夏をわたるメルカドバッグ
メルカドバッグを買った。
もともとはリサイクルプラスチック素材を編んでつくったバッグをメルカドバッグと呼ぶそうだ。メルカドとはスペイン語で「市場」という意味らしい。
わたしがメルカドバッグを見かけるようになったのはかなり前だ。7、8年前にはもう「お、かわいい」と視線を走らせていたと思う。
使いやすそうなところが気になっていたものの、これまでは購入に至らなかった。わたしは基本的に革のバッグを使っていたからだ。
けれど、今年はとんでもなく暑い。汗をたくさんかくほうではないわたしも、毎日汗だくで過ごしている。バッグの持ち手もベタベタになる。こう暑いと、涼しい季節であれば愛おしく思える革バッグの重さが憎らしくなってしまう。
ええい、軽くて扱いやすいバッグが欲しいわい。
多少汗がついても、タオルでさっと拭けば済むようなバッグ。ぽんぽんものを放りこめそうなデザインのバッグ。そういうのが欲しい。
ちょうど、急に一泊旅行が決まったことだし、買おう。
ふだん使っているバッグとほぼ同じサイズのメルカドバッグをネットで見つけた。ブロンズ色がシックで、お値段も手頃だ。数日考えてから、ぽちっと購入ボタンをタップした。
しばらくして手もとに届いたメルカドバッグなるものは、しゃれているのに驚くほど軽い。文庫本とノート、お財布に家の鍵、ハンカチなどがしっかり収まり、使い勝手も抜群だ。
なんだなんだ、軽いバッグってめちゃくちゃいいじゃないか。肘の関節のところに引っかけてひょいっと出かけられる。
新しい気楽さを知ってしまったわたしは、心を浮き立たせている。このところ、軽々に洋服を買わないと決めていて、実際にほとんど新調することはない。でも、こんなバッグは例外だ。
今夏は、この子とたくさん出かけよう。近所へも、小旅行へも。汗をかいても拭けばいい。軽いバッグとともに、わたしは今年の夏をわたる。
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「洋服は熟考のうえ買う」作戦も継続中。