フランス式面接

"Un violon dans mon école" 「私の学校にはヴァイオリンがある」を知り、子供好きなのと、教育が好きだったので、とても興味を持ちました。

しかし、フランス語に自信がありませんでした。フランスには8年住んでいましたが、ちゃんと勉強したことがありません。日常会話は大丈夫ですが文法と発音は怪しいものです。

今まで働いてきたのは、日本人家庭でのベビーシッター、日本人シェフのレストラン、個人レッスン。2019年からフランス人生徒にも教え始めましたが、あくまでも個人レッスンだったので多少言葉が出なくてもなんとか乗りきってこられました。

それが公立学校でのグループレッスンとなると一気にハードルが上がります。

さらには小学校から高校まで不登校児だったのでかなり根深い学校嫌いです。

ダメもとで取り合えず履歴書だけ送ってみたら、なんと、返事がすぐに来て、自宅から1時間で行ける学校で行われる面接に来てほしいと言う内容でした。

さぁ大変!面接内容は、10分間の質疑応答の後、15分間の4~5人グループを模擬レッスンするとのことでした。

グループレッスンは経験がなかったので、イメージを頼りにレッスン構成を考えました。面接で聞かれるだろう経歴もフランス語で答えられるように練習しました。

ワクワクが4割、ドキドキ6割で面接日を待っていたら、まさかのコロナで学校が閉鎖してしまい、一時保留になりました。3月の第一次ロックダウンが始まったのです。縁がないのかな、と心の隅で感じました。

5月半ば、先が見えなかったロックダウンが終わり、面接の詳細がようやく再決定したと電話が来ました。

が、しかし、面接会場が自宅から片道2時間半の学校に変更されたのです!

遠い!正直なところ面倒くさい、これは本当に縁がないのかも知れないと思い始めました。

面接日当日は、学校につくと入り口で体温チェックをされました。面接を受ける人リストにチェックされたとき、チラッと目に入ったのは何枚もの紙にぎっしりと連なる面接者の数!何人採用されるのか分かりませんでしたが、「あぁ縁がなかったな」と諦めました。フランス語での面接を経験出来るだけでもいい経験だ!と思うように心を建て直しました。

順番がきて、面接会場に入ると緊張はピークに達しました。

まずは経歴を訪ねられました。開口一番「も...物凄く緊張していて上手く話せません!!」と正直に言ってしまいました。

すると、「気楽にいこう。大丈夫。」と優しい言葉をかけてくれました。その後なんとか経歴を話し、質疑応答も自分なりに言葉を選び、頑張って乗りきりました。

いよいよ模擬レッスンです。4人の生徒が入ってきたのでそれぞれ名前を訊きましたが、聞き馴染みがなく覚えられません。

生徒たちのレベルがわからないので、「これはできる?あれはできる?」と探りながら、誤魔化しながら、なんとか15分のレッスン終了しました。一人の生徒が去り際に「すっごくよかった!」と言ってくれたのを今でも忘れません。

その後、レッスン内容について3人の面接官と意見を交わしました。「君はキャラが弱統率がとれないから、12人のグループを任せるには心許ないな。」と面と向かってはっきりと言われ、「私もそう思います...。」と正直に返事をし小さくなって会場を後にしました。

学校を出たときは解放感はありましたが、ダメだったなぁと、とてもガッカリしていました。頑張った自分にご褒美としてカフェにより甘いものを食べましたが味があまりしませんでした。

そんな面接だったので、後日採用メールが届いたときの驚きっぷりはお分かりいただけるかと思います。あの内容からどうして採用になったのか未だに謎ですが、嬉しいと言うよりは呆然としたのを覚えています。

教訓、フランス人は物事をはっきり言う。でもそれが悪い意味とは限らない。

そんなこんなで、2020年9月から、晴れて幼稚園のヴァイオリン講師になりました。

次回は担当している3校の第一印象をご紹介します。

最後まで読んでいただきありがとうございました!




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