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【ライブ】TK from 凛として時雨 「MAD SAKASAMA TOUR 2024」@東京ドームシティホール 2024.6.7

NHKの「みんなのうた」のテーマソングに起用されたり、人気アニメ「ヒロアカ」の主題歌になったり、いろんな意味で世間を騒がし続けてきた新曲を引っ提げた「MAD SAKASAMA」ツアーも早くもファイナル。

情報解禁時は仕事のピークは確定していたので先行でチケットを取っていなかったのだが、直近になっていけることが判明したので今回は追加販売の最上階立ち見席で鑑賞。ライブを一番上から見るという経験もまた貴重である。


ライブレポート

「unravel」「Fantastic Magic」と10年来のアッパーチューンから投下。

前回の「The Second Chapter」と今回の「MAD SAKASAMA」ツアーの大きな違いとして演出が照明のみということである。

それもあってか、この2曲は特にミュージックビデオの撮影現場にいるかのような気分になった。”MVを見ている”というよりは、その場にいるのだ。

ノスタルジックさとアメコミっぽさも感じるポップな「クジャクジャノマアムアイア」は、あの最強布陣で演奏されると凄まじい攻撃力に打ちのめされるが、赤と白が踊る照明によってどこか「なんとかなるっしょ!」みたいな適当さだったり、明快な余韻が強く残った。

今回のツアータイトルの元にもなっているこの曲だが、未だにTKにオファーしたNHKのとち狂った担当者のオファーした目的やきっかけも明確にされないままこちらはライブで演奏されている訳であり、ツアーの最後まで混沌を極めていた。

「Will-ill」では、ストーリー性の高い壮大な迫力から一番上からステージを見下ろしているにも関わらず、綺麗な湖の水中で、上を向いて太陽の光が差し込んだキラキラと綺麗な水面を水中から眺めながら、だんだんと背中から底なし沼に向かって、下から引っ張られるのではなく、轟音が水圧となって天井から押し潰されるような、ドラウンする感覚に陥った。

「逆さまのフラストレーション」のコーラスがとても好きなのだが、窒息死しそうなほどにエッジの効いた轟音に埋め尽くされていた場内で、和久井さんの歌声がマリア様のように、救いの手を差し伸べられていたかのように思えた。

凪のように静かな「copy light」ではブラウンのテレキャスターに持ち替え、音源ではない「こんなにも痛いけど」のシャウトで沈痛さがより一層前面に出る。

「Dramatic Slow Motion」は2020のリミックスverでの演奏。

アコースティックギターに持ち替え、「haze」ではより繊細さが浮き彫りになる。

ここまでグリーンやブルーの照明を使われることが多かったが、「flower」ではビビットオレンジやショッキングピンクなど、暖色を使っているのがより印象的だった。

ドラマ性の高いTKの曲にビタっと照明がハマった時、照明さんはたまらなく気持ちいいだろうなと思ったりした。

TKの曲でも突出してシリアスで謹厳な「film A moment」では、Aメロの途中で演奏を中断。

TK「…すみません、やり直していいですか?間違っているなとは思いながら弾いてましたが、チューニングを間違えているみたいで、少々お待ちください…」

「…間違ってません!」(虚勢を張っていたが、全ての弦チェックしていたのでしっかり間違えてたと思う)

と、珍しく曲をやり直し。

客席から「フゥー!」と歓声が上がるも、「大丈夫だよ」の意味も「やり直すなんて珍しい」というレア感も含まれているので、一瞬これは何の歓声なのだろう?とは思った。

やり直した後の「film A moment」は本当にやり直したとは思えないほど圧巻の迫力で、すぐ様に記憶を掻き消すほどだった。

「僕は結構歌っているのですが、皆さんは歌っていませんよね?一緒に歌ってもらえますか?」とラストは「P.S. RED I」。

確か「katharsis」ツアーのファイナルもここ東京ドームシティホールだったと記憶しているが、アンコールで演奏された際、ライブ当日か前日かが映画「スパイダーマン:スパイダーバース」がアカデミー賞を受賞したと報道があったばかりで、その時の祝福に満ち溢れた熱気を思い出した。

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5分ほどしてツアーTシャツに着替えたTKがアンコールで登場。

TK「メンバーを紹介します、ドラムBOBO、ホリタツです。…あれは誰だ…?ピアノ、和久井沙良、バイオリン須原杏、ベース吉田一郎(指バン連弾)」

TK「来月から中国ツアーも決まりまして…来月…?…来月。合間に時雨でイベントに出て、8月は時雨でツアーもあります。既に解禁されている情報では『バズリズム』でバカリズムさんと、最近はテレビも齧らせていただいて…今年の僕は大変です!テレビでは、今より喋れていない僕が見れます。」

確かにスケジュールの忙しさで言ったら細美さんと肩を並べられるぐらいだろうなと思ったが、水面下での曲作りなど含めたらずっと忙しいと思う。

最新曲「誰我為」をアンコールで演奏。ラストの、「弾ける前に映し出した 虹色」のフレーズとは対照的に、虹色には無い白色の照明が印象的だった。

「最後に、最高の耳鳴りと”死”を届けます」と地方での口説き文句である「一緒に死にましょう」とは変わって、一方的なサディスティックな煽りで「first death」で終焉。

毎回「死ぬまで君を愛してる」のシャウトで、私もTKに負けじと中指を立てていたのは内緒である。

徐々に各フェスの出演者が出揃い夏フェスシーズンに差し掛かった6月上旬、上から見ていて「もし『京都大作戦』や『DEAD POP FESTIVAL』でこの曲を演奏したらきっとダイバーの嵐なんだろうな」と無さそうで有りそうな想像を一瞬だけした。

その時になれば、私は人を転がしているのか、人の上を転がっているのだろうか。

鬼邪天

タイアップとしては「PSYCHO-PASS」シリーズや「東京喰種」「スパイダーマン」などディストピアや近未来的な作品が多かったが、近年、凛として時雨では「狐独の才望」でアニメ「陰陽師」の主題歌を書き下ろしたり、歴史的な日本的要素のあるタイアップが増えてきたように思う。

スタンディングでステージ近くで見ている時は、トップクラスのプロミュージシャンが集った「TK from 凛として時雨」というチームで最高峰の演奏技法を見たいため、代わる代わる彼らのテクニックを目に焼き付けていたが、一番上で俯瞰して見ると、TKの"和"の要素が浮き彫りになっているように思えていた。

TK自身、ベルリンでレコーディングの他には、ヨーロッパや北欧の写真など撮り納めていたり、実際曲から曇天のキンと冷徹なシャープな街の雰囲気を真っ先に感じ取ることが多い。今回のツアーで演奏した曲では「Abnomal trick」「Fu re te Fu re ru」がそうだ。

ライブ中、BOBOさんが「バカボンド」の宮本武蔵に見えた瞬間があって、「チーム・TK from 凛として時雨」はジャンルで括るとすれば武道に近いのかもしれないと思った。例えるならTKが剣士で、BOBOさんが柔道、吉田さんは空手、和久井さんは書道、杏さんは弓道。

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ここで「クジャクジャノマアムアイア」の話に戻る。「天邪鬼」とは形容詞としても使われることが多いが、もとは日本の妖怪として登場する。

【映像:稲葉秀樹さんより】

天邪鬼とは、「素直になれない気持ち」を表した日本の妖怪です。素直になれない時には、世界をひっくり返すように大暴れしますが、その次の瞬間には気持ちが一変し、ニッコリと笑うこともあります。

TKがタイアップに引っ張りだこな理由として、数多なミュージジャンでも類を見ないダークな曲風に加えて、作品を歌詞に落とし込むリリックセンスだと思っていて、日本語だからこそ表現できるリズム感と言葉遊びに圧倒的に長けていると思う。

私が今回のツアーで"和"を強く感じた理由として、TKの言葉選びが全面に浮き出たように感じたからなのかもしれない。

easy revenge

今回は全体的に知名度の高い曲が多いセットリストで「初めてTKソロのライブに来た人も楽しめたライブでは無いか?」と思う。

今日はツアーファイナルだったものの、TKの言っていた通り来月には中国ツアーや夏には時雨のツアーも控えており、コロナ禍でも継続してライブを行ってきた彼が、完全に自由を手に入れた"今"だからこそ、数年封じ込まれていたライブ活動を今年はライブで"復讐"する年なのかもしれない。

彼の旅路は終わらない、そして終わらせない。

セットリスト

1. unravel
2. Fantastic Magic
3. クジャクジャノマアムアイア
4. Abnormal trick
5. Will-ill
6. Signal
7. copy light
8. Dramatic Slow Motion
9. Fu re te Fu re ru
10. Addictive Dancer
11. haze
12. flower
13 film A moment
14. P.S. RED I

en.1 誰我為
en.2 first death



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