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魔法つかいは図書館へ行く

このところ、双子の娘たちと三人でよく図書館に行っている。わりと本が好きな彼女たちに「とーしょーかーん、いーきーたーいー」とせがまれて、バスに乗る。

図書館にはハイハイする赤ちゃんにも絵本を読んであげられる広々としたスペースや、児童書・育児書がたくさんあって親子で楽しめるコーナーがある。

わたしたちは親子向けの席へ。娘たちは気になる本を手に取って、読む、を繰り返す。

彼女たちはびっくりするくらい静かに探したり読んだりしてくれる。だから、わたしも好きなコーナーで本を探しては「あ、これ今度買ってみよう」と思う。

先日は燃え殻さんのエッセイ『夢に迷ってタクシーを呼んだ』がすごくよかったので、帰り道にある本屋さんで購入した。娘たちにも『たまごのはなし』と『いちじくのはなし』をそれぞれ買ってあげた。

こんなふうに、図書館で親子そろって落ち着いて過ごせる日がくるなんて、以前は想像できなかった。わーきゃーと大騒ぎする双子を育て始めたばかりの6年ほど前なんて、とくに。

あの頃は毎日がはじめてのことだらけで、わたしは困り果てることが多かった。娘たちもよく泣いた。ときにかんしゃくも起こした。

波が押し寄せては引き、またやってくる浜辺のように、つねに泣き声と笑い声で交互に満たされる部屋のなかでは、静けさは夢みたいなものだった。彼女たちが同時にお昼寝してくれたときはガッツポーズしたいほど。いや、たまにしていた。「やった!」。

娘たちが本に夢中になっている様子を横目で見ながら、燃え殻さんのセンチメンタル感を味わえる日が来ようとは。「秘技・同時おんぶだっこ!」とかおもしろおかしく言って、さりげなく自分を鼓舞していた当時のわたしに教えてあげたい。

そういえば、昔から「もうしんどい……!」と思ったことはなん度もあった。そのたびに助けてくれる人が現れたり、自分も予想外にがんばれたりして、なんとか切り抜けてきた。いつのまにかいろいろなことが過去になったなあ、と図書館で気づく。

無理をするのはいけない。けれど、「まあいろいろあってもなんとかなるか」という境地に達することができた。ひーひー言いながら年を重ねた甲斐はあったと思う。

いつか過去になるから、だいじょうぶ。これは心強い魔法の言葉だ。

しおたにまみこさん『たまごのはなし』『いちじくのはなし』は、娘たちが今いちばん好きな本です。
人生のあり方に思いを巡らせたり、この世の縮図を見る気分になったり。
大人も感じるところのある素敵な作品です。


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