角の洋品店で会いましょう
ご近所用のスヌードを、やっと、やっと見つけて購入した。スヌードとは、マフラーのように首に巻いて保温性を高める防寒具。マフラーと違うのは、環状になっていてすっぽりと頭からかぶれるところだ。
頭を通して首に巻くからかんたんでいいのだけれど、装着するときにどうしても髪の毛が乱れてしまう。ふだんヘアアレンジをしていることが多い私は「髪がぐちゃぐちゃになるのは嫌だなあ……」と思い、いろいろなスヌードを物色し続けていた。
先日、ふとスーパーの洋品コーナーを覗いてみたところ、エコファーでできたスヌードに出合った。前側にマグネットホックがついているので、厳密にはスヌードとは言わないのかもしれない。とにかく、くるっと首に巻いて、マグネットで留める。楽ちんワンタッチ。これ、いいなあ、便利そうだなあ。
そのスヌードを手に、むむうと悩んでいると、老婦人に声をかけられた。ちゃめっけを宿した瞳が印象的な方だ。
「あなた、首寒いでしょー、それきっとええわよー」
私は、丸首のキルティングコートを着ていた。首もとはがら空き。だから寒くて、ずっとスヌードを探し求めていたのだ。
「はい、これあったかそうだなーと思って」
私の答えに老婦人はにこにこして「首はあっためないとあかんのよー、冷えは万病のもとやからね!」と返し、スヌードをすすめてくる。言っておくが、この方は店員さんではない。
私は楽しくなってしまい、老婦人と少し立ち話をした。このスーパーの洋品コーナーは案外いいものがあるとか、月のいつ頃にはセールがあるとか、いろいろなことを教えてもらった。なぜか私はこういう感じでおばあさま方によく話しかけられる。
結局、老婦人が見立ててくれた色のスヌードを購入、今日も使っている。マグネット式なので、使わないときはバッグの持ち手に巻きつけておけるのがとても便利。
ご近所を闊歩するには、お手軽なアイテムがいちばん重宝する。百貨店でもネットショップでもない、意外なところで意外なモノに出合えた。老婦人との楽しいひとときとともに。
「あ! あの角の洋品店もなかなかいいのよ。また行ってみたらええわよ」
老婦人の声を思い出す。年配の方がよく利用している、あそこの洋品店のことだろうか。私にはまだ早い気がするけれど、なんだか無性に行ってみたくなった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?