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大変だった仕事と楽だった仕事 後編

 群像新人賞文学賞の〆切は10月15日、WEB応募なのだが、今まで〆切ギリギリに書いてきたのはよくないと思って、今回は敲きに敲く時間を作ることにした。目標240枚で、期限は9月1日!この日にTwitterの執筆仲間と地元のMくんに原稿を渡せたらなと思い奮闘中である…のだが、エレキギター熱が爆発して、ギターを弾きまくっている…。こんなことではダメだ!という訳で、noteを書き終えたら執筆します。

    今回、2004年から2015年までお世話になった出版社について書こうと思ったのだが、なにをどこまで書いていいのかわからないのでまた機会を見て。
 それでもひとつ印象に残ってるのは、部下が提出した企画書を没にして、その企画書で書いてもらうことを予定していた大学教授がその企画をまるまる流用して他社で出したらヒットしてしまったこと。この時は、上司にめちゃくちゃ怒られた。僕は『進撃の巨人』を読んだことはないが、あのマンガを門前払いした集英社の編集者のことを思うといたたまれなくなる。それほど、なにがヒットするかはわからないのだ。

頭と身体を使う仕事、運送業の仕分けと積込

 脱サラして最初にやったのが、朝の5時から数時間ほど荷物を仕分けてトラックに積み込む仕事だ。
 この仕事、なにも考えないでもできるのだが、僕はどんな仕事でもよりできるようになるのを目指してしまう性質なので、いろいろな工夫をした。
 運送屋の倉庫には20人くらいの仕分け作業員がいるのだが、この作業員、大きく分けて「伝票をちゃんと読む人と、指定日指定時間番地しか見ない人」に分けられる。例えば、5時半頃にトラックの積込をしていて、「中島太朗」という人の指定日指定時間なしの荷物を3個積み込むとしよう。そして時間がすぎ、「中島太郎」の夜間指定の荷物を1個見つけるとする。基本的に、早朝のトラックには午前中の荷物しか載せないので、気の利く仕分け作業員は「時間指定なしの中島太郎の家に午前中行って、夜間にもう1度中島太郎の家に行くのは面倒だ。時間指定なしの荷物3個、トラックから下ろして夜間指定の荷物とまとめておこう」ということができるのである。これができると、配達員に凄く喜ばれる。
 しかし、2年半ほどやっても僕にはこの伝票読みの技は身につかなかった…。
 それでも、注意力と体力の両方を使うこの仕事は賃金も良かったし、大変でありながら楽でもあるという感じだった。

死ぬほど楽だけど…図書館の仕事

 図書館のスタッフの仕事は、死ぬほど楽だった。最低賃金なのも頷ける。ただ、僕の勤めた図書館は新人教育がボロボロで、「もっと上手い教え方あるじゃねえか」と思ってた。
 例えば、一般的な貸出しのやり方を教えたら、予約資料の貸出しをする上に本棚の資料も貸出し、返却も受け付けるといった合わせ技をいきなり教えるのだ。
 こういうのはかなり誤解されていると思うのだが、難しいことができたら簡単なことなんて文字通り簡単になると思っている人がいる。1,500ページの本が読めたら掌編小説なんて簡単に読めるようになるだとか、ジャズが弾ければフォークは簡単とか。それは、ハッキリ言って違うと思う。難しいものには難しいものの、簡単なものには簡単なもののコツのようなものがあるのだ。
 僕の好きなプロ野球選手OBに広岡達郎という人がいる。スワローズを初優勝に導き、ライオンズ黄金時代を作った名監督だ。彼はもともとは、コーチとして非常に評価されていた。彼は言う。「難しいノックをして内野手を右に左に動かすより、まずは何度でも正面にノックを打つ。そして、ゴロというのは怖がらなくてもいいんだとわからせるのが大事だ。右に左にノックを打つと、内野手はいずれヤマを張って勘で左右に動くようになったり、難しいゴロは来ないでくれと思うようになる。これは指導者の自己満足。まずは基礎を怖がらずにできるようになること」。(詳しくは海老沢泰久『監督』『みんなジャイアンツを愛していた』を参照のこと)
 僕はこの広岡達郎の理論に感銘を受けたし、ギターの師からは「難しいことに背伸びするんじゃなくて、できることを繰り返していれば難しいことの方から降りてくる」という言葉を大切にしていたので、図書館の仕事でも館長に「新人に教えるの僕にやらせてくれ」と言い、何度も基本動作を繰り返して手続きに対する苦手意識を取り除くことにした。手前味噌だが、これは館長に褒められて嬉しかったのを覚えている。
 その一方で、図書館は基本的に暇で、1日に450人くらいしか来館しないため、無駄口を利く余裕があった、そのことによって不必要なまでに人間関係がある職場だったのには閉口した。まあ、24歳の正社員が27歳のパートタイマーのことを「あいつ」と呼んだりするのはなんだかなあと思ったものだ。

本当に大変な仕事、コンビニエンスストア店員

 さて、これまではどんな仕事も内容そのものは簡単だったという話をした。しかし、そんな僕が明らかにこの仕事は大変だと思ったものが一つある。それはコンビニエンスストア店員だ。
 コンビニ店員は、ハッキリ言ってもっと賃金をもらっていい。なにせ、やることが膨大なのだ。レジや品出し、清掃というのはお客さんにもわかる仕事だけれど、ATM、コピー機、券売機の操作と簡単な修理、宅急便の受付、電話対応、煙草の補充、無茶を言う客の相手、クレジットカードで払い間違えた際の取り消し手続き、これはあくまで氷山の一角で、他にも仕事は山ほどある(個人的には喧嘩腰の客の相手が嫌だった)。慣れればなんてことないアルバイトが多い中、たまにある雑事まで覚えなければいけないのはなかなか難しい。なんとかもっとコンビニエンス店員の地位は上がらないものだろうか…。

以上、3週に渡って僕がやったアルバイトのいくつかを紹介してみました。

 

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