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「詩」慈雨

雨はバス停を包み
風は私の掌で青く輝く
深遠な霧の中を一人の
洋傘を差した女が歩いている

庵の脇で 健気な仔犬は
マゼンタ色の夢を覚え
女はその夢の中へ
白鳥と化し 滲んでいく

時刻表に数字は無い
幾度となく 人は私を知り
幾度となく 私は私を失う

雨粒が生む音符たち
その刹那の旋律を口ずさめど
私はまだ 待たねばならない

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