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深夜のボヤキ Vol.1

夕食を終えてからあることを済ませようと予定していたが、あまりのうまさに思いのほか酔いが回ってしまい、急いで深煎りの豆を淹れてホッと一息ついていたとき。
ふと、ルームメイトのムスリムのやつが「お前は何でアルコホールを飲む?」と聞いてきた。

たしかに宗教上酒を飲まない彼からすれば、毎日のごとく飲酒をしている俺にその類の質問をしたくなるのはごく自然なことだ。

「うぅん。お酒の味が好きだからだ」
ととっさに答えたが、
「それならアルコホールはいらない?」
とつたない日本語で切り返してきた。
彼の言いたいことはわかる。
代弁すると、「味が好きだとしたら、味さえ近ければノンアルでも良いんでしょ?」と言った感じた。

うーむ。こればかりはその場で答えることができなかった。

今思い返してみても、僕の最初の回答に嘘はない。
大学3年の夏あたりまでは、たしかに酒を酔うための道具としか考えていなかった。
ただ四年になって、一人で飲みにでかけるようになり、日本酒の醸造会社にお世話になったり、お酒の勉強を始めていく中で、以前のような安易な考えは次第に薄れていった。

お酒の味。その酒と料理の織りなすハーモニー。
そういったものに強く惹かれていった。

それでも、やはり今でもこの徐々に酔いが回っていく感覚は嫌いじゃない。記憶を無くすのは至極残念なことだが、彷徨い人と化している時間は、いつもとは違う、非日常を味わえる点において、非常に価値のあることだと思う。

ここまで書いておいて何だか、僕は結局のところ、アルコールでないといけないのだ。

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