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江田梢さん「遺品整理 特殊清掃の現場から」

遺品整理 特殊清掃「株式会社NICObit」代表取締役 江田梢さん
全国的にも珍しい女性中心の「遺品整理・特殊清掃チーム」として、県内外で活動する株式会社NICObit。迅速で親身な対応と高い技術力で、お片づけ後の満足度にも定評があります。自治体や不動産会社、葬儀社から多くの依頼を受ける代表取締役の江田梢さんに「現場のリアル」を発信していただきました!

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はじめまして、株式会社NICObit代表取締役の江田 梢と申します。
独立開業してから5年、この業界に足を踏み入れてからは7年少々になります。
九州圏内を対象に、遺品整理・特殊清掃・家財整理やゴミ屋敷整理の専門家として活動してきました。
近年はこうした業種についての漫画が出て来たり、テレビで取り上げられることも増えてています。
それでも、皆さんにとって、決して身近な存在ではないと思います。
一方で、まるで「モザイクの向こう側」を見るような、ちょっと覗き見てみたいというお気持ちがあるのも本音ではないでしょうか?

今日はこの場をお借りして、私がどのような仕事をしているのか、何を見て何に気が付いたのかを、少しお伝えできればと思っております。
出来ればほんの少しで構わないので、私の仕事の「魅力」に気が付いて頂けると幸いです。

地元は大分県ではなく、桃太郎・きびだんごや瀬戸大橋等で知られる岡山県倉敷市出身です。
高校を卒業し、APUへの進学を機に大分県へやってきました。
大学卒業後は別府市内にある介護施設へ就職。
転職で偶然「これから遺品整理業を立ち上げます」という会社で働き始めたのがこの仕事との出会いでした。

この会社があと少しで軌道に乗れそうだというところで残念ながら閉業することになりました。
「大分でようやく生まれた遺品整理の専門企業がまたゼロになる事が惜しい」と一念発起。
27歳の時に株式会社NICObitを設立しました。

余談ですがあっさり創業が決められたわけではなく、実際は1週間食事がまともに喉を通らないくらいの緊張や迷いがありました。
当時いわゆる「アラサー」。
結婚や出産を周りが迎える中で、このタイミングでこの仕事で起業するという事は、都度都度それらと天秤にかけていかなければならない。
一般的な仕事と異なり、お腹が大きくなるまで働けるものではなく、不衛生な場所で肉体労働することも多い業務内容から、「子供を授かったかもしれない時点」で働けなくなる。
「女としてもしかして結構ハンディキャップじゃないか?」
そんな事もさんざん考えたりしました。
しかし、どうなるかも分からない「たら」「れば」を心配するよりは、今実際にお困りの方たちの力になる事の方が大切だし、「この仕事を通して社会のお役に立っていきたい」という気持ちが勝ちました。

その結果、「子供の代わりに会社生んでやったわい」というくらい頑張ってやろうと腹をくくり、起業に至りました。
今は様々な修羅場をくぐってきた経験もあってか、「なるようになるし、だいたいなんとかなる。少々のことでは人は死なん」くらいの気持ちで生きております。
実際、人生そんなもんだと思っております。

起業に際して、これからどんどん増える業種だろうと考えた中、「依頼人に充実した選択肢を提供できるその1社になれたら」という考えから、全ての作業を女性チームで行う、全国にも数社しかない「女性チームで行う遺品整理・特殊清掃の専門企業」として歩み始めました。
他社との差別化という意図も当然ありました。

一人暮らしの高齢者の方や、依頼人が女性の場合、安心感を求めていたり、きめ細やかな作業をご希望の方々に喜んで頂いております。

私たちは仕事で部屋を空に仕上げることが多いですが、その空間に故人や依頼人、次に住む人、関係する方々への「笑顔のかけら」を残していける仕事をしよう。
そんな思いから笑顔ニコニコの「ニコ」、かけらを英語で「ビット」で社名の「ニコビット」としました。

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「最後の心の整理まで 一緒に分かち合う遺品整理」
遺品整理とは、漢字から容易にイメージできると思いますが、「亡くなった方の遺したもの、住んでいた場所を整理する」という業務になります。
この「整理」というのが複雑なもので、人が生活していた場所には様々なカテゴリーの物が溢れているわけです。
ざっくりお伝えすると「金品・貴重品類」「思い出の品物」「廃棄物(生活ごみ含む)」「依頼人が不要と言っている買い取れる品物」に分けることが出来ます。
こうしたものを探し出したり分別したりしながら、賃貸物件であれば「物件を返却できるように空に仕上げてほしい」、持ち家であれば「売却できるように仕上げてほしい」など、依頼人のゴール、ご要望に向けて現場を仕上げていくのが基本的なミッションです。

タンス預金・通帳・印鑑・保険証券等の金品貴重品類はどこから出て来るか分からない上、どなたも分かりにくい場所に隠し込んでいたりします。したがって、貴重品類の捜索には、本のページの間やかばんの全てのポケット内、衣類も同様にポケットの中等全てを調べ上げていきます。屋根裏や床下にも何かないか調べていきます。

思い出の品物とは、写真やアルバム、日記、遺品整理していくうちにわかってくる故人の趣味や大切にしていた品物等です。
金品貴重品類と同様、遺族が形見分けすることも多いので、もれなく見つけて回収していきます。

廃棄物については、ただ単に処分すればよいという簡単な話ではなく、自治体ごとに廃棄方法が異なったり、分別方法も大幅に違うため、下準備から重要になってきます。段取りを間違えれば違法行為になったりします。
時折、他県の同業者が廃棄物処理法違反で摘発されていたりするニュースも見かけます。依頼人からの信頼、業界全体の信頼を落とさないためにも、日々慎重に取り組むべき部分になります。
あと、現場でも依頼人含め全員が「ごみ」と分かっているものでも、粗末な扱いをしないよう気を付けています。ゴミだとしても、見方を変えれば故人が生きて、そこで暮らしていた何よりの証拠です。故人の尊厳を守って遺品整理していくのも、プロとしての腕の見せ所です。
さらっとお話ししておりますが、大きなタンスや重たい家電製品をエレベーターのないアパートの上の方の階から何往復もして搬出することもあります。
見た目のイメージ的には引っ越し屋さんのようなことを行います。
かなり肉体労働です。夏場は特に熱中症との戦いになります。

そして最後に「依頼人が不要と言っている買い取れる品物」ですが、処分して欲しいと言われている物の中にも、まだまだ使うことが出来たり、お金に換える事が出来る物も沢山あったりします。
書籍や食器、骨董品が出て来たり、CDやレコード、ゲーム類、貴金属等がよくあるところです。
換金できるものは換金して作業代金に充当することで、依頼人の金銭負担の軽減につなげられます。換金が難しいものでも、福祉施設等へ寄付をすることで、「遺品に新しい未来を与える・リユースする」という取り組みは、喜ばれることが多いです。
依頼人も「本音を言うと捨てるのは忍びない」と感じていることがとても多いからです。
「なるべく廃棄するものを減らし、買取やリユースをすることで遺品整理をしていく」。それにはノウハウの構築が必要で、業者として腕の見せ所になります。
時々、買取代金が作業代金を上回り、遺品整理をすることで依頼人の黒字になる事があります。依頼人も当然大喜びしますし、私達も良い仕事が出来たと嬉しくなる瞬間です。

これまでが一般的な遺品整理の業務内容です。
残念ながら歴史の浅い業界という事もあってか、悪徳業者が多いのも事実です。

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これは現場から実際に出てきた大金の写真です。
こうしたことは決して珍しくありません。
遺品整理業者として、こうしたものをもれなく依頼人にお渡しすることは大前提です。
しかし、悪徳業者の場合、金品をこっそり持ち帰ったり、作業代金をぼったくるような事をしたり、預かった廃棄物を不法投棄したり、大切な人を失って深く傷ついている依頼人をさらに踏みにじるような悪行を行う業者も実在しています。
こうしたところから、遺品整理業者に対し、ただのゴミ捨て屋さん、何をするかよくわからない人たち、というマイナスイメージを持たれている人が一定数おられます。
私は依頼人や故人に寄り添い、模範的な仕事を積み重ねていくことで、業者として、業界としての信頼を築いていくという事も使命と感じています。 

次は特殊清掃の話に移ります。
少しショッキングな画像が出てきますので、どうしても苦手という方は画面を見ないでお話を聞いていただければと思います。

「知った者の使命感で動く」
次に特殊清掃のご紹介をします。
「特殊清掃という言葉を初めて聞いた」という方はいらっしゃいますか?
ここ数年で言葉の認知度も急上昇したのではないかと思います。
平たくご説明すると、事件・自殺・孤独死等、血液や体液、強烈な悪臭や大量の害虫等で深刻なダメージを負っている空間を、何事もなかったかのように原状回復する業務です。
要は普通の清掃では解決しない場所をクリアーにする仕事だから特殊清掃と言っているわけです。
したがって先ほどお伝えした以外の現場でも、猫屋敷・犬屋敷、火災で焦げたり煤が回っている場所の原状回復や、最近ですと新型コロナウイルスの陽性者が発生した場所の消毒作業も請け負っております。
余談ですが昨年3月、ダイアモンドプリンセス号の除染作業に、日本代表チームとして参加させて頂きました。

大分県では殺人事件はほとんどありませんので、自殺現場や孤独死現場がメインフィールドになります。
主に遺体が腐敗したことによる室内のダメージ・強烈な悪臭が相手になります。
あと床一面の蛆虫とかゴキブリとか…
余談ですが夏場は特殊清掃ラッシュになります。なぜでしょう?
詳しくは言いませんが、夏は食べ物が腐りやすい、つまり……という事になります。

孤独死が発見されると、最初に警察による「検視」が行われます。
遺体の身元確認はもちろん、事件性の有無や死亡推定時刻・死因などが調べられます。ある県会議員の方の調べによると令和2年の大分県警による検視の件数は1281体との事です。事件や事故死も含みますが、これはつまり毎日3~4件、大分で誰かが誰にも看取られることなく亡くなっているという事です。
大分県でも孤独死は身近な問題なのです。

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遺品整理では特に依頼人の心に寄り添う作業品質が重要になってきます。
特殊清掃でもそれは共通ですが、こちらの場合さらに「完全に消臭できるか」「衛生的な環境の復旧が出来るか」という高度なスキルが問われてきます。
遺品整理以上に結果勝負のシビアな世界ですし、失敗すれば「臭くて人が住める状態ではない」わけですから、日々の勉強、現場での実践、新しい技術への探求心が本当に問われる仕事になります。
ちなみに「清掃」と言葉はつきますが、内装の解体等の大工仕事、清掃スキル、様々な消臭ノウハウが必要になります。
私は大分でこの仕事をする以上、業界最先端のものを大分に持ってこなくてはと思い、何度も東京へ足を運びました。
大都会の方が孤独死が多く、施工実績の豊富な業者が多かったためです。
専門の機材等を扱っているメーカーも東京に集中していたというのもあります。
情報収集をし、自分の技術になるよう一つ一つの現場で失敗の許されないトライをする。教科書も先生もいない世界で今日まで没頭してきました。
人が入りたがらない場所が仕事場になりますが、「ここまで学び、知った者の使命」と考え、日々勤しんでおります。

ここで皆さんの心の中をずばり当てたいと思います。
「孤独死の事をもっと知りたい」でしょう?(笑)

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昨年の一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会の発表資料を用いてご説明いたします。
まず孤独死者の平均年齢は男女ともに61歳と、平均寿命より約20歳以上若くして亡くなっております。
高齢者となる前に亡くなる方の割合も男女ともに50パーセント越えとなっており、この傾向は約5年前から続いております。つまり孤独死=高齢者のみの問題とは言えなくなっているのです。
男女別死亡年齢の構成比の表から、60歳未満の現役世代の孤独死者の割合は、約4割となっている事が読み取れます。

統計にもこのようにはっきりと出てきますが、私達のように日々孤独死現場に赴いている者からすると、この傾向は非常に実感が強いです。
うっすらと「独居の高齢者の方が孤独死しやすい」と考えていた方は多いと思いますが、実はもう少し若い世代の孤独死がとても多いのです。

働いている方であれば、急病で亡くなったりしてもまだ異変に気付いた職場の方が早期発見をしてくれる傾向にあります。
同様に高齢者の場合、デイサービスやヘルパーの利用などで見守り体制が整っている方が意外と多いです。こうした方々も、万が一の際に早期発見される事が期待できます。
ところが働いていない(不動産や投資等の不労収入で暮らしていける)、生活保護を受けている、福祉サービスは使っておらず、年金で暮らしているといった方々は、何かあって自宅で亡くなってしまっても、少々のことでは見つからないという事態が起こっているのです。
一昔前のような、地域や近隣のお付き合いというものも随分希薄になってきました。
アパートなどで「隣に住んでいる人が誰か知らない」が当たり前になってきているのです。
仮に気にかけていたとして、働いていて不思議でない世代の方を数日見かけなくても「忙しくしているのかしら」くらいに思ってしまうのは当然ですし、何もおかしくありません。

こうした状況から「どのような人が孤独死をしているか」については「高齢者に限らず働き盛りも含めた一人暮らしの人」という事で、一人暮らししている全ての人に、今の時代のリスクとしてある、という事を認識していただきたい。
物騒な話をするようですが、今日、この場にいる一人暮らしの誰かがそうなってしまう可能性も全くゼロではないわけです。
一人暮らしを脅すような話になってしまってすみません、良い所も沢山あるのは重々承知しております。

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孤独死の何が問題か
ここまでご説明した通り、これからの時代一人暮らしの誰にでも起こり得る「孤独死」ですが、何が一番の問題でしょうか?
私個人の意見にはなりますが、自宅で亡くなる事は決して悪いことではないと思っています。一昔前までは、死ぬときは自宅の布団で、家で亡くなる事はありふれていました。
無機質な病室のベッドの上で…よりはもしかして良いことかもしれません。
一番落ち着く空間だと思いますから。
「誰にも看取られず一人で死ぬ」ということも、人によっては望んでいることかもしれません。最後は一人でひっそりと…と考える方はいて当然と思いますし、間違いではないと思います。
「じゃあ何が問題か」
それは亡くなってから遺体が腐敗してしまうほどの期間、誰にも見つからないという事態です。夏場であれば2~3日、冬場であれば1週間(ただし暖房が効いていたりこたつに入った状態だと夏場と変わりません)、誰からも異変に気が付かれないんです。
「最近見かけないな」とか「電話がつながらないな」とか気にかけてもらえていないんです。
亡くなったことにフォーカスしていますが、もう一つ言えることがあります。
もし、「近くに気にかけてくれる人がいれば」「よく連絡を取ってくれる人がいれば」「しばしば訪問してくれる人がいれば」。
助かっていたかもしれない。
今日も生きていたかもしれない。

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「社会的に孤立している人が増えている」ことが引き金で孤独死が増えている。
特殊清掃の出番が増えてしまっていることが一番の問題ではないでしょうか。

ゴミ屋敷の実態
さて、次の話題としてゴミ屋敷の話に移りたいと思います。
ゴミ屋敷を見たことがある人いますか?
実物を見たことがある方は珍しいと思います。
画像を見ながら話を聞いていただければよいのですが、ご覧の通り、袋に詰めてゴミステーションに持っていけばよい生活ごみたちをそのまま家の中ため込んでしまっております。
普通に暮らしていればむしろ「不衛生だから早く捨てたいな」というもの。
例えば食べ物関係のゴミだったりトイレ関連のゴミだったり、そうしたものが室内に普通に堆積しています。
厄介なのが、これらゴミの中から当たり前のように金品貴重品類が出て来ることです。
ゴミ屋敷の依頼の際には、こうしたものの捜索活動も非常に神経をすり減らす作業になります。
家全体がゴミ屋敷の上に、賽銭箱状態のケースも珍しくありません。

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大量のペットボトル、ですが中身はなんでしょう?
正解は尿です。
男性のゴミ屋敷にしばしばみられる光景です。
ゴミでトイレへの導線が封鎖されてしまい、やむを得ず飲み干したペットボトル等の空き容器に排泄を行っているのです。
同様に多量の便が出て来ることもあります。

これほどの状況にしていても、住んでいる人たちには「何とかしよう」「トイレを使えるようにしよう」という発想がそう簡単には芽生えず、早い段階で「自宅ですが何とかしてください」という方はまだまだ少ないのが現状です。
近隣からの苦情や不動産会社の指示で半強制的に、あるいはヘルパーさんの利用を拒否されたとか、どうしても引っ越ししないといけないとか、外的要因でようやく対応するのが現状です。

遺品整理や特殊清掃の現場が「ゴミ屋敷」というのも年々増えています。
なかなか一般の方で解決するのは厳しいかと思います。

こういうお話をしていると、皆さんきっと「ゴミ屋敷に住んでいる人ってどんな人だろう?」思いませんか?
多分コンビニやスーパー、何かしらのお店等で、皆さんもすれ違ってきたと思います。
そう、一見お話するとものすごく普通の人たちで、見た目も決して不衛生ではなかったりします。
普通に会社員をしている人もいれば、世間で立派と言われる職業の方もいます。
表向きは皆さん普通の方たちばかりなのです。
ただ、やはり常識を逸脱した生活空間で生活するという事には当然理由があります。
全てのゴミ屋敷の住人の方々に、そうなる原因というものを見てきました。
そう、精神状態の問題です。

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精神疾患(うつ病や統合失調症)でセルフネグレクト状態になり、ゴミ出しすら出来なくなったというケースが一番多いです。
こうした場合、自分で問い合わせてくる方々は、病状が軽快してきた段階で一念発起されてご相談に来る方が多いです。
アルコールやギャンブル等の依存症で自分を失ってしまった方々にも見受けられます。
過去には強迫性障害で、病的に潔癖状態になっている住人が「ゴミと認識すると汚くて触れない。
汚いと分かっていても触れないので部屋にゴミが溜まっていく」とご相談された事もありました。
お伺いすると、「空間が汚いイコール自分の体の表面も汚い」という発作状態で、アルコール消毒液のボトルを何本も何本も風呂場で頭からかぶり続け、全身がただれてしまっている状態だったのは非常に印象に残っております。
元はかなりの美人なのですが、顔まで真っ赤にただれてしまい、悲惨なことになっていました。
私の顔を見るなり、わんわん泣きながら「助けて」と言ってきたのが記憶に残っています。

精神疾患とは異なりますが、最近メディア等で良く取り上げられる「発達障害」だろうなという方のご相談も珍しくありません。
必要な物と不要な物の区別がつかなくなって困っているというご相談も、年々増えております。
同居している家族などがいる場合でも、「本人の秩序に合わせていると家族の生活導線が崩壊してしまう」とご相談を受けることがあります。
一か所を片付けていると、他の箇所の事が頭からすっぽり抜け落ちてしまったり、逆にあちこちを中途半端に片付けようとする行動が積み重なり、結果全体的に散らかったままというケースも多々あります。

いわゆる「機能不全家族」の場合、一家で暮らしているお家が家族ぐるみでゴミ屋敷状態になっている事も多いです。

このように、ゴミ屋敷の住人たちは、表面ではなく、心の深い所に原因を抱えていたりするのです。
原因のないゴミ屋敷はありません。
少々だらしないレベルではゴミ屋敷になりません。
部屋の状態は心の状態とはよく言ったものです。
ゴミ屋敷として目に見える形になるというのは、ある種のSOSだと感じています。
本人たちが苦しみぬいた結果がゴミ屋敷なんです。
こういう話を聞くと、一概に嫌悪感しか抱けないとはならないのではないでしょうか?
私たちは、住人の心の救済も行うという心づもりで、ゴミ屋敷の片づけを行っています。

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孤独死する人とゴミ屋敷住人の共通点
さて、特殊清掃とゴミ屋敷についてお話をしてきました。
孤独死で発見が遅れる人と、ゴミ屋敷住人には共通点があります。
ピンと来ている方もいるかもしれません 

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社会的に孤立しているんです。
ゴミ屋敷住人が孤独死しているケースもすごい勢いで増加しています。
精神状態が悪化しているから、心が弱り切っているから、周囲と関わらない、社会になじめない、誰とも連絡を取らなくなった。
したがって支援する側からも見落とされている。
そういう方が増えているのが現代です。

そして、遺品整理やゴミ屋敷の片づけを続けていく中で目の当たりにしたのが、最後はゴミ屋敷に暮らしていたけれど、もともとは普通に衛生的に暮らしていた。
以前は社交的だった、友人も沢山いた。
外出して息抜きする事も知っていた、社会とかかわり続けて生きていた、という方たちばかりであったという事実です。
ある時までは。

何が言いたいかというと、「誰でもゴミ屋敷の住人になり得る、社会的に孤立するリスクと隣り合わせで生きている」という事です。

ゴミ屋敷の住人や孤独死される方々も、まさか自分がそのような事態になるとは思っていなかったでしょう。

でも普通の穏やかな人生を送ってきた途中で
・最愛の人を失って、思ったように立ち直れなかった。日々の暮らしに何の彩りも感じることが出来ない。何も楽しくない。
・職を失って、再就職して仕切りなおそうと思った。でも中々うまくいかなくて気持ちばかり焦り、やがて生活もすさみ、ふさぎ込むようになった。
・バリバリ働いてきて妊娠出産のリミット目前。でも結婚を約束した人がいるから大丈夫。この人とずっと一緒…と思っていたらまさかの破局。全部失ったみたいで心が壊れてしまった。
・人に騙されて財産を失った。大借金も抱えてしまった。もう人生終わった。

そうやって転んでしまってうまく立ち直れず、きっかけも逃し、そのまま社会的に孤立していく人たちばかりなのです。
これって誰にでもあり得る話だと思いませんか?
私にもあり得るし、他の皆さんにもあり得る事だと思います。
人生何が起こるか分かりません。

今日、ここにいる全員、社会とかかわって生きています。
明日も、来週も、3か月後も社会とかかわって生きているでしょう。
でも20年後は?じゃあ40年後は?誰も断言して「社会的に孤立していない」と言い切れませんよね。
これからの時代。
「社会とのかかわり」というのもとても重要なライフラインになってきます。
電気・水道・ガス・携帯料金…そこへ社会とのかかわり、と付け加えてください。

じゃあ社会とのかかわりは何を意識して保てばよいのか、という話になってきます。
私は普段様々な地域の高齢者の集まりでお話しさせて頂くことが多いのですが、いつもその時にお伝えさせて頂いていることを今日もお話しさせて頂きます。

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「よりよい余生に大切なのは〝きょういく〟と〝きょうよう〟である」
言葉だけだといまいち意味が分かりませんよね。
どういうことかというと、より良い余生に大切なのは「今日行くところがある 今日用事がある」という毎日を意識的につくるというお話です。
やることがある、つまり社会と関わる、こうした生き方が継続できるよう、是非皆さんも意識をしてみて下さい。
時々疲れて、休日に家に引きこもったりするのは良いことだと思います。
明日からのきょういくときょうようのパワーになります。

この言葉を是非覚えておいてください。
日々の中でもし孤独を感じたらこの言葉を思い出して、自分を奮い立たせてください。
コロナ禍で人と会わない生活、不要不急の外出を避ける生活が当たり前になりつつあります。
そんな時代だからこそ、意識的に社会と関わろうとする姿勢が、これから非常に大切になってくるのではないでしょうか。

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ありがとうございました。


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