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EC物流とは?仕組み・特徴・課題・改善方法等を徹底解説!

EC物流を手掛けたいと思っていても、実際のプロセスや特徴を詳しく把握していないがために、参入できていない方もいるでしょう。
EC物流とは、「電子商取引(EC)」を全体的に支える物流システムのことです。EC物流全体には、入荷・検品、棚入れ(保管)、棚卸し(管理)、流通加工、包装・配送のプロセスがあり、それぞれが重要な役割を果たします。
この記事では、EC物流の基本知識から特徴、直面する課題、改善方法までを徹底解説し、その上でEC事業で物流が重要である理由についてもご紹介します。

この記事でわかること

  • EC物流における4つの特徴

  • EC事業で物流が重要である理由

  • EC物流で直面する課題とその改善方法

こんな方におすすめ

  • これから物流業界への参入を考えている

  • EC物流での顧客満足度・売上アップを目指したい

  • EC物流の全体像を明確に把握したい



1.そもそもEC物流とは?

EC物流とは、オンライン上で行われる商品取引、すなわち「電子商取引(EC)」を全体的に支える物流システムのことです。EC物流が指す範囲は広く、商品の保管から配送までの一連の流れを包括します。この項目では、EC物流全体の流れとして以下5つのプロセスに分けて解説します。

  1. 入荷・検品

  2. 棚入れ(保管)

  3. 棚卸し(管理)

  4. 流通加工

  5. 包装・配送

これら複数のプロセスは、売り手と買い手が物理的に離れているECビジネスにおいて、商品をスムーズに取引するために重要な役割を果たしています。各プロセスを1つずつ順番に見ていきましょう。

1-1.入荷・検品

EC物流は入荷・検品から始まります。まずは、ECサイトの取扱いテーマに合わせて、商品を仕入れましょう。
そして到着した商品の状態を確認する作業が検品です。この入荷と検品は、EC物流のプロセスにおいて特に重要となる作業です。検品では、以下のような内容をチェックします。

  • 商品が注文通りのものであるか

  • 商品に傷や汚れがないか

  • パッケージが適切であるか

  • バーコードや商品管理番号が正確に記載されているか

場合によっては、商品が破損して届くこともあります。その状態で顧客のもとへ配送してしまうと、クレームなどのトラブルに繋がりかねません。
したがって、商品を正しく顧客に届けるには、入荷と検品のプロセスが必要となります。検品を行う際は、精度と生産性の両立を意識しましょう。

1-2.棚入れ(保管)

入荷・検品が終了した商品は、棚入れ(保管)のステップへ進みます。棚入れとは、商品を適切な位置に保管することを意味します。
この棚入れを正しく行わないと、商品の保管場所が分からなくなり、顧客のもとへスムーズに配送することができません。この段階では、以下のような基準を踏まえて棚入れすることが推奨されます。

  • 商品の分類

  • 商品の大きさ

  • 商品の重さ

  • 商品の出荷頻度

  • 商品管理番号の多さ

このように複数の基準に基づいて商品を保管することで、出荷の速度と効率が大幅に向上します。また、商品の適切な保管は、商品の状態を維持し、品質を保つ上でも重要となります。

1-3.棚卸し(管理)

棚入れが完了したら、商品の棚卸し(管理)に移ります。商品の棚入れと棚卸しは似ているようで、全く異なる作業を意味します。
棚卸しとは、倉庫に保管されている商品の数量を確認し、商品の在庫状況を適切に管理する作業のことです。在庫管理は精度が求められ、リアルタイムでの情報が必要となります。
棚卸しを正確に行い、商品の過剰な在庫や欠品を防ぐことにより、顧客に商品が届かないリスクや無駄なロスが発生するリスクを軽減することが可能です。
また、棚卸しは売上総利益を計算する際にも役立ちます。売上総利益とは、売上から売上原価を引いた金額のことです。棚卸しは在庫を正確に把握するための作業であり、EC事業の成功において極めて重要な役割を果たします。

1-4.流通加工

商品の流通加工は、EC物流における重要なフェーズです。流通加工とは、入荷した商品に付加価値をつける作業のことです。商品が顧客の手元に届く前には、さまざまな加工が必要となるケースがあります。

【具体的な加工例】

  • ラベル付け

  • 包装材の変更

  • バーコードの生成

  • パーツの組み立て

  • ラッピング

例えば、アパレル商品の場合、商品タグの取り付けや洋服のたたみ直しが必要になることがあります。これらの作業は商品の価値を向上させ、顧客の購買意欲を刺激します。
商品のブランド価値を高めるためにも、商品を仕入れた後には、この​流通加工を的確に行う必要があるのです。

【大型家具や電化製品の場合】
大型家具や電化製品については、配送前に一部組み立てが必要なものがあります。流通加工によって、商品を無事に届けるための土台を作ります。

1-5.包装・配送

最後のステップとして、商品の包装・配送が挙げられます。特にBtoC向けのEC物流では、少量・多出荷が想定されるため、いかに効率よく包装・配送できるかがキーポイントとなります。
そもそも包装には、個装・内装・外装の3つのステップがあります。各種作業を行うことで、商品を安全に保護し、品質を保つことが可能です。

【個装・内装・外装の作業内容】

  • 個装:商品個々を包装する作業

  • 内装:外装と個装の中間の包装作業

  • 外装:包装貨物における外部の包装作業

商品を適切に包装することで、商品が配送中に破損するリスクを軽減します。また、包装は顧客が商品を開封する際の印象にも大きく影響するため、商品の特性や形状、配送の距離に合わせて最適な包装材を選び、丁寧に包装することが求められます。
配送のステップで重要となるのが、商品を予定通りの時間と場所に届けることです。配送方法は商品のサイズや重量、配送先の地域、顧客のニーズに応じて決まります。購入後の顧客の不安を減らすためには、配送情報の提供も必要となります。


2.EC物流の効率性が重要な4つの理由とは?

EC物流は、物流の一部門でありながら、伝統的な物流とは異なる特徴を持ちます。それらの特徴は、EC事業の運営において重要な役割を果たし、物流戦略の方向性を左右します。

【EC物流における4つの特徴】

  1. 配送先に対して商品の数量は少ない

  2. 包装などの個別対応が必要

  3. 配達スピードや多様な受け渡しの手法が重要

  4. 返品対応が起こる

各特徴を詳しく見ていきましょう。

2-1.配送先に対して商品の数量は少ない

1つ目の特徴として、配送先に対して商品の数量が少ないことが挙げられます。伝統的な物流では、一度に多くの商品を1つの地点に配送することが一般的です。
その一方でEC物流では、顧客一人ひとりが注文した少量の商品を、それぞれの配送先に届ける必要があります。つまり、配送先は必然的に増え、一回あたりの配送商品数は減るという特徴があるのです。
EC物流のこの特徴は、配送の計画や労力、そしてコストに大きな影響を及ぼします。多くの配送先に対して、よりスピーディーに、より正確に配送するためには、詳細な配送計画が必要となります。このような特徴を理解した上で、効率的な計画を立てるようにしましょう。

【BtoB・BtoCによっても特徴は異なる】
法人→法人、もしくは法人→個人によっても、その特徴は大きく異なります。BtoBの場合、業務に必要な商品をまとめて配送するため、1件あたりの配送商品数が多くなりやすく、配送先がBtoCに比べて少ないという特徴があります。

2-2.包装などの個別対応が必要

EC物流では、包装などの個別対応が必要になることも覚えておきましょう。顧客に商品を直接届ける必要があるため、商品の種類や個数、さらにはギフトラッピングなど、顧客の要望に応じた包装が求められます。
特に化粧品や健康食品など、定期的に購入されやすい商品を取り扱う場合は、顧客への個別対応が欠かせません。EC物流ではこのような個別対応が求められるため、以下のような要素に影響を及ぼします。

  • 人員の技術

  • 包装の時間

  • 資材

包装を効率的に行い、EC物流の生産性を高めるためには、適切な人材教育や計画的なプロセス設計が求められます。実店舗と同じように、個別対応が必要になる点を留意しておきましょう。

2-3.配達スピードや多様な受け渡しの手法が重要

3つ目の特徴は、配達スピードや多様な受け渡しの手法が重要になる点です。オンラインでの購入は時間や場所の制約を受けずに行えるため、注文後の商品到着を待つ顧客の時間感覚がますます短くなっています。
この状況に対応するには、多様な受け渡し手法を用いた迅速な配達が求められます。近年では、以下のような受け渡し手法が採用されています。

  • 直接手渡し

  • 置き配

  • コンビニエンスストア

  • 宅配専用ロッカー

  • 宅配ボックス

多様化する顧客のニーズに対応し、配送を効率化するためには、多様な受け渡し手法を取り入れる必要があります。これらを適切に管理し、顧客満足度を保つことが重要です。

2-4.返品対応が起こる

EC物流を手掛ける際には、返品対応が起こることも留意すべきです。実店舗での販売とは異なり、EC物流では返品対応が頻繁に発生します。
顧客はオンラインで商品を購入するため、商品を直接確認したり試したりすることができません。したがって、「期待と異なる商品が届いた」「サイズが合わなかった」などのトラブルが発生し、購入した商品を返品することがあるのです。
このためEC事業者は、返品が発生した時に効率的に対応するための体制を整える必要があります。具体的には、商品が返品された際の処理手順、再販売のための検品や再包装、返品が起こった際の在庫管理など、一連のプロセスを効率的に行うことが求められます。


3.EC事業で物流が重要である2つの理由

EC事業では、物流が極めて重要な役割を担っています。その主な理由として、以下2つのポイントに分けて解説します。

  1. 売上向上やUXに影響するため

  2. 細かい作業の負担が大きいため

物流が重要である理由を知ることで、より効率的な経営戦略を立てやすくなります。各理由を1つずつ詳しく解説します。

3-1.売上向上やUXに影響するため

1つ目の理由として、物流が売上向上やUX(ユーザーエクスペリエンス)に大きな影響を与えるためです。顧客が商品を購入し、その商品が無事に手元に届くまでの流れは、一連の購買体験の中でも重要な部分を占めています。

【一般的に重要視される物流の具体例】

  • 商品の在庫状況

  • 配送の速度

  • 商品の包装の質

これらの部分が充実していないと、ECサイトに対する顧客満足度が低下し、結果として売上の向上に繋がりません。
例えば、顧客が注文した商品がすぐに発送され、予定通りに届けられた場合、顧客はそのECサイトに対して信頼感を持つでしょう。一方で、商品が在庫切れであることが購入後に判明した場合や、配送が大幅に遅延した場合などは、顧客の不満を引き起こす可能性があります。
これらの理由から、EC事業においては物流が特に重要なポイントとなります。EC事業を成功させたい場合は、商品の在庫状況、配送の速度、商品の包装の質などに細かくこだわりましょう。

【関連記事】
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3-2.細かい作業の負担が大きいため

2つ目の理由は、物流に関わる作業が細かく、その負担が大きいためです。EC事業では、商品の検品、保管、発送など、多数のプロセスが連続して行われます。この中には、非常に繊細な作業も含まれており、その1つひとつが細心の注意を要します。
また、多くのECサイトは一般顧客をターゲットにしているため、配送先が必然的に多くなるほか、顧客満足度を高めるには配送スピートにこだわらなければなりません。
このようにEC物流は細かい作業が多く、スタッフやコストの負担になりやすいことから、戦略立案や分析などに注力できず、売上が伸び悩んでしまうケースがあります。その点、工夫を講じて物流の作業を効率化できれば、現場スタッフの負担が大幅に軽減し、結果として売上や顧客満足度の向上に繋がります。


4.EC物流で直面する3つの課題

EC物流はその効率性と精度から多くのメリットに期待できますが、同時にいくつかの課題も伴います。この項目では、EC物流で直面する3つの課題について解説します。

  1. ヒューマンエラーの発生

  2. マネジメント人材不足

  3. コストの増加

各課題を1つずつ紹介していきます。

4-1.ヒューマンエラーの発生

EC物流にはヒューマンエラーが付き物です。物流プロセスは、商品の検品から保管、そして配送まで、細部にわたる手作業を行います。その結果、操作ミスや誤った判断によるヒューマンエラーが発生する可能性が常に存在するのです。


【ヒューマンエラーの具体例】

  • 配送先の記録ミス

  • 商品の誤配送

  • ピッキング・検品ミス

例えば、商品の保管において、適切な場所に正確に配置する必要があります。しかし、現場スタッフの判断ミスや引き継ぎ不足により、間違った位置に配置してしまうケースが多々あります。
これらのヒューマンエラーは、顧客の不満を生むだけでなく、追加のコストを招くことにも繋がります。労働力に依存する物流作業の特性上、完全に排除することは難しいですが、適切なシステムとプロセスを導入することで、その発生率を著しく低下させることが可能です。

4-2.マネジメント人材不足

次に、マネジメント人材不足も深刻な課題として挙げられます。EC物流は広範で複雑な作業を含むため、これらを円滑に進行させるには、高度なスキルと知識を持つ人材が必要となります。
しかし、そうした人材の育成や確保は時間とコストを要するため、現場によっては人材が不足してしまうケースがあるのです。EC販売が軌道に乗り、受注量が大きく伸びたとしても、この人材不足が原因で入出荷作業に対応できないという場合もあります。
また、現場でマネジメント人材不足が発生すると、出荷遅延や出荷ミスが発生し、エンドユーザーからのクレームやキャンセルが起こり、結果として売上の低減に繋がる恐れも考えられます。

4-3.コストの増加

3つ目の課題はコストの増加です。これは、中小から大手までが考えるEC物流の長年の課題で、この問題が原因で売上が伸びないというEC事業者も少なくありません。
物流プロセスは、保管、搬送、配送など多岐にわたる作業が伴い、それぞれの作業で人件費や倉庫の保管費用などのコストが発生します。さらに近年では、運送業界の人手不足や再配達問題の影響により、運送コストが高止まりしています。
それに加えて、商品の種類や数量、配送地域によっては、これらのコストが大きく変動する可能性があり、計画通りに売上が立たないというケースもあるのです。
このように人件費や運送費用、システム運用費など、複数のコスト増加が懸念されることから、「EC販売で稼いだ利益がコストの増加で相殺されている」という悩みを抱えるEC事業者も多くいます。


5.課題への改善方法

それでは、EC物流が直面する課題への改善方法について解説します。改善方法の1つとして挙げられるのが、IT技術の活用です。
現代の技術は物流業界にも大きな影響を及ぼしており、特にEC物流ではその可能性を最大限に引き出すことで、多くの課題を解決する糸口となります。

5-1.IT技術の活用

IT技術の活用方法について、以下3つの項目に分けて詳しく解説します。

①マニュアル化によってミスを防ぐ
作業手順をマニュアル化することで、現場スタッフが確認しながら作業を行うことができ、ヒューマンエラーを大幅に減らすことが可能です。また、マニュアル化により、経験が少ないスタッフでもミスを起こしづらくなるというメリットもあります。
このマニュアル化は、タブレットやスマートフォンなどのデバイスにデジタル化で掲載し、リアルタイムで参照できるようにすることで実現します。

②情報の管理によるマネジメント人材の補填
2つ目の改善方法は、情報の管理によりマネジメント人材を補填することです。現場の物流業務を単純化・標準化し、現場スタッフに情報共有することで、知識やスキルのないスタッフでも業務を遂行しやすくなります。
一般的に物流業務は複雑で細かい作業を含むため、これを効率的に管理するには専門的な知識とスキルを持つ人材が必要です。しかし、ITを活用することで、データの分析や管理を自動化し、人材の補填を図ることが可能になります。

③コストカット
IT技術の活用はコストカットにも貢献します。EC物流はコスト増加が付き物であり、その課題を解決するにはコストカットが不可欠です。
例えば、AIを用いた在庫管理では、在庫の適正量をAIが自動的に算出し、過剰な在庫を抑制することが可能です。また、ルート最適化ソフトウェアを利用すれば、配送ルートを最適化し、燃料費や労働時間を節約できます。
これにより、人件費や運送費用など複数のコストが削減され、EC事業全体の利益アップが見込めます。コストカットできる部分がないか、細かくチェックすることが求められます。

【関連記事】
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6.まとめ

この記事では、EC物流の基礎概要や特徴、課題に対する改善方法を解説しました。
EC物流とは、「電子商取引(EC)」を全体的に支える物流システムのことであり、伝統的な物流とは異なる特徴を持ちます。EC事業では、売上向上やUXに影響する、細かい作業の負担が大きいなどの理由から、物流が極めて重要な役割を担っています。
EC物流の課題改善にはIT技術の活用が重要であり、IT技術を用いてマニュアル化、マネジメント人材の補填、コストカットを図ることで、EC物流の可能性を最大化できるはずです。今回解説した内容をEC物流の運営に役立ててみてください。


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