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アパレルとテクノロジーのアジャイルなものづくり

前回に引き続き、アパレルとテクノロジーの架け橋シリーズ第二弾。
前回はテクノロジーのものづくりをアパレルのものづくりでなぞらえるという内容でした。

今回は続きとして、予告通り(?) アジャイル開発について書いてみたいと思います。

ソフトウェアのものづくりの流れを理解する ーアジャイル編ー

アパレル業界のみなさま、突然ですが「アジャイル (agile)」という言葉をご存じでしょうか。言葉自体には「機敏な」「すばやい」という意味がありますが、日常ではあまり耳にする機会も少ないのではと思います。

前回、テクノロジーのものづくりでご紹介したのはウォーターフォール開発、今回はアジャイル開発を取り上げますが、どちらも開発の手法、つまりどのようにものづくりを行うかという手法の違いで、ものづくり自体の基本的な流れ(要件定義~リリース)の大枠は同じです。SaaS(software as a service; サービスとしてのソフトウェア)やスマホアプリなどを提供するITベンチャー企業では主流の、非常に柔軟性のある開発方法になります。それでは前回のウォーターフォール開発を振り返りつつ、ご説明していきたいと思います。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違いをアパレルものづくりスタイルで置き換えてみた

まず、ウォーターフォール開発についておさらいです。
開発工程としては大まかに、要件定義→設計(外部・内部)→コーディング(実装)→各種テスト→リリースという順番でした。アパレルのものづくりでは、企画→縫製仕様書・パターン作成→縫製→検品→販売で置き換えることができるとご紹介しましたね。ウォーターフォール(waterfall)は滝という意味で、高いところから水が流れ落ちるように、前の工程には戻らない、つまりやり直しを行うことがとても大変になる点が特徴と言えます。(納品前サンプルチェック時に修正点が見つかる→数百枚の製品を修正するか一から作り直すという地獄・・・みたいなイメージでしたね)

先ほどもお伝えしたように、このものづくりの流れ(工程)は基本的に大きくは変わりませんが、アジャイル開発は速く少しだけ作ってリリースするという点が大きく異なります。ウォーターフォール開発がプロジェクト(案件)単位で開発工程を分けるのに対し、アジャイル開発はプログラムの機能単位で工程を分け、ひとつの(最小限の)機能を速く作ってリリース、速く作ってリリースを繰返しながら進行し、利用者が使いながら機能が拡充していくイメージになります。

と言ってもなんのこっちゃ・・・と思うので、下図のようにひとつの機能をアイテムに置き換え、アパレルのものづくりスタイルに置き換えてみました。

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上のウォーターフォール開発は、従来のアパレルものづくりスタイルを想像してみてください。シーズン毎にテーマを決め、同ブランド内でコーディネートすることを基本とし、同タイミングで一定量アイテムを生産するイメージです。

一方、アジャイル開発の方は、昨今増えてきた小さくはじめるブランド(例えばD2C / direct to customer や DNVB /Digitally Native Vertical Brand)のように、「1アイテムを少量作っては販売」を繰り返し、顧客の声を反映しながら徐々に大きくしていくスタイルです。はじめは1アイテム、例えばシャツを1型だけ作って販売し、徐々にアイテムを増やしたり、同型で生地を変えてバリエーションを増やしたり。速く少しだけ作るので、臨機応変に修正することも可能な点が特徴です。ちなみに「速い」とはQR(クイックレスポンス)のような物理的な時間短縮も含みますが、すべての完成を待たずして即リリースできるという速さでもあります。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発のメリット・デメリット

ウォーターフォール開発とアジャイル開発には、それぞれメリット・デメリットがあります。

ウォーターフォール開発のメリット
✓全体的な計画を立てやすい
✓進捗・コスト管理を行いやすい

デメリット
✓開発途中での仕様変更や仕様の追加対応が難しい
アジャイル開発のメリット
✓速く利用者にプロダクトや新機能を提供できる
✓利用者の声を製品に反映しながら開発できる(愛用してもらいやすい)

デメリット
✓全体的な計画やスケジュールの把握がし辛い
✓(柔軟性がある為)開発の軸がブレやすい

これらのメリット・デメリットも、アパレルのものづくりスタイルと共通していて想像しやすいのではないかと思います。例えば予算を立てたり全体的に計画したり、進行中のQCD(品質・コスト・納期)管理を細かくしたりなどは従来のものづくりスタイルの方がやりやすいです。アジャイルなものづくりはやりながらその場その場で臨機応変に対応していくことになりやすいでしょう。(Ex. シャツを作ろうと計画していたが顧客からボトムの要望が非常に多く急遽変更した、など。もちろん管理できないこともないです)

アジャイル開発のメリットは何と言っても速く作ってまず顧客に使ってもらって声を聞き、その声を製品へ反映できることですね。作り手も利用者もハッピーです。前例があまりない新しいものなど、ニッチなものづくりとも相性がとても良いです。逆に顧客の声を聞きすぎて軸がブレやすい(当初の目的やブランディングを見失いやすい)というのは結構よくあるので注意が必要ですね。

さいごに

さて、今回はアジャイルなものづくりを(表面的ではありますが)ご紹介いたしました。如何でしたでしょうか。

現在、自社のシステム開発をどこかの企業へお願いする際にアジャイル開発という選択はまだ一般的ではないかもしれませんが、このようなスタイルもあると知っておくととても便利です。また、この機会にアジャイル開発に興味を持たれた方は、是非もっと深堀りしてみるとおもしろいと思います。テック側のアジャイル開発手法が知れるのはもちろんのこと、チームワークやコミュニケーション方法、カイゼンなど、アパレルのものづくりにもヒントになることがたくさんあると思います。(下記参考図書も是非読んでみてください)

次回以降、アパレルとテクノロジーの架け橋シリーズではオープン化(今回断念)やAIの話を書いてみたいなと思います。(謎)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考図書
正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について 市谷聡啓 (著)

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES) 
アッシュ・マウリャ (著), 渡辺 千賀 (解説), エリック・リース (編集), 角 征典 (翻訳)  (↑直接アジャイル開発の内容ではないですが・・・)

参考URL
ミルクボーイがアジャイルを説明したら
【図解】システム開発の工程と流れを開発モデル毎に解説
アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは何?アジャイル開発の手法や意味も要チェック

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