のぼせるまで褒めてみて
しばらく前から、双子の娘たちとお風呂に入ったとき、湯船でゲームをしている。
「いいところ10個いっちゃおうゲーム」である。その名のとおり、お互いのいいところを10個、挙げる。
たとえば、長女のいいところ。
「長女ちゃんは優しいよ!」
「お絵描きが上手よね!」
「字がきれいなところ!」
「脚も速いよね!」
「挨拶がちゃんとできる!」
「まじめなところ!」
「折り紙でなんでもつくれるところ!」
「髪の毛がくるんとしててかわいい!」
「おやつのとき、ママにお菓子をわけてくれた!」
「お尻がぷりっとしてる!」
こんな感じで、当てられた人は相手のいいところを10個言う。そのあと、相手にも10個言ってもらえば湯船から上がれる。最後のあたり、いいところと言うべきなのか微妙なものが混じっているけれど、それもまた面白さの一つだ。
この遊びをするようになって、二人とも褒められる嬉しさに目覚めたようだ。
お風呂以外の場でも「ねえねえ、長女ちゃんのいいところ教えてよう」とねだってくることがある。わたしは言葉を惜しまず伝える。都度、いいところはちょっとだけ変わる。
わたしは子どもの頃、あまり褒めてもらえなかった。昭和、平成初期の子育てでは、自分の子について謙遜するのが当たり前の雰囲気があったように思う。
「うちの子なんて全然だめよおー、勉強はしないしスポーツもできないしで、困ってるのよー」
わたしの母は、そんなふうによく言っていた。その背後でわたしはいつも落胆していた。わたしなりに頑張ってるのにな、と。あのせつなさは今でも忘れられない。家の中でも同じような感じだったので、わたしは褒められるのに慣れていないし、自分に自信もないほうだ。
だから、わたしは娘たちと向き合うとき、褒めることを大事にしている。あのときわたしが抱いた気持ちを味わってほしくないと思うからだ。もちろん、叱るときは叱るけれど。
このあいだ、次女が言っていた。
「ママが褒めてくれると、元気になるねん」
その笑顔がぱあっと輝くのを見て、わたしは思わず次女をぎゅーっと抱きしめた。
たくさん褒められて、たくさん自信をつけてほしい。「わたしは大丈夫だ」と信じる心は、なにより力強い後ろ盾になってくれるんじゃないかと思う。
今夜もきっと、お風呂で「いいところ10個いっちゃおうゲーム」をするだろう。なかなか10個も浮かばなくて、湯船を出るのに時間がかかっても構わない。ちょっとのぼせるくらい、どうってことないのだ。