7人の女侍 9話 ”美人で、気立てが良くて、盲目(!)完結編”

今回でシリーズ完結です。前回の投稿はこちら:

40代半ばにして、その美貌で仕事で関わる男性の多くを味方につけるマカナ
誰から話しかけられても無下に扱わず、笑顔を振りまきます。

社内のみならず、客や誰かもわからない電話相手までに愛想を振りまくその様子は、もはや八方美人を超えた360度美人、スノボ風に言えばフロントサイド360美人とでも言いたくなるほどです。


しかし、あらゆる男たちに気を持たせ、会話を誘発する上に、それをすべて受け入れるものだから、とにかく仕事中の私語が多い

特に他の女性社員のうち何人かは、明らかにその私語にイラついています。
そのモテ具合への嫉妬も幾分かはあることでしょう。


なお、マカナの私語は、常に受け身とも限りません。
前回書いたとおり、細かいことに気が向くそうで、それを誰かに共有したくてたまらないのです。

客の笑い方が特徴的で耳障りだっただとか、他の女性社員が電話で噛んだとか。
この間など、WEB会議で相手のアイコン写真がキメ顔でウケたとか。

そんな超どうでも良いことで、自らも私語をスタートさせます。

いったい何のアピールなのでしょう。
とにかくどうでもよいことを見つけてきてはマウントを取り人を見下そうとしてきます。


ここで、noteの聡明な読者なら、彼女のもつ矛盾に気づいたと思います。

そこまで「気が回る」アピールをする彼女が、なぜ自分の私語が会社に多大な迷惑を与えていることに気づかないのか。

他者の気持ちに配慮できたなら、もし誰かが彼女に雑談をしかけてきても、流す判断ができるはずです。

しかしそれに関しては完全に「空気が読めない人」と化しています。

灯台下暗しというわけでしょうか。
でもここまで自分の罪だけに盲目だとすると、頭のネジがどこか外れているとしか思えません。


そんなマカナは、なぜか社内では「仕事ができる人」とみなされています。

私はこの超アナログ会社の仕事をシステム化して無駄を排除するというミッション・インポッシブルを社長から丸投げされています。

マカナがそんなに仕事ができるのならばと、簡単な数式を組み込んだExcel制作を依頼したことがあります。

しかしマカナは、臆面もなく言い放ちます。

「私はもうこの歳だし、新しいことは憶えられない」

この発言で私は相当萎えました。数々の男性をエレクトさせてきたはずのマカナですが。

仕事中にネットで化粧品を購入するくらいアンチエイジングに余念がないのに、なぜ脳のエイジングケアには無関心なのか。
人生100年、生涯教育が言われる現代にして、それで生きられると思っているぬるさに驚くのです。

ここまでマカナのことを辛辣に評してきましたが、これは本人の問題だけではなく、会社や社会構造の問題でもあります。これが本シリーズの主題なのです。

女性には役職を与えず昇給も抑え、雑用をさせればそれで良しという古き悪しき企業文化が、マカナのように自己成長に無頓着、なのになぜか上から目線、という困った中年社会人を生み出すのです。
ある意味マカナは、自分に求められている範囲で完全適応しただけとも言えます。

しかし、コロナで働く意味が見直される今、「簡単なことをそこそこやって、あとは遊んでいれば給料がもらえる」ということに本当に価値があるのでしょうか。

結局、拘束された時間は自分の人生を差し出しているのと同然で、しかもやりがいも成長もないとしたら、単に使用者に都合よく飼われて搾取されているだけなのです。


ならばこのマカナの現状をどう正せばよいのか?

一番は、上の立場の人間が、組織としてあるべき正しい姿を認識した上で、その規範に則って正しくマカナを注意することです。

しかしこれが、社長含めそれ以下、取締役兼部長2名、更には部長代理まで、マカナに対して腑抜けた態度しか取れないのです。

マカナを気に入っている者、事を荒立てたくないだけの箸にも棒にもかからない者、空気を読めない管理職失格の者、立ち位置はさまざまです。

となると、次は課長職・・・私じゃないか!


というわけで、私は、じっくり着実に事を起こそうとしています

私はマカナより歳下で社歴もずっと浅く、周囲に伏兵を配置しまくるマカナに切り込むには、周到な準備が必要です。

対策1:できるだけ多くの味方をつける

マカナに唐突に注意しても、単に個人意見だと思われたら流されかねないので、同調者の意見を収集しています。
今の所、女性3名、男性2名は味方となっています(男少なっ)。

これで、「社内からこういう意見が多く出ているから」と注意できるわけです。(私も「社内」のうちなので嘘ではありません)

対策2:記録をつけ、客観的に認識させる

注意したとしても、「私語はみんなしている」「私だけ注意されるほど多くはない」と言い逃れされる可能性もあります。
そのため、私がマカナの私語に気づいたときには、記録をつけています

「7/20 14:00~14:10 内容:長男の部活の話。相手:□□」

こんな感じです。記録をつけはじめると、よくもこんなにしょっちゅう雑談できるものだなぁとわかります。
そして、私も暇じゃないですから、こんなことに業務中時間を割かなければいけない事実に辟易しますが、誰かがやらなければいけないことです。

作戦3:必死になってもらうよう仕向ける

更には、約1年後に基幹システムを刷新するので、マカナが担当するアナログ仕事は不要にします。
つまり、彼女がいなくても会社が回るようにします

一方、以前の記事で書いたシノブなどには既に別の仕事を少しづつ与えています。きっとシノブは1年後も必要とされるでしょう。

その流れで、もちろん、本来能力が高いはずのマカナにもしっかり新しいことを勉強してもらいます。私語などしている余裕はなくなるでしょう。


というわけで、長期戦であり、これからが正念場です。

恵まれた外見が、醜悪な心を取り繕うものになってはいけません。
マカナを反面教師とし、内側から輝く人間を目指したいものです。


マカナ編~完

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