を始めます。連載を前に、長く続く停滞から抜け出すヒントを識者に語ってもらいます。今回は、ホンダ社長の三部敏宏氏です。

「ホンダは2040年に世界の新車を全て電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にし、『エンジンを捨てる』と表明した。過激な言い方だが、第二の創業期としてもう一度ゼロからスタートし、世界で勝負するという思いを込めた。新しい時代をリードしていく会社に生まれ変わりたい。」

「ホンダの商品にはすべてエンジンが付いており、エンジンで勝ってきた。私がエンジン部門や研究所のトップだったこともあり、社内には衝撃的だったようで反発は当然あった。だが、二酸化炭素(CO2)を出さないパワーユニット(動力源)を積んだ商品があれば、誰もが素晴らしいと思う。この方向性は絶対に間違っていない。」

「最大の課題はカーボンニュートラルだ。毎年のように暑くなる原因の一つはモビリティーから出るCO2である。『ホンダは地球温暖化に挑む』という一番の上位概念を皆で共有することが重要だ。『先の見えないエンジニアは一流じゃないぞ』と説いて回った。2年かかったが、研究開発部門だけでなくグローバルで理解が浸透した。電動化に向けてホンダとして勝負する体制が整いつつある。」

「自動車産業は100年に1度の変革期にある。変革後も産業をリードしたいと強く思う。護送船団方式で少しずつ変えていけばよい、という感覚ではリードできない。変革期は大変だが、絶好の機会と捉えて変えていく。逆に変えなくて済むのか。何も変えないで様子を見る企業が今後生き残れるかというと、絶対に生き残れないだろう。」

「『拙速』という言葉が日本語にはあるが、そんなことを考えていたら何もできない。変革期はアグレッシブに動かしていく。足元でEVの販売が踊り場に差し掛かっているという見方や、電動化の動きを鈍らせる業界の動きがあるのは認識している。2024年は世界で大きな選挙がいくつもあり、地政学的なリスクはある。」

「だが、ホンダの戦略に変更は全くない。カーボンニュートラルという絶対的な社会課題に挑んでいる。この軸はブレない。」

「ホンダのフィロソフィー(哲学)は社会課題に挑むことだ。簡単には手の届かない目標をまず明確に設定する。高いから届かない、できるわけないという目標でも、そこをスタート地点にしていかに到達するか。山の登り方を皆で考える。」

「1人の天才がホンダを作ってきたわけではない。ひとりひとりのアイデアが融合し、『ワイガヤ』と議論して高いレベルに到達する。過去にもできないと思われていた目標をクリアしてきた歴史がある。そんな時にこそ力を発揮するのがホンダの文化であり、風土だ。」

「創業者の本田宗一郎が会社を興したとき、社内には何のルールもなかったが、会社の規模が大きくなるにつれて分厚い社内ルールが出来上がってしまった。いまやガソリンエンジンのために作ったルールや考え方は、EVには役に立たない負の遺産(レガシー)だ。変えないものはホンダフィロソフィーのみ。ホンダにはその文化だけ残ればよいと思っている。」

「自動車以外の産業も含め、昭和の時代に作られた会社や事業は成功体験が残り、今もそれなりの利益をあげている。でも、大きな成長にはつながらず、伸びは停滞している。成長軌道にもう一度入るためには、既存事業と新しいことを明確に分けて進めるのが一番うまくいくのではないか。」

「ホンダでもエンジン車と電動車の事業を分離し独立させた。同じ会社でも事業で時間軸が異なる。既存事業から新しい領域へ移行していく間に生じる葛藤が、経営のスピードを阻害する。既存と新規の2つの軸を持ちながら経営していく。一つの『箱』でやっていると、変化に対応できない。」

「いま、最も変化が早いのは中国。新型コロナウイルス感染拡大のさなかも技術の進化は止まっていない。百度(バイドゥ)、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)、華為技術(ファーウェイ)といったソフトウエアに強い会社が多い。中国のEVの特徴は圧倒的な知能化だ。ホンダの先を行っており、本当に脅威と思う。」

「中国のエネルギーは今、一気に東南アジアに向いている。東南アジア市場は日本の自動車メーカーにとって重要な市場だが、日ごとに中国勢に市場を取られている。彼らは圧倒的なスピードを持っており、どう戦うのか非常に難しい。」

「米テスラのイーロン・マスク氏が『多くの人が世界の自動車会社トップ10はテスラと中国の9つの自動車メーカーになると発言しているようだが、私は彼らは間違っていないかもしれないと考えている』と話したそうだ。私もそういったシナリオは十分にあり得る話だと思う。中国は世界のそうそうたる大学を出た優秀な人たちがものすごい勢いで働き、どんどん進化していく。まさに30年前の自分たちを見ているようだ。」

「我々ももっとスピードを上げていかなくてはならない。従来の自動車会社が持っていた体内時計では全く役に立たない。2024年、2025年に勝てるわけではないが、2030年には少なくとも互角以上の勝負できる状況に持って行くべく、色々と手を打っている。」

「ホンダはこれからEVを起点にしたビジネスの具体的な打ち手を含め、その全体像を発信していく。例えば、北米ではホンダを含むグローバルな自動車メーカー7社が連携して新しいEV充電網を展開する。さらに米フォード・モーターや独BMWグループとEVの電力に関する情報基盤を北米で構築する。これらは戦略上、すべてつながっている。」

「実はEVと再生可能エネルギーを組み合わせるテスラと考え方は同じ。あとはいかにそこをリードするか。後追いや二番煎じではうまくいかない。リスクを冒さず、十分に確かめたうえで動くようでは世界をリードできない。」

「ソニーグループと提携して立ち上げたソニー・ホンダモビリティも私の中ではチャレンジの一つ。想定通り、ホンダとは全く違う方向性の車になりつつあって、非常に面白い。『おお、こんな風になっちゃうんだ。大丈夫かな』と思うくらい想像を超えてきてくれている。」

「それぞれ持っているものを掛け合わせることで生み出す新しい価値は日本の一つの方向性だと思っている。何も特殊な技術ばかりがイノベーションではなく、組み合わせでも新しいビジネスモデルを生み出せる。日本にはハードウエアが得意な会社はたくさんあるが、それはそれで武器になる。そこに掛け算で新しい価値をつくり出すのがひとつの戦い方だ。」

世界最大のエンジンメーカーであるホンダが脱エンジンに舵を切っています。環境負荷ゼロに向け様々な企業とバッテリー領域においてバリューチェーンを構築しています。なお、四輪電動化目標では2040年にEV/FCEV販売比率を100%に、2030年までにEV/FCEVの生産計画を200万台超/年間にする目標を掲げています。また、二輪では、2030年までにグローバルで累計約30モデルを投入する計画です。

このように既存のモビリティから変化をしていくホンダ。今後の取り組みに期待しています。