好きの八方塞がり
両想いになり、彼氏彼女になったのに
なぜ目の前の人を愛しきらずに、次の人を愛せるのだろうか。
そんな疑問を抱く事件があった。
当時、付き合っていた彼が浮気をした。
信じたくないのに、女の勘は鋭くて。
彼がよそ見をしているという事実に直結するヒントを無意識に拾ってしまう。
拾うな!無視しろ!と言い聞かせても、言うことを聞かない。
とうとう耐えることができなくなり彼に問い詰めてみるも、はぐらかされたのは最初だけで、あっけなく「ごめん。」と謝られた。
ただ、その「ごめん。」には反省の気持ちは無くて、なんなんら「彼女がいるのに他の女の子にモテちゃってごめん☆」だった。
最悪!最低!
やべー男を好きになっちまった!
そう思ったのに。
浮気相手への想いは強かったようで、私が泣こうが喚こうが相手との縁を切ることはなく、彼と相手はこそこそと細々とずっと繋がっていた。
目の前で連絡先を消してたとしても、次の日にはまた相手とやり取りをしているのを見かける。
でも彼は「お前は俺がおらんとあかんもんな…」というモラハラ気質満点のお言葉で、私とは別れるまでには至らない。
虚しい情で私と彼の関係は成り立っていた。
浮気されているのに私は彼が好きだったので、虚しい情でも一緒に居てくれて私を優先してくれることで、彼の浮気を見てみぬふりをした。
それを彼はわかっていて、別れなかったのかもしれない。
だけどもう私と彼の歯車は合うことはない。
そうわかっていながらも、
どうしようもできない地獄を私は味わっていた。
そんな時、相談に乗ってくれていたのが
優しい銀色の人だった。
(トリュフパンをくれた人。
過去の記事『鼻で味わうキノコ』をチェックしてね)
さっさと別れりゃいいのに別れられない、どうしようもないウジウジした私の話を「うんうん、それは辛いね」と嫌な顔せず親身に聞いてくれてた。
本当に、本当に救いだった。
そんな救いの手に頼るも、ついに3度目の浮気が発覚。
もうたまらなく悔しくて、悲しくて。
私は心の底から泣いて泣いて、今が何時だとか近所迷惑だとか何もかも考えられないくらいに、泣き喚いた。
そんな私を彼も心底悔しく悲しい顔をして
わんわんと泣き喚く私を強く、強く、抱きしめた。
そんな彼の心の声が聞こえる。
「俺はなんてことしてるんやろ。
なんで俺はこいつを大事にできひんねやろ…」
あれは幻聴だったのかもしれないけど、彼の心の声を感じた瞬間にもう潮時なんだとわかった。
私が彼を好きでも、彼はもう違うフェーズにいて、何をどう足掻いてもダメなんだ…と心も頭も理解した。
そう理解して別れを決意したものの、私はまだ彼を愛し切ってなかったので離れることがとても辛かった。
重いかもしれないけれど、これが私の愛との向き合い方なのだった。
そんな私に銀色の人が、声をかけてくれた。
「好きじゃなくなるまで、ずっと好きでいたら?」
それは彼が外に出かけて家に居ない隙を狙って、救いを求めてかけた電話で、受話器から銀色の人の優しい声が耳に響いた。
その言葉が私の腹にストンと落ちてきたので、おかげですぐに行動に移し、浮気野郎と物理的に距離を空けた。
でも心の距離はゆっくりゆっくり、離れた。
浮気野郎のくせに
「大丈夫、ずっと側にいるから」と真っ赤な嘘をついて、私の歩幅に合わせて、ゆっくりゆっくりと赤の他人になった。
哀れな女だと我ながら思う。
そして形は歪でも、愛されてたんだと思う。
私は銀色の人からもらったアドバイス通り、トラウマにしてやるもんか!という意思で彼のことを好きじゃなくなるまで好きでいた。
焦って忘れようとした時もあったけど、やっぱり好きなもんは好きなので、未練タラタラと、細くずっと好きでいた。
浮気野郎な彼ともちゃんと思い出があるし、彼と出会えたことでいただいた幸せは消えない。
日々、目の前のことを熟す。
とにかく生きて、仕事して、ご飯を食べて、寝てを繰り返した。
時間薬だったのか、自分の努力が報われたのか、彼への想いが過去になってきたのを実感したとき、
「ここまできたか。」と呟いた。
ついに、私は彼を愛しきった。
私の過去の一部になったのだ。
愛しきった先は何があるのだろうか。
次は何が待ってるのだろうか。
心底泣いたあの頃の私には想像もできないくらい、目の前はとても明るい。
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