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【人文情報学散歩(5)】ネットワーク分析による韓国文学界における中心と周辺の転倒


はじめに


こんにちは、今日はネットワーク分析による韓国文学界における中心と周辺を転倒した研究をご紹介いたします!この論文は以下のことです!

イ・ジェヨン, 作家, メディア, ネットワーク -1920年代小説界の巨視的展望のための詩論, 2014


儒教関連のセミナーをしているときに、最近ネットワーク分析論に興味があると言って、ある文学研究者の方が推薦してくれた論文です。問題意識も良く、方法論的にも初心者が見ても直感的で、導き出した結論もすごく、気に入りました!!!

1917~1927年の小説出版を中心に見た作家・メディア関係網
すごい!!
めっちゃおしゃれなネットワークが作られた!
韓国語ができないとわからないですけど、
ある程度、線があつまっているノードがメディアです。
小さい個別的なノードが作家です!
私も、ぜひそんなすごい分析をしてみたいですね。

論文の中へ


「この論文は、従来の文学史で様々な形で言及されてきた、作家"たち"が結ぶ人的関係の集団的性格に関する関心を引き継ぎ、一方ではその集団関係の探求を、質的方法論では見られなかった計量化の方法で解き明かそうとする詩論である。」

「質的方法論に基づく文学研究方法は、その方法論の対象となった作家、集団、制度に関する深い掘り下げにもかかわらず、個々の作家や作家集団が置かれる位置と役割を測るために必要なマクロ的な視点を反映するには不十分であった」

「統計的研究がなければ、1910年代1920年代の文学場には、文学史によく知られている数十人ほどの作家と、彼らが年に多くて四、五編ずつ書いた作品しかないように感じられたかもしれない。」

「しかし、統計に基づく計量的な研究が、それ自体で作家個人や作家集団間の関係を説明してくれるわけではない。人間関係の連続と拡張、断絶と再構成の運動を把握するためには一つの枠組みが必要であり、本論文はネットワークを通してそれを探求したい。」

「これを分析する方法の一つである「社会接続網分析(Social Network Analysis, SNA)」は、集団間の対人的接続(interpersonalties)を学術的対象として、集団と集団間の関係や集団が社会構造と結ぶ関係を調べることに強みを持つ。」

「ネットワーク研究は、作家を伝統的な作家論的立場から見た個人の個別的な体験や歴史、あるいは文彩ではなく、社会的で集団的な関係として認識するのを助けてくれる。つまり、社会接続網上の作家は常に複数形であり、一つの勢力の構成員となる。」

「この時期の文学作家たちは、単数で存在する個別的、孤立した、静的な存在ではなく、常に動き、勢力化できる複数形の関係であり、これを作家ネットワークと呼ぶ」

程度中心性(degree centraility): 一点が異なる点を持つ程度/一人の作家が作品投稿を通じて他の作家とつながった程度 つながっている程度

近接中心性(closeness centrality): 一点が接続の中心に位置し、他の点と容易に接続できる程度 / 一人の作家が他の作家との接続において中心(hub)の位置に置かれる程度

媒介中心性(betweenness centrality): 一点が集団と集団を媒介する程度 / 一人の作家が複数の作家集団の間で橋渡しをする程度 間で橋(bridge)の役割を果たす程度


1917年~1927年の小説出版を中心に見た作家とメディア関係

「1920年代の小説界を理解する上で、個々の統計ではなく、ネットワークグラフを使用することは、媒体間の相対的な距離を直感的、視覚的に確認するのに役立つ」。


小説家を中心に見た作家とメディアの関係
韓国文学界の中心だと思われた李光秀(이광수)は周辺に、
相対的にそうじゃなかったと思われたキム・ミョンスン(김명순)が中心になった!
キム・ミョンスン
李光秀

"要約すると、1917~1927年の小説界を社会連鎖網の形で視覚化してみた図は、(1)私たちがすでに文学史を通して知っている事実や、またそうであろうと仮定している現象を確認させてくれる一方で、(2)想像しにくかった事項を示している。"

"(2)一方、私たちが既存の文学史で想像していた世界とは異なる破格的と言える側面も見ることができる。...驚くべき点は、キム・ミョンスン、チェ・ソヘ、チェ・マンシク、パク・ファソン、ハン・ソルヤなど文学史の輝かしい作家を登壇させたイ・グァンスがネットワークの中心から外れている点である。一つのノードがネットワークの中心に位置するということは、他のノードからそのノードまで近距離アクセスが可能であることを意味し、それゆえに新しい知識や文物の伝播において有利な位置を占めるということでもある。そういう意味で、当然ネットワークの中心に位置するだろうと想像していた李光秀が中心ではなく周辺部に位置しており、むしろキム・ミョンスンのような、男性中心の動因の中で不快な関心の対象となった女性作家がネットワークの中心に位置しているこの図は、具体的な説明を必要とすると思われる。"

"キム・ミョンスンが幅広く媒体を選択して創作活動をした理由が、男性同人作家に差別され、積極的に文壇の中で媒体の場を見つけようとした結果なのか、それとも当時の文化のアイコンとして彼女が様々な媒体から求愛された結果なのかについては、もう少し深い研究が必要である。しかし、李光秀よりもキム・ミョンスンの方が幅広く媒体を選択し、小説を投稿し、イ・グァンスよりもネットワークの中心に位置することは確かである。"

"繰り返しになるが、ネットワーク分析によって得られた成果物を歴史的事実とみなすことは警戒すべきである。その点、ネットワークは文学史の想像物であり、その再現そのものではない。"

"私たちは、小説生産者としての作家や小説評価者としての作家の影響力を一緒くたにして想像してきたかもしれない。1920年代の作家のほとんどは、登壇して10年ほどかそれより少し少ない初心者だった。 したがって、作品の評価だけを主にする専門的な批評家集団がなく、創作をする作家のうち何人かが同僚の作品の批評まで担当したのが事実である。もし李光秀の文学権力がこの二つの影響力の混種のために増幅されて想像された可能性があるなら、もう少し細かな尺度を持って解体してみることができるだろう。この批評家の影響力を把握するためには、批評と批評の対象となった文学作品 の関係を求めることができる別の種類のデータが必要である。"

レジュメ

この論文は、1920年代の近代作家形成において、複数としての作家が結ぶ人間関係の集団的性格を社会連結網分析という枠組みを通して考察する。文壇史、作家論、文学組織論、媒体論及び制度史的アプローチなど、既存の様々な研究は、20年代文学黎明期の作家形成において、その形成が持つ集団的性格を様々な方面から探ってきた。 しかし、まだ個々の文学集団の人的連関とその関係の性格を相対的に明らかにするのに役立つ包括的な連関網は示されていない。このような方法論的限界を超え、一方では補完するために、本論文は計量的アプローチに基づいたネットワーク分析の方法を借用する。社会学、人類学で発展したネットワーク分析は、個人と集団あるいは集団と集団間の人間関係とその構造を視覚化し、分析するのに有用である。1917年から1927年まで新聞と雑誌に投稿された小説リストをデータとして、本論文は、小規模な同人作家の異合集散として理解されていた作家集団を、人的、媒体的関係がつながったマクロ的なネットワークとして理解し、その中で近代文学形成期にあった作家の位置と役割を新たに検討する。


デジタル歴史家
ソンさん


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