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【育児の成功体験】けっきょく抱きしめるのが一番いいのかもしれない(1,000文字)

浴室から顔を出して「いーよー」と言えば、「はーい」と妻が答える。

ほどなくして妻に抱えられた息子が登場し、服とオムツをはぎ取られ、丸裸の天使に変身した。

お風呂で遊ぶ用のおもちゃをたくさん用意しているので、興奮した息子が早く入りたいと湯船に手を伸ばす……のは普段ならの話であるが、この日は違った。

もうめちゃくちゃ泣いた。子閻魔にしかみえない。
理由は単純で、その日、リビングにも新しいおもちゃが来ていて、それで遊んでいる最中だったからだ。
たしかに連れてこられるのがいつもより30秒くらい遅かったから、たぶん「まだ遊ぶ!」みたいなやりとりがあったんだと思う。

泣き叫ぶ息子を必死になだめようと、いつものおもちゃで遊んでみたり、シャワーを逆にして噴水みたいにしてみても、全然ダメ。むしろ逆効果だった。

とりあえず頭と体は洗わないといけないので、いろいろと声をかけながらシャンプーした。子閻魔の絶叫にかき消されて、僕の声は届いていなかっただろうけど。

闘牛士さながらに体を洗い終えたのだが、いっこうに息子は泣き止まない。
「今日はシャワーだけにしといて、もう上がろうか」と少し前の僕なら言っていたけど、その日は「もうちょっと粘ってみようかな」という気になった。

ところが、おもちゃで気を引こうと思っても見向きもしない。
「今日は楽しかったねー」とか何を言っても、僕が声を発した時点で身を引き裂かれたかのように絶叫する。
もう無理ですやん感がすごかったので、最後に抱っこして、それで無理なら諦めようと決心。
暴れる息子を多少強引に抱き寄せた。
するとどうだろう、少し落ち着きを取り戻したではないか。

この一瞬を見逃しちゃいけない!

立ち上がって、話しかける。
「新しいおもちゃで遊びたかったんだね」とか「それでもお風呂きてくれて、きれいにできたね」とか、胸と胸をぴったりとくっつけて話しかけた。
びっくりするほどに、すん、と落ち着いた。これまでの絶叫が嘘のように。

子どもの切り替えはとても早くて、自分が落ち着いたらもう僕の話なんて「いや、もういいですから」とでも言うように、はやく降ろせと動きまくる。
そこからはいつもどおりお風呂の中で遊んだ。
あぁ、諦めなくてよかった。

リビングの新しいおもちゃがなくなってしまうかもしれないと不安だったのかもしれないけど、息子の本当の気持ちは正直わからない。
でも、抱きしめて、泣き止んだのは確かだ。

小さいショベルで洗面器にお湯を移動させている息子を見て、一気に心が緩んだ。
けっきょく抱きしめるのが一番いいのかもしれない。



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