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「詩」砂浜の幽霊

夜空には満月が浮かび
砂浜は淡いブルーに染まっている
体操座りをした幽霊がポツンと
砂浜から遠くの闇を眺めている

何を想っているの?

僕は幽霊の隣に座ってみる
彼は何も話してくれなかったけれど
きっと光のようなものを
探しているのだろう

立ち上がると涼しい潮風が
夜の粒子に溶け込んでいく
一匹の白い子犬が寄ってきて
頭を撫でてやると
嬉しそうに砂浜を駆けていく

海を離れて海岸線の道路を渡る
信号機の近くに小さな喫茶店がある
真夜中の店内には誰もいない
ロウソクの炎のような灯りが
奥のテーブルの上で浮かんでいる

そして僕はまた海へと向かう
どれだけ走っても
いつのまにか海は遠くにあって
砂浜に着くと もう朝日が昇り
幽霊は消えている
どこからか犬の鳴き声がするが
その姿を見つけることは出来ない

僕は砂浜に座りこむ
海の上には太陽が輝いている
僕は陽光に包まれる
膝を抱えたまま 僕は姿を消す


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