フォロワー
バイト前。
ファーストフード店でコーヒーを一杯飲むのが、俺の日課だ。
席に着くとスマホの画面上から、SNSアプリを開く。
現実でブサイクだ、隠キャだと言われても。
コツさえ掴めば、ネットの中では人気者だ。
やり方は簡単!
検索して、よさげな画像を添付してUPするだけ。
「くくくっ。フォロワー1万5千人超え〜♪」
投稿するたび、俺の人気は上がっていく。
「たまんねぇな」
フォロワー数をなで、アカウントの一覧を表示させる。
画面をスクロールするたび、俺の気持ちは高揚していった。
よしよし。
これでクソみたいなバイトも、乗り切れるぞ!
「もしかして、§さんですか?」
ユーザー名で呼ばれて、俺は反射的に声の方を向いた。
「すみません。画面が見えちゃって」
小洒落た身なりの男が、恐縮したように笑っている。
初対面の人間にためらいなく話しかけられるなんて…リア充め。
俺の苦手なタイプだ。
「や…気にしないで、ください」
「いつも見てます!毎日投稿、大変じゃないですか?」
席を立とうとした俺を、男が言葉で制す。
「…別に」
「それにコメント!すごく多いから、読むの大変でしょう?」
「いや…読まないんで」
俺は、SNSで交流を楽しみたい訳じゃない。
ただフォロワーを、増やしたいだけだ。
「なんだぁ、読んでないのか!じゃあ、意味なかったなー」
男が大袈裟に、溜め息を吐く。
しまった!嘘でも「大変です」って答えときゃよかった。
この後どう切り抜けようかと、俺は必死に答えを探す。
すると男は冷たい口調で、言い放った。
「何度も何度も書き込んだんだよ?“僕の写真、勝手に使わないで!”って」
うわ…コレ、あれか?
たまに見かける、ムダンナントカ?いう、面倒くさい系??
「あ、あの!すみませんでした!もうしないので、許してください!!」
店の中で頭下げときゃ、許してもらえるだろ。
はぁ〜…ツイてねぇー。
「気にしないでください」
数秒後。
男から優しい声が、降ってきた。
顔を上げるよう、促される。
目の前でやわらかく微笑む、男。
気まずくて、俺も口の端を上げた。
「僕も、君で有名になるからさ」
翌日。
男はマスコミで、大々的に取り上げられた。
詳細なプロフィールと、顔写真付きで。
一方の俺は、名前だけ。
クソッ!
これじゃあ俺のフォロワーが、増えないじゃないか!
#小説 #オリジナル #短編 #ショートショート #SS #シェア大歓迎 #意味がわかると怖い話
#意味がわかると怖いかもしれない話
いつもありがとうございます。もしも作品を気に入っていただけたら、Twitterなどに拡散していただけると、嬉しいです!!サポートは、創作の糧にさせていただきます!!