10倍に成長したあなたの優しさを見落としていた
次女が鉄棒で逆上がりに成功したときの動画を観返していたら、長女の優しさと私自身のいたらなさに気づいて涙ぐんでしまった。
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我が家の双子姉妹(6歳)はたぶん、運動が得意なほうではない。ピアノに向き合う情熱に比べたら、体育にかけるそれは軽く、どちらかというとインドア派。どんくさい私に似てしまったのか、と申し訳ない気もする。
6歳になっても逆上がりができないことがさらに体育や運動を嫌いにさせているようだ。「体育、いやや。逆上がり、できへんもん」、そんな言葉を彼女たちからなん度も聞いた。
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けれどある日、次女が逆上がりに成功した。次女は長女よりも体重がやや少ないからか、突然身軽にくるんと回って見せた。
念願の逆上がり成功。これは動画に収めなければ! 公園でiPhoneを構えた。そして、夜になって動画を観返していた。
親としては次女の成長を喜ぶ気持ちが大きく、その回りっぷりに目がいく。おおー、上手だねえ。やったねえ、すごいねえ。親バカが炸裂する瞬間だ。
でも、私は見落としていた。次女の背後で両手を大きくふるわせ、拍手する長女の姿を。
まだ長女は逆上がりができない。それでも、双子の妹が逆上がりに成功したことを心の底から喜んでいるふうだ。晴れやかな笑顔で、二の腕が痛くなりそうなくらいに手を叩く長女の姿はいじらしくてかわいくて、優しさに満ちていた。
そう、親バカついでに言うと、長女はとても優しい性格なのだ。私がバタバタと家の中を走り回っていると「お手伝いしようか?」としょっちゅう言ってくれる。
そんな彼女だから、妹のがんばりも讃えてあげたかったのだろう。動画は長女の優しさをちゃんと捉えていたにもかかわらず、私はあやうく見落としたままでいるところだった。
私も子どもの頃は「そっち側」だったのに。運動が苦手でなにごとにおいてもとろかったけれど、友達の活躍はいっしょに喜びたいと思っていた。とろい者はとろい者なりに、ひねくれてはいけないと心に決めていた。情けなさのなかに優しさと矜持を保つすべをいつも探していた。
大人になるにつれて、忘れていくものがある。自分だって弱くてちっぽけで、どんくさくて泣き虫だったってこと。できないことがたくさんあったこと。そして、子どもながらにプライドを持って生きていたこと。年を重ねるとともに小器用になっていく過程で、いろいろなものを置いてきてしまったらしい。
体重2500g弱で生まれた我が家の双子姉妹も、いまや24kg。ほぼ10倍に成長した。体格とともに心も大きくなっている。きっと彼女たちなりに自分と向き合いながら生きている。
長女の優しさに涙ぐんだ夜、親として見ていたいことは数えきれないほどあると知った。明日は二人をもっと抱きしめよう。
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