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もうすぐ春が来る

お正月、これまで福袋に無縁だった息子が、「福袋を買おうかな」というので、私はちょっとびっくりした。

お!色気づいたか!

髪がボサボサでも「気にしたら負けやで!」とか言ってそのまま学校に行ってしまうのに、息子もようやくファッションに興味が出たのか!

でもそっちでは、なかった。

彼のお目当てはティファール。


息子は春からのひとり暮らしに向けて、お値打ちな時に、まずはフライパンと鍋を買おうとしていた。

え?っていう気持ちを抑えて、頼まれてもいないのに、私は彼の買い物に同行した。

ティファール専門店には美しい商品が並び、買わない私までもワクワクした。

心の声がついつい漏れそうになる。

あんた、料理、したことないよね。
もっともっと、安いフライパンや鍋も、たくさんあるんだよ。

でも、まずはかたちから。

それでいいと母は思う。
やる気が大事!
最初が肝心!

それに、もしも使わなかったら、母さんにそれ、ちょうだい。
その取手が取れるフライパン、蓋付きのやつ。

うちのフライパンより高いやつだし。
母も実は、前からティファールに憧れていたんだよねぇ。


彼は緊張した顔で買い物したあと、包丁をチラッと見て、高い包丁を「これ、いいな。」って言った。

「包丁は現地調達でいいよね!刃物を持って新幹線で長距離移動もないし。」

慌てて私は買うのを制した。

6800円の包丁って、待て待て!
いやぁ、もっと安いものでもよくない?

なんなら、100均でもよくない?
せめて、◯トリとかでも充分。

でも、わかるよ、まずはかたちから、かたちからだよね。


「当たり前やろ。今から買うわけないやん。こんなん、高すぎやし。」

と、逆に息子に制された。

私のハヤトチリだ。ごめんごめん。

「俺は買った弁当とか苦手やし。自分でごはん作りたいんやわ。」

「ほぅ、やる気だね!頑張って作ってな!スマホのアプリとかで簡単に作れそうやし。冷凍餃子とか、丸美屋とかもあるし。」

最初は作るかな、でも、そのうちめんどくさくなるかも。
そして慣れるよ、買ってきたコンビニ弁当に。


「俺、結構やる気やで!ご飯も炊くし。あ、でも、皿を洗うのが微妙やから、ラップを皿にしようかな。」

それは、あかんよね。

noteには、すごく料理上手なパパさんたちがたくさんいらっしゃるし、長女の旦那さまもご飯を作るのが好きな人だ。

だから息子にも、そんな料理好きイケmanを目指してほしいな、と思う。

そしていつか、母にも料理を作って食べさせてくださいな。

※後から知ったのですが、彼はほんとうは、安価なフライパンや鍋が欲しかったらしく、ティファールにはこだわっていませんでした。
先入観からティファールに誘導したのは、おそらく私です。散財させて申し訳ないけど、ティファールなら飾るだけでも嬉しくなるはず!



さらに息子は、ひとり暮らしを始める時に何を持って行くか、を話し始めた。

最低限のものだけでいいし、電化製品は現地で調達だな、とか言いながら。

「漬物石は持っていかんとあかんな。」

彼は、亡くなった祖父の形見に漬物石が欲しいと言って、葬儀の日に倉庫から石を持ち帰ってきた。

父が漬物を漬けていた倉庫


外に置くのかと思ったら、すぐに洗ってタオルで拭き、大事に自分の部屋に石を置いた。

私は息子の部屋に洗濯物を持っていくたびに、何度もその石に蹴つまずいている。

「どちらも捨てがたいな!」と言って、2個もらってきた。


「あの石を、新しく住む部屋に持っていくの?ボーリングの玉レベルのあの重量、流石に新幹線で持っていくのは厳しいよ。」

と言うと、

「楽勝で持っていけるわ!てか、あほなん?普通、新幹線では何にも持っていかんやろ。」

という返事。


研修期間は車を持っていけないので、宅配か引っ越し屋さんに全ての荷物を運んでもらうが、いずれは車で、石も持って行きたいと考えているらしい。

20歳の男子の部屋に漬物石って、オブジェにしてはシブ過ぎるけど、じいちゃんも喜ぶだろうし、それも彼なりの、祖父への感謝のかたちなのかな、と思う。

ゆるりとしているように見えて、なんだかんだで、息子なりにいろいろ考えているようだ。親以上に、計画的に、合理的に、夢を持って。
心配しなくても、自分で何でも段取りしている。

だから、母の余計な口出しは必要ないな、と反省した。


最近の私は、息子のことをnoteによく書いてしまう。

つらつらと、話題をひとつに絞れずに、あれもこれもを詰め込んで。

なんだか彼に申し訳ない気もするんだけど、仕方がない。だって今は、息子との日々に、私の心がいちいち動いてしまうんだから。

末っ子の春が具体的になり、私の気持ちは、ゆれゆれに揺れているのだ。



あたたかい春が待ち遠しいけれど、もっと春がゆっくり来るのならいいのに、そう、母は思っている。





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