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楽しくなければ、図書館じゃない。【ビブ人名鑑#5:磯谷梨紗さん】

ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。

今回のゲストは、長野県上田市で、学校司書としてビブリオバトルクラブを発足した、磯谷梨紗さん。
なぜビブリオバトルクラブでは、子どもたちが積極的に活動するのか?
その秘密に迫りました。

磯谷 梨紗(いそがい りさ)さん
ビブリオバトル普及委員会理事。本と珈琲で休日を過ごすあそびば、BOOK LAB ウエダ代表。ふだんは学校司書として勤務。「上田市立塩田西小学校ビブリオバトルクラブ​」として、Bibliobattle of the Year 2019 優秀賞受賞(個人として新人賞も同時受賞)。塩田西小学校は、ビブリオバトル活動を通し「令和2年度子供の読書活動優秀実践校」として、文部科学大臣表彰を受けている。Twitter: @booklab_ueda

ビブリオバトルはスポーツだった

ー 磯谷さんは小学校の学校司書としてビブリオバトルの普及に取り組まれていますが、ビブリオバトルと出会ったきっかけは何だったんでしょうか?

学校司書1年目の2015年に、研修会で県外の学校司書さんのお話を伺う機会があり、そこでビブリオバトルという名前を初めて知りました。
「本の紹介をゲームにする」ということにわくわくして、すごく惹かれたんです!
翌日には学校図書館にいる子どもたちに話をして、やってみよう!って動き出しました。

ー まだ話を聞いただけで、実践もしてなかったんですよね。すごいスピード感!

自分でもびっくりです(笑)
近くで開催している方がいなかったので、完全に独学でした。
主催者というよりも一人の参加者として、子どもたちと一緒に楽しんでみた、という形です。

ー やってみていかがでしたか?

休み時間の中で終わるように、バトラーは私を含めて3人で、発表時間が3分間のミニ・ビブリオバトルを行いました。
やってみると、3分間話し切るって難しい!
ってみんなで大騒ぎしました(笑)

ー 全員が初めてだし難しいですよね。それで子どもたちが嫌になったりしなかったんですか?

それが、逆に結束感というか、ともに乗り越えた団結力、みたいなものが生まれた気がします!
特に聞き手に回ったとき、「がんばれ!」って応援する雰囲気になって。

ビブリオバトルが終わった後、子どもたちの方から「次はいつやるの?!」って興奮気味に聞かれました。
すごく盛り上がって、楽しかったです。

ー 子どもたちも磯谷さんも、純粋にビブリオバトルの場を楽しんだ、という様子が伝わってきます。

そうですね。
始める前と始めた後で、雰囲気が全然違いました。
初めは片隅でなるべく静かに…と思っていたのですが、終わった後はスポーツした直後の空気というか、図書館に一体感がありました。

ビブリオバトルに参加してはいないものの、遠巻きに眺めていた子どもたちも、ゲームの後興味を示して集まってきて、「その本面白そう」「発表良かったね」といった感想を口にしてくれました。
チャンプ本を取れなかった私を慰めてくれたりもして(笑)

ビブリオバトルをしたことで、「子どもたちと同じ目線に立って楽しむ寄り添い方」もある、ということに気がつきました。
この日、本当の意味で子どもたちの仲間になれた気がします。

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「僕たちは真剣に遊びたいから」

ー 僕もビブリオバトルを普及している立場なので、そのエピソードをお聞きして嬉しいです。その後は定期開催するようになったんですか?

はい、月に一度の開催になりました。
それも私からの発信ではなく、子どもたちの希望から定期開催にした、という流れです。

ー 学校司書の方や先生が企画をして児童を集める、という流れが多いイメージですが、磯谷さんの学校では逆なんですね!

はい、逆かもしれません。
日程も、子どもたちが「この日の休み時間なら早めに来れそうだね」って打ち合わせて、提案してくれます。
私はそれを支えたり、一緒に楽しむ役回りだったので、子どもたちと私の共同主催と言ってもいいかもしれません。

ー その後、ビブリオバトルクラブが発足したんですよね。

はい。
「もっとたくさんの人数でやりたい」
「公式ルールの5分間でやりたい」
という子どもたちの声を受けて、2019年に課内クラブの1つとして発足されました。

ー 子どもたちのやる気が高まってる…!

図書館の授業中に行うことを考えたんですが、子どもたちが言うには、

「授業だとやりたくない子もいるから、それだと真剣に遊びたい僕たちは楽しくない」

そうなんです。
だから、本当にやりたい子だけが本気で楽しめる「クラブ」という形になりました。

ー 子どもたちのコメントがビブリオバトルの本質を突いてくるなあ。

面白いのは、クラブに入ってくるのが、必ずしも読書好きで本をたくさん読んでいる子だけではなかったことです。
いつもは外でサッカーをしているけど、ビブリオバトルの日は図書館に来る、という子もいて。
ビブリオバトルのゲームとしての楽しさのおかげかな、と思いました。

ビブリオバトルを楽しんでいるうちに、本を読むことが習慣になったり、好きになったり。
せっかく図書館に来たから本を借りて行こうかな、なんて子もいました。
ビブリオバトルでチャンプ本を取るために、自分の得意な分野からぴったりの本を探すことで、読書の世界に入っていく子どもたちがたくさんいます。

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ー 先生に言われたからではなく、ゲームに勝つため、というのが素敵ですね。

それから、チャンプ本を取るための発表の戦略にも、だんだん工夫が見られるようになっていきました。
会場を巻き込むためにクイズを加える子がいたり、工作が得意な子が本に登場するモチーフをあらかじめ作って見せたり。
発表の幅がどんどん広がっていきましたね!
子どもたちは、自分の得意なことや好きなことを表現しだすのがとっても上手です。

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楽しくなければ図書館じゃない

ー 子どもたちが本当に積極的ですね!どうして磯谷さんの学校図書館ではそんな風に児童が動いてくれるんでしょうか?

「楽しいから」に尽きるのではないかなと思っています。

「楽しくなければ図書館じゃない」というのが、私のキャッチフレーズです。
時には「図書館では静かに」という固定概念を取り払い、本を読む場所としてだけでなく、ビブリオバトルや本の話を思いっきり楽しめる場所。
子どもたちが「楽しい」と感じることを叶えられ、誰にとっても「楽しい」場所にしたいな、と思っています。

子どもたちは、学校で誰よりもビブリオバトルを楽しんでいて、だからこそ、何をして過ごしても構わない休み時間に、図書館でビブリオバトルをすることを選んでくれてるんだと思います。

子どもたちがそういう「楽しい」ことを見つけたとき、私自身もその気持ちに寄り添える司書でありたいので、機会を逃さず、図書館という空間を提供し続けようとしています。

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失敗を含めて、一緒に楽しむ

ー ビブリオバトルの導入を考えている学校司書の方に、アドバイスを送るとしたらなんでしょうか?

学校司書さん自身が、子どもたちと一緒に心からビブリオバトルを楽しんでほしいなと思います。

導入を考えるときって、自分の中で「こうなってほしい」という理想のビブリオバトル像、みたいなものがあると思うんですよ。
でも最初はなかなかうまくいかないものですし、むしろその失敗の過程を、子どもたちと一緒に楽しむ、という姿勢が大事だと思います。

特に、発表がうまくいかないのでは?と心配される方は多いですよね。
でも、その心配のために原稿を準備させたり練習させたりするハードルの高さが、ゲームの楽しさを損ないがちなのではないでしょうか。
ビブリオバトルでは、必ずしも整理された発表が良いとは限りません。
失敗しても大丈夫!楽しく話そう!という和やかな雰囲気や距離感を作ることを、私は意識しています。

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365日、本に関わっていたい

ー 磯谷さんはBOOK LAB ウエダというサークルでもビブリオバトルや読書会を開いていますが、こちらはなぜ始めようと思ったんですか?

BOOK LAB ウエダは、長野県上田市を中心に活動する読書サークルで、2019年8月に立ち上げ、1周年を迎えました。
それぞれの立場の枠を飛び越えて、もっと自由にビブリオバトルを楽しもう!と思い、休みの日に読書会を開催することにしました。

「人が好き。本が好き。
自宅でも、学校でも、職場でもないもうひとつのちいさな場所。」

というのがコンセプトで、子どもから大人まで世代を超えた本好きのコミュニティになっています。

ー すごくアグレッシブですよね!

ありがとうございます(笑)
立ち上げようと思ったのは、小学校のビブリオバトルクラブがBibliobattle of the Year 2019で優秀賞を頂いたのがきっかけかも。
それまでひっそりと楽しんでやっていたものが、こういう形で評価していただけて、すごく自信になりました!

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「本を通して、人生が変わる」

ー 磯谷さんの、これからの野望はなんでしょうか?

小学生がわくわくするようなビブリオバトルの本を届けたい!という野望があり、企画を練っているところです。
「本を通して、人生が変わる。」
そんな私のビブリオバトル体験をまとめたいなと思っています。

また、人と本がつながるきっかけ作りや、色んなカタチのわくわくを発信していけるように、BOOK LAB ウエダをお仕事にしていけたら素敵だな、なんて思っています。

ー 最後に、磯谷さんにとってビブリオバトルとは何か、教えてください。

たくさんの人と出会う場所、
たくさんの本と出会う場所、
新しい自分と出会う場所。

です。

ー ありがとうございました!

ありがとうございました!


磯谷梨紗さんが代表を務める、BOOK LAB ウエダのPVはこちら。

BOOK LAB ウエダのページはこちらから。


「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。

どうぞお楽しみに!

お読みいただきありがとうございました。

インタビュー・執筆:益井博史
取材日・場所:2020年8月12日(水)Zoomにて

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