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次世代キャリアの観点 #3『キャリアの選択肢を持つ(前編)』

キャリアの選択ができるように生きる ということが本質だ。
つまり環境に依存しない、周囲に依存せず、自律的に、自分で判断軸をもって選べる状態を作ることがこれからの時代を生き抜くためには重要なのだ。
なぜあえてそのようなことをいうかといえば、日本の多くの企業が、環境が守ってくれるような制度になっているし、それを信じたい人は多い。だが、この先の変化を考えれば、実際は会社が守ってくれる保障はどこにもないのだ。

1)日本の雇用制度の特徴

日本の企業の多くがメンバーシップ型の雇用形態と言われている。
対して欧米の企業で多いのがジョブ型である。

メンバーシップ型はもともと終身雇用制度の考え方に基づいている。
社員を「会社」に紐づけ、ジョブローテなどを通じて長い期間をかけてゼネラリストとして育てていくことを前提としている。
だからこそ、日本の人事制度は様々な手当や階層が非常に複雑で、よくいえば社員に対してとても手厚くできている。

一方、ジョブ型は「仕事」に紐づく形で、採用される時点でスペシャリストとして、具体的な職務内容や待遇が定義され、その職務を全うすれば評価が上がるししなければ評価されないというシンプルな構造だ

人事評価制度のなかでの等級制度でもその違いが出る。
等級とはつまり、給与を決めるときにその指標となるランクのことだ。

日本型のメンバーシップの場合は、職能資格制度というのがよく使われる。
一方ジョブ型では、職務等級制度というのがよく使われる。

◆職能=従業員個人の「能力」を物差しにする(仕事内容は関係ない)
職務=職務記述書(ジョブディスクリプション)で明示された職務とその難易度を物差しにする(経験年数は関係ない)

それぞれにメリットデメリットはあるが、ここでは割愛する。

ただ、ここでの論点は、会社に依存することなく、将来「自分でキャリアを選択する」という力を養うことが大事だということだ。

2)キャリアショックに備える

『キャリアショック』については、慶應義塾大学の高橋俊介先生が多くの論文や著書を執筆されている。

例えば、従来大手グローバル企業の中でエリートコースと呼ばれ、順風満帆に企業の中でキャリアを形成していた者でも、企業買収、分社化、テクノロジーの進化、産業構造の変化、インターネットの普及、経済情勢などの昨今の様々な変化によって、本来歩むはずだったキャリアの曲線が突然消えてしまう、といったことが起きている。

この変化の多い世の中の中で、もはやキャリアの安全地帯は存在しないという警鐘である。

あるいは、例えば#1で話したほうなイノベーティブなサービスの延長で、すべての価格が無料に近づいていき、企業が自社でインフラをサービスとして提供する傾向が進行していくと、産業革命以降に確立された「労働をして資本を手に入れ生活する」という構造すらなくなるかもしれない。いわゆるベーシックインカムによって最低限の生活が保障されるようになると、そもそもの『労働』の概念すら変わっていく可能性も高い。

いつ何が起きるかわからないからこそ、自らのキャリアに対する責任を持たないといけないのだ。

3)働き方の変化の促進に向けて

ざっと労働の変化について、特徴的な数字をまとめてみた。

実際、日本でも様々な取り組みが始まっている。国が打ち出しているいるもので代表的なものは『第10次職業能力開発基本計画』である。

「人口減少社会、グローバル化の進展、AI、ビッグデータ解析などの技術進歩を背景に、ビジネス環境や就業環境は変化しています。そのような中では、人々が能力を高め、その能力を存分に発揮できる全員参加の社会と人材の最適配置とを同時に実現し、わが国の経済を、量の拡大と質の向上の双方の観点から成長させていくことが重要です。」(厚生労働省Hpより)

【背景】
・人口減少社会
・グローバル化の進展
・AI・ビッグデータ 等 によるビジネス環境・就業環境の変化

【目指す社会のイメージ】
・一人一人が能力を高め存分に発揮できる社会
・人材の最適配置

【基本計画の位置づけ】
・経済の量拡大+質向上=「生産性向上」
→そのための人材育成戦略が必要である!

【施策の主な骨子】
①生産性向上に向けた人材育成の強化
②「全員参加の社会の実現加速」に向けた職業能力底上げの推進
③産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進
④人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11801000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Soumuka/0000122963.pdf

こういった世の中の変化に対し、仕組みを整えながら、ひとりひとりがキャリアをポジティブに自律的に形成し、そして画一的ではなく持ち味を発揮し、生産性を高め、生まれてくる次の子どもたちに誇れる社会を作っていきたいものだ。

・・・続く。

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