【ライブ】TK from 凛として時雨 「MAD SAKASAMA TOUR 2024」@大阪なんばHatch 2024.5.26
なんばHatchは全国大小数多あるライブハウスでも屈指で好きなライブハウスである。
関西へは去年のショートツアー「The Second Chapter」のZepp Osaka Baysideぶり、ツアーは初日の仙台に続いて中盤となる大阪公演へ参戦。
ライブレポート
初日は衣装を忘れたらしく、ツアーTシャツ+スキニーでライブを遂行したTKだが、今回はちゃんと衣装である襟無しのシャツ+ベロアのワイドパンツのブラックコーデで登場。
1曲目は「unravel」、「2つが絡まる」のところで手で裏ピースするようにしていたのを初めてみたのだが、私が見ていないだけでいつもやっているのだろうか?
(ライブはもちろんプロのミュージシャンを肉眼で見ているのだが、推しとして個人に注力するかというよりは、曲としてのバランス、照明との融合など相対的かつ全体像で見ていることが多いので、TKだけを常に凝視しているというわけでは無い)
ここでTKfrom凛として時雨にとって太古のキラーチューンである「Fantastic Magic」、世の中の親御さんを震撼させたNHK「みんなのうた」テーマソングである「クジャクジャノマアムアイア」と4つ打ちのポップ性が前面に出たアッパーを連続で演奏。
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5月よりピアノサポートにAdoのツアーから帰ってきた和久井さんが参加しているのだが、サポートメンバーが変わるだけでもこんなに雰囲気がガラッと変わるものなのかと思った。
仙台のピアノサポートはjizueの片木さんで、ツアー初日はキャパも小さいこともあってか頭からアットホームで和やかな雰囲気が充満していたのだが、今回の大阪ではTKが本来持つガラスの破片のようなヒリヒリとした緊迫感と殺傷能力が場内を支配しており、さらに関西ならではのいい意味で砕けたホーム感が、これまた特有の空気を醸し出していた。
終始切迫した特性を持つ「Will-ill」「Signal」では、和久井さんのコーラスが切なさを増幅させる。
私がなんばハッチが好きな理由として、音響の良さが第一にある。
今回は下手にいたのだが、吉田さんのどっしりとしたパンチのある轟低音の威力に真っ向から面喰い、反対側からはドラムのBOBOさんのタイトでハードながらも奥行のあるドラムの轟きに挟まれる感覚が、低音爆音好きとしてとにかくたまらなかった。両サイドのリズム隊からのアクロバティックな重厚感に圧迫され押し出されるTKのギターサウンドとボーカルがこれまた刺さるのだ。
そんなことを刹那的な「Dramatic Slow Motion」 を聴きながら思った。この曲は自分が頭で思っているより、本当はもっともっと好きかもしれない。
アコースティックギターに持ち変えると「haze」「flower」と古の流れに舌鼓ならぬ、耳鼓を打つ。
今回のライブは緊迫感に加え、終始まるで青い胡蝶蘭が咲き乱れるかのような豊かで繊細な感覚を覚えていた。
キンとした真冬に暖房の効いたガラス張りの美術館の内側から夜明けの海を見るような、そんな居心地の良さと、目の前の美しすぎる絶景に呆気にとられる。
TKの、TKの音楽による空間芸術、特になんばハッチのどこか大人びた空間がそう思わせていた。
「film A moment」 は私の中ではTKの曲でも飛び抜けて壮大で、飛び抜けてドラマティックで、飛び抜けて息苦しい曲だと思っている。
「kill the moment」の中指を立てながらのシャウトからの展開が、目の前で大切な人が奈落の底へ落ちていくような、同時に自分もその怒涛の轟音の驟雨に真上から食らって身動きが取れないような、でも彼の歌にはそんな絶体絶命の状態でも、不思議と微かに見える希望がふと見えるのだ。奈落の底だと思っていた先が極楽浄土かもしれない、もしかしたらあと1秒で雨が止むかもしれない。
目の前の絶望の絶壁に受け止めることしか出来ない轟音の豪雨による窒息状態に、「何も出来ないのがもう嫌なんだ」と何処かで聞いたアニメのセリフが思い浮かぶ。
永遠に鳴らそうと思えば鳴らせるはずのエレキギターから最期の1音まで音を絞り切り出すような凄まじい命の削り方に、圧巻の大迫力からフロアから鳴りやまない拍手がその残響を掻き消す。
そんな鳴りやまぬ拍手にクロスフェードするように「皆さん歌っていただいてもよろしいでしょうか?」と本編最後は「P.S. RED I」。
TKのライブで歌わされるなんて数年前は想像していなかった。というのも、TKの音楽は完成されていて極致だったのだ。仮に曲本体にコーラスがあったとしても、まず客がTKのライブに食い込む余地など無いと思っていたのだ。
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一度ステージから捌け、アンコールは足早に登場。
謙虚な女性陣とキャラの濃い男性陣が軽く紹介されると、アンコールでは「僕のヒーローアカデミア」主題歌の最新曲「誰我為」を演奏。音源よりライブの方が骨太で繊麗で、タイトルの通り、歌詞の通り、”誰かを助けるため”の優しさと雅やかさが前面に出ていたように思う。
「誰我為」もまた従来の曲のアプローチとは全く異なり、過去曲のどこにも属さないまた新境地である。
「誰我為」の”誰かを助ける”に焦点を置いた友情と優しさに溢れた曲とは一変、ラストは「一緒に死んで貰えますか?」の口説き文句で「 first death 」でトドメのめった刺し。
「東京喰種」「僕のヒーローアカデミア」「チェンソーマン」、その他沢山のアニメタイアップや映画主題歌を担当しているTKもすっかりジャンプアニメ主題歌の常連となった訳だが、なかでもやっぱり「 first death 」の破壊力はいつだって桁違いだ。
今回は映像演出無しで照明のみであるにも関わらず突き抜けてサイケデリック、誰1人四肢が吹き飛んだり血を流していないのにも関わらずグロテスク、「死ぬまで君を愛してる」のシャウトとファックサインにカオスな快感を覚えるのだ。
為我君
場内が既にパッショネイトな雰囲気だったのもあるが、TKが表情で煽っていると表現すべきか、今回は客席を見て目で煽っている場面が多かったように思う。
「同じライブを何度も見に行って意味あるの?」と言われたことは、ライブ好きにとっては一度でもあるのでは無いだろうか。
今日もまた「同じライブは2度と無い」の例で例えられるような唯一無二のライブとも言えるライブだったように思う。
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昨今の音楽シーンではライトな音が流行しているが、「流行する音楽」と「ライブで浴びたい音楽」は全く持って違う。
売れ線に逸れるのではなく、その作品のために捧げる愛情と熱量と同時に、なりふり構わず我が道を行く信念、何よりライブハウスの轟音が好きなのだと、タイアップ曲を多く演奏した今回のライブで実感した。
セットリスト
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