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7人の女侍 13話 ”女たちによる負の連鎖を断ち切れない男たち”

これまでの記事で、私と同じ空間で働く7人の女性たちを紹介してきました。

見た目に似つかわしくないメンヘラ風な人から、美人で立ち回りも評判なのに大問題を引き起こしている人、育児休暇を取得する後輩を無視するベテラン、未だに中二病みたいな態度のお局様、などなど、あらためて列挙してみると、漫画の設定にするのも無理があるくらいの魑魅魍魎ラインナップと言えます。

気になった方は上の記事から、他の記事を追っていただけると幸いです。

さて、記事はリアルタイムの状況と時差が発生していますが、前回紹介した「シヨウコ」は、既に職場を去ってしまいました。自己都合退職です。

彼女は私の「あたかも恋愛」の相手として、図らずしも私の仕事のやる気に貢献していたのですが、辞めた原因を一言で言えば

「こんなへんな会社、もうやってらんねーよ」

ということに尽きます。

私も、短期間ででっち上げられたとはいえ総務課長ですから、この理由は心が痛みます。
しかし、その気持よりも「これで彼女は同僚でなくなったから、堂々と口説けるな」という思いが強かったのはナイショです。


それはさておき、どうせ辞めるなら不平不満を出し切って辞めてほしかったのですが、シヨウコは、「立つ鳥跡を濁さず」などとキャラにもなく慣用句を持ち出し、「家業を手伝うことになったので」などとそれらしい理由を述べるに過ぎませんでした(シヨウコの親はダンススクール経営)。

実際には辞めて何をしていたかというと、彼女が前職で得たデザインスキルを活かし、ランサーズかクラウドワークスかわかりませんが在宅で小銭を稼いでいたようです。

在職のときから既に副業は始めていて、それで見通しが立ったと言っていました。しかし傍から見たら、それを専門でやっていくのはどう考えても無理に見えました。

彼女は確かにソフトは操作できるのですが、元美術部で兄が美術教師、そして趣味でサイトを自作もする私から言わせれば、決して感心するほどのセンスは持ち合わせていません。

致命的なのは、アイディアをまとめるのが遅いのです。安い仕事を何個も並行でこなせるような器用さもありません。

ということで、私に言った在宅ワークというのも多分嘘で、すがることのできる男が見つかったのだろう、と思っていたくらいです。

しかし、幸にしてと言うべきか、残念ながらと言うべきか、今の所シヨウコに関しては男の匂いは感じません。
飼っている猫の匂いや、アロマのポリネシア系の香りだけをまとって生きています。

シヨウコとは辞めてからも連絡はとっていますが、失業手当の給付期間が過ぎたら、再就職すると言っています。

在宅でやっていく見込みが着いたんじゃなかった?

やはりそれは無理だったようです。
今はコロナ禍で副業需要が高まっており、クラウドワーカーなど石を投げれば当たるほど多いのです。ましてデザイン制作などレッドオーシャンにも程があります。

それでも私は、シヨウコがいろいろな意味で気になるので、ぬるーくウォッチしていこうと思います。

潔癖だからたぶんリアルな恋人にはなってもらえませんが。

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さて、今回はここからが本題です。
シヨウコから辞表を受けたうちの会社は、後継者を探すためにハローワークに営業事務職の求人を出しました。

シヨウコは律儀にも辞める2ヶ月前ほどに辞表を出したので、辞める前になんとか後任を見つけて引き継ぎをしたい意図が会社にありました。

辞める社員を引き止めるわけでもなく、何が不満だったのか聞き取るわけでもなく、代わりの人間を探そうとする手続きだけは光の早さでやってのけます

パソコンスキルの戦闘力が5くらいである総務部長は、ネットで募集をかけることができません。そのため私にそれを指示してきます。

しかし私は空返事だけして、てきとうに流します。
なぜかというと、採用基準も条件も曖昧で、不採用の理由もいつも適当なので、やるだけ無駄だからです。

それでも、ハローワークだけの求人だけで、2~3名の応募はすぐに集まるから驚きです。
地方は事務職の求人が少なく、私の会社は比較的休みも多いため、なぜか女性の席だけは応募があるのです。

そして今回も、20代、30代、40代それぞれ1名ずつから応募が集まりました。


最初に面接にやってきたのは20代中盤の女性です。

駐車場から事務所入口まで歩いてくる間で、彼女を見た倉庫の作業員、それから車に荷積みする営業など、全員が、お口あんぐりで完全に手が止まっています。
まるで江戸末期の日本人が舶来の金髪美女を目撃したかのようです。

私は顔は見えなかったのですが、それだけ可愛かったらしいです。

現場サイドからは、即内定が出ました。おめでとうございます。


しかし事務所内のお局様たちの反応は、男性陣とは間逆なものでした

受付で出迎え、面接の部屋に案内して戻ってくるその刹那に、よくまぁこれほど欠点を探せるものだと思います。

・挨拶が小さい
・表情が暗い
・促す前から椅子に腰掛けた

こういった些細な問題を鬼の首を取ったように取りあげ、「ちょっと微妙よね~」などと、まだ面接前なのに総務部長があえて聞き取れるように放言し、なんとかイメージを下げてやろうとバイアスをかけまくってきます。

要は、自分よりチヤホヤされる若い女性に入社してほしくないということです。

面接が終わったあとの部長の感想も、完全にその誘導にはまったかのような発言。

「応答がいまひとつ元気がなくて、メーカーの人達と電話で折衝できるか不安」

はぁ?

あなたの朝礼は声が小さく全然聞き取れないが、20代のときに入社面接でそんなにハキハキしていたのか?
そもそもそれって会社に入ってから教育すればよいだけじゃないのか?

なにせ、部長に関しては自分自身が人望ゼロで散々陰口をたたかれている人だから、面接の30分で相手の本質を見抜くなどできようもないのです。

いや、これは私の会社の問題だけではなく、どんな大きな会社でも一緒だったりします。

だから最近は、AIや心理学を応用した適正診断を書類審査と同時に行い、面接で相手の本心や本来の性格を引き出せるような的を射た質問を用意したりします。

しかし我社は未だに裸の大様の、根拠なき鶴の一声で人事が決まるのです。


そんなこんなで、採用されたのは40代女性です。

「今の職場の女性が皆40歳くらいだから、そのほうが皆とうまくやっていける」

などと、会社の成長戦略もなにもない理由が決め手でした。

私が事前に口を酸っぱくして言った、

「シヨウコはPCスキルがあるから、PC得意な人でないと後任は務まりません」

というアドバイスも完全に無視され、明らかに一番苦手そうな人が採用されています。

女性が見た目で採用されることには問題も多いですが、我社のような「男のやる気次第」で営業業績が決まるような会社においては、それが好影響を及ぼすこともあると思うのです。私が「あたかも恋愛」でパワーを得ていたように。


それで、採用された40代の女性はどうなったか。

実は、たった半年で辞めることが決まりました。

鬱に近い状態になってしまったのです。


どうしてだと思いますか?

とある先輩女性の性質が、この新入社員の心を追い込んでしまうのです。

長くなったので次回に続きます。


# 言っておきますが、究極的に悪いのは全部男ですよ。


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