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【読書日記13】『溺レる』/川上弘美

単行本は1999年、文庫版は2002年刊行。女流文学賞・伊藤整文学賞受賞の短編集。恋愛というよりは、愛欲に「溺れる」男女のお話8編。不安定な関係で、それだけに溺れて行く男女8組が描かれている。
なんだか怖い本だった。目隠しされてびっくり箱に手を入れたらぬめっとした感触の何かに触っちゃう、みたいな怖さ。易しい言葉でカタカナ使い、短い会話で読みやすいのに、深く世界観に溺れてしまう。川上弘美さんはすごいな、と改めて思った1冊。

https://www.amazon.co.jp/%E6%BA%BA%E3%83%AC%E3%82%8B-%E5%B7%9D%E4%B8%8A-%E5%BC%98%E7%BE%8E/dp/4163185801

さて、本書については再読なのであるが、どうしてこの時期にまた読んだかというと、私が暮らす北海道岩見沢市でこんなイベントがあるからだ。

女優の西田薫さんの朗読と、ギタリストの山木将平さんのギター演奏。『溺 レる』の中の『百年』という作品を公演される。切なく哀しく、美しくもおそろしい物語。

https://ameblo.jp/rukikaku/entry-12841586077.html

お二人の組み合わせで、太宰治の『あさましきもの』の朗読を拝見したことがある。岩見沢まなみーる2階のラウンジスペースで、ほのぐらい照明の中、ギターの音色と朗読の声。物語、朗読、ギター、空間の全部が溶け合っていて、その中に自然に自分も溶けていく感覚で、涙がとめどなくあふれてしまった。まさか泣くとは思ってなかった。その後、札幌のススキノを舞台にした朗読の公演も拝見したが、朗読とギターは癖になる。それこそ、奥のほうのぬめっとしたものに計らずも触っちゃう感覚。これが次は川上弘美さんの作品なんだから、いったいどうなってしまうのか。
今回、西田薫さんのご主人である斎藤歩さんが演出される舞台ということで、どんな演出になるのかもとても楽しみ。札幌では入場料があるが、岩見沢では、なんと入場無料で観覧できる。
昼夜2回公演なのも嬉しいところ。川上ファンだけでなく、お近くの方はぜひに。

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