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コギトの本棚・エッセイ

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ここでは主に随筆や独り言を取り上げてお届けします。
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2020年6月の記事一覧

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その4

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その4

4、
2017年7月22日、シナハンを終え、私たちは帰京しました。
帰ってすぐに、シナリオ執筆に取りかかろうと考えていたのですが、そのまえに、一つ、私は早川君に、あるお願いをしていました。
それは、登場人物の名前を監督に決めてもらうことです。

主人公と、彼とゆかりの深い兄妹の名前です。なぜか、その三人は私が決めるよりは監督が決めなければならないと感じていました。
翌23日には、すぐに早川君から返

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映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その3

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その3

3、
シナハン三日目、ひとまず映画の舞台に関する成果はあげたと一路、宇和島から東へと車を走らせました。

高知県は目の前、四万十川へと到着しました。7月の22日、暑い盛りです。
もう遊ぶ気満々で、ひとしきり少年に戻って、下着のまま川遊びをしました。年甲斐もなくはしゃぎ、心の底から本当に楽しかった。

頭上には沈下橋があります。あそこから飛び降りると早川君が言い出し、見事ジャンプ。
いながきさんも是

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映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その2

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その2

2
それからすぐ私は早川君に、彼の郷里へと連れ出されました。シナリオハンティング、通称:シナハンです。

私の中には、まだ、今の『凪の海』につながるスジのようなものはありませんでした。
通常シナハンといっても、さまざまなケースがあります。すでに作家の中に確固たるスジがある場合も、舞台となる土地の空気をぼんやりと吸うために行く場合も。今回は後者でした。

松山空港におりたち、早川君の父君が運転する車

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映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その1

映画『凪の海』に寄せて 脚本いながききよたか 【コギトの本棚特別篇】 その1

現在、ユーロスペースにて、『凪の海』が公開されています。
私は、シナリオで参加しました。
映画鑑賞の一助になればと思い、つらつらとその発端や少しだけ内容につっこんだことを書いてみたいと思います。(いわゆるネタバレはしないつもりです)

1

2017年、あれはたしか6月、だったでしょうか。だから、今からちょうど三年前ということになります。早川君から、(普段の呼び方で書こうとおもいます)突然、電話が

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【コギトの本棚・エッセイ】 「conscientious」

【コギトの本棚・エッセイ】 「conscientious」

南予のとある半島の突端に位置する蒋淵という場所に十日ばかり出張していました。
自ら書いたシナリオの撮影を手伝うということは、どこか御法度のような気持ちがするのであまりしませんが、ごく限られた予算と有志の映画というわけで、今度ばかりは止むを得ず、恥を偲んで行って参った次第です。

自主映画だけに人選が面白く、撮影部照明部は外国人部隊でした。(部隊と言っても三人ですが)スウェーデン出身のカメラマンに、

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【コギトの本棚・エッセイ】 「関さん」

先日、京都へ行って参りました。もちろん、仕事です。仕事なんですが、京都ですよ、当然『京都!』って、テンション上がっちゃいますよ。しかし、『京都!』と思いきや、日帰りの弾丸ツアーでした。しかも、車で……。

京都に着いて、車を降りてホテルのラウンジへ直行、打ち合わせを終えて、車に乗って、そのままとんぼ帰り。はっきり言って、観光どころじゃないです。土産話の一つもありません。それに、いい歳して、自走して

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