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母が癌になった。②

母が癌だと病院からの電話で聞き途方に暮れていた。
これからどうすればいいのか・・・?
1人ぼんやりここ数年のことを思い出していた。

私の母は父が4年前に亡くなってから一人暮らしをしている。
父が亡くなる前は介護が大変だったが母は一人で引き受け父の最後を看取った。
1人暮らしになってからは介護から解放されて楽になったと話していた。
私自身は父との関係が良くなかったので母が1人暮らしになってからは今までより実家に行くことが多くなると思っていた。
でもその3ヶ月後、コロナが大流行し大都市に住む私が地方に行くなんて「悪」だと言われる世の中になり、母から「都会の人が近所を歩いてもらったらここでは住めなくなる。ここには来ないで」と電話で言われ、とても傷ついた事を今思い出している。

そしてようやくコロナが落ち着いて来たころ、私は何年かぶりに母を関西旅行に誘った。その時母は88歳。杖をついて歩くのが不安だという事もあり母に近くに住む姉が同行するという事になった。
私は1泊2日のスケジュールを母に負担にならず、でも思い出に残る旅にしようと予定している場所すべてに自分の足で訪れて段差や多少でも歩かなければならない距離、エレベーターの位置、タクシー乗り場までの距離など・・・調べ尽くして母を迎えた。
4月のちょうど桜が満開の時期で母と姉、私の親子三人旅はとても思い出深い旅になった。

母娘とはなぜかいつも素直になれない事も多いがその旅では私は自分に「絶対にけんかをしない。いやな言葉を言わない。母の事を第一に考えすべてを行動する」と自分に言い聞かせていた。
だから大人になって初めてふらつく母の手を握り歩いた。いつもなら出来ない行動だった。写真もたくさん撮って旅行後にフォトブックに編集し言葉も添えて母と姉に送った。

今思えばそれが母との最期の旅になってしまったのだろう。
でもあの時、長い人生の中で多くの心配や当たり前の顔して放った多くの言葉を少しでも謝りたい気持ちを旅に込めた。

・・・・そして今、この現実をどうするか・・・・・。
そう思い悩んでいた次の日の朝早くに母の担当医から私の携帯に電話が入った。前日に看護師長から癌になったと電話が入ったばかりだったので一体今度はなんの話だろうと注意深く聞いた。

医師がいうには、「妹さん(私)に前日電話で伝えた内容と同じようにお姉さんにも電話連絡をしたようだがお姉さんはきちんを内容を把握せず、病院での面会の時に看護師となぜか言い争いとなり話にならない。
そして、お母さんにはもう何の治療も出来ないので早めに退院して残された時間を有意義に使った方がいいのではないかと思う。
だから、妹さん(私)にはなるべく近いうちに病院に来てもらいお姉さんと一緒に冷静に話を聞き、お母さんの退院を促してほしい」との内容だった。

そして、「このような電話をした事はお姉さんには言わないでほしい。また興奮して病院で言い争うになったら困るから。とにかくお母さんには残された時間がありません」

・・・・電話を切り、また頭を整理した。医師の言いたいこと、そして姉の行動や言動が病院で迷惑をかけている事など考えた。

姉は母の家から車で10分のところに住んでいる。昔からあまり人とのコミュニケーション能力がなくいつも母が姉の先を行き問題を解決するような関係だった。今回もそういったことから起こったのは想像の範囲であった。

・・・さて、いつ病院に行き、姉の興奮をおさめて話し合いの場を取らなければと思い、自分の日程表を見てやはり仕事を休まなければ何も進まない事を改めて知り、病院へ行く日を決めた。


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