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「詩」夏のバス停

午前二時の街は
水銀灯の 淡い光が灯り
バス停では一人の幽霊が
来るはずもない バスを待っている

もう最終は出ましたよ
私はそう 幽霊に告げる
彼は不思議そうに 私を見つめ
どこかへ 消えてしまう

涼しい風に吹かれて
空から 牧場が降りてくる
その香りはどこか
あの日の 線香花火に似ている

私は一人 ベンチに座り
安らかに 眠る牛たちの
数を指で数えてみる

「ゆっくり 生きていけばいいんだよ」
そんな夏の声が
静寂の街を レモンライムに染める

そして夜空に咲いたのは
リインカーネーション
私は宙を 見渡しながら
来るはずもない バスを待っている

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