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「海外マネー呼ぶ半導体の黒子 SMC、時価総額が業界2位」に注目!

海外マネー呼ぶ半導体の黒子 SMC、時価総額が業界2位 本脇賢尚 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

空気圧機器大手のSMCが市場評価を高めています。ファクトリーオートメーション(FA)競合のファナックを時価総額で抜き去りました。海外投資家を引き付ける高利益率の背景に、豊富な在庫で短納期を実現するという独自の強みがあります。定石破りの戦略でシリコンサイクル(半導体市況の周期的な好不調)の次の高波を待ちます。

「シェア拡大の余地は」「半導体の波に乗れるのか」――。モルガン・スタンレーMUFG証券が1月に実施した海外機関投資家訪問で、機械セクターを担当する井原芳直株式アナリストに最も多く寄せられたのがSMCに関する質問でした。井原氏は「この半年でみればSMCの人気はキーエンスを超える」と肌で感じたそうです。

SMCの株価は10年以上にわたり上昇基調を保っており、2022年末比では55%高です。時価総額は6兆円弱とファナック(4兆円強)を明確に抜き、FA業界ではキーエンス(約16兆円)に次ぐ2位の座を盤石のものにしつつあります。

SMCは圧縮した空気を動力に変えるシリンダーなど空気圧機器を手がけます。工作機械や半導体製造装置に組み込まれ、「押す」「つかむ」「回す」といった動作を人の手の代わりに行います。FA大手では決して知名度が高くない黒子企業ですが、シェアは国内の6割強、世界の4割弱と高いです。

投資家の買いが殺到する理由の一つが利益率の高さです。2023年4〜12月期の売上高営業利益率は27%。ファナック(18%)や安川電機(2023年3〜11月期で11%)を上回ります。トップシェアを武器に高い価格競争力を保っています。

シェアを支えるのが70万点に及ぶ品ぞろえと豊富な在庫です。原材料調達から製品化を経て販売に至るまでの期間を示す在庫回転日数は4〜12月期で218日(約7カ月)と、FA大手で突出して長いです。

在庫は通常、多ければ多いほど現金化までに時間がかかるため資金繰りが悪化し、不良在庫も出やすくなるとされます。SMCはそのリスクをあえて負い、注文を受けてから顧客に届けるまでの納期を約3日と競合の1〜2週間より圧倒的に短くします。

SMCが短納期に注力するのは顧客が特にそれを求めるためです。空気圧機器は汎用品が多く、顧客は製品の性能や価格以上にほしいときにすぐ手に入る「即納性」を重視します。SMCは短納期を武器に価格交渉で主導権を握り、販売数量も上積みして利益率を高めてきました。汎用品は流行が過ぎることによる在庫の陳腐化リスクも小さいです。

SMCの人気が飛躍的に高まっていることのもう一つの背景に、FA大手の中で半導体向けが多いという特徴があります。JPモルガン証券が各社の売上高の最終製品別の比率を推計したところ、SMCは半導体・電機が35%とキーエンス(27%)や安川電機(25%)より高いです。

顧客は東京エレクトロンや米アプライドマテリアルズといった製造装置メーカーのほか、韓国サムスン電子、米インテルなどとみられています。

主要半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)によると、2024年の半導体世界市場は前年比13%増と2年ぶりに過去最高を更新する見通しです。SMCの太田昌宏取締役は「(軟調だった)シリコンサイクルは確実に戻る。各地域の半導体プレーヤーに何を売っていくのか、分析も相当進んでいる」と話します。

半導体向けで注力するのがチラーという機器です。半導体加工工程のレーザー照射時などに生じる熱を冷ましたり、薬液などの温度を調節したりするのに使われます。SMCの半導体向けビジネスの中でチラーの売上高は15%程度です。ゴールドマン・サックス証券の諫山裕一郎アナリストは「まだ市場全体でのシェアが低く、開拓余地は大きい」とみます。

豊富な在庫を強みに変える同社ですが、やや警戒が必要な水準にまできている。在庫回転日数はリーマン危機直後の2009年4〜12月期以来の高水準です。新型コロナウイルス期の供給網の混乱を受けて戦略的に積み増した樹脂部品などが今期に入ってくる一方、半導体向け受注が減りました。足元で在庫評価減による減益額が徐々に膨らんでいます。

半導体向け需要が読み通り順調に回復するのであれば、その果実を得るための弾込めは十分できています。投資家はシリコンサイクルの動向を注視すべきでしょう。

SMCは自動制御機器の総合メーカーです。主力製品である「空気圧機器」は工場の生産ラインにおける加工、組付けなどのFAや医療機器、半導体製造装置における自動検査装置など、あらゆる産業機器の自動化にかかせない機械要素部品となっています。また、空気圧制御機器にとどまらず、記事にあったチラーのような温調機器のように、周辺分野までカバーしています。

なお、顧客ニーズ素早く対応するため、エンジニアスタッフが1,700名程度います。さらに、製造部門は鋳造から機械加工等すべてを自社で行う一貫生産方式を基本としているため、納期の短縮を実現することが可能です。

今後もSMCの成長に期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。