見出し画像

淡々、たんたん、だんだん

「淡々と、でも着実に仕事をこなすところがあなたの強みだと思う」

会社員だった頃、先輩が私についてこんなふうに言ってくれた。当時の私は、地味だと言われることも多い部署で働いていた。小柄だから「○○部のちっちゃい女の子」なんて呼ばれることもあった。

そんな感じで「なんだか毎日さえないよなあ」と感じるときもあったけれど、自分に与えられた仕事はまっとうすることにしていた。私は意外とまじめというか、小心者なので、仕事を残していると気が咎めるタイプ。その日のタスクはこつこつとこなしていた。

やらなければならないことがあれば、周囲の状況に振りまわされずに淡々とやるところがいいと言ってもらって、私は嬉しいような、ちょっと情けないような、複雑な気持ちになった。それって、いいことなのだろうか、と。

淡々? 意識して淡々としているんじゃなくて、淡々と構えることくらいしかできないからそうなっているのだ。着実にこなすと言ったって、それがちゃんと積みあがっていっている自信も持てなかった。

半分嬉しく、半分情けない、ゆらゆら揺れる振り子のような感情は、ごく最近まで私についてまわっていた。まわりにはもっと華々しい強みを持つ人がたくさんいる。思わずうらやんでしまうくらいの成功を収めた人もいる。私とあの人はなにが違うだろうと思い、結果たくさんの違いを発見してしまって悲しくなったこともある。

でも、ここのところ、淡々と仕事を進める自分のスタイルが好きになりはじめている。仕事関係の方からありがたい言葉をいただくこともあった。派手さはないけれど、私には私の戦い方があるんだろうと思えるようになった。たんたん、こつこつ、も悪くない。

あのとき複雑な心持ちで受けとめた「淡々」が、だんだん私のなかに核として居すわりはじめた気がしている。

先輩はさえない後輩に重大であたたかなメッセージを寄せてくれたことなんて、もう覚えていないだろう。けれど、私はあの言葉を胸に抱いて生きてきた。

華々しくなくていい。私は私の道を歩きたいなあと思う。

#みんなで書く部
#これがわたしのいいところ

この記事が参加している募集

#私は私のここがすき

15,626件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?