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【実験成功】TK(凛として時雨)”0 Lab.”@東京キネマ倶楽部 2021.12.22

12月23日はTKの誕生日。毎年恒例のTKのバースデーライブ(今年はバースデーイブライブ)は「凛として時雨」でも「TKfrom凛として時雨」でもない、両名義の曲を演奏するライブだ。

「実験ライブ」と称した今ライブはまさにTKのキャリアからすると前代未聞に近い、つまり彼の新境地を目撃することが出来るスペシャルライブなのだ。

今回は1部のみ参加。整理番号が20番台と良番で運良く最前列へ。ファンクラブ先行ありがとう。

ライブレポート

予めステージに設置されている階段を使うと思いきや、ステージバックの黒幕からサポートメンバー、TKの順に登場。

今日のTKの衣装は初めて見るツナギ姿。スキニーにグッズの7部袖とシンプルな衣装がデフォルトのTKが、ファッションから実験を仕掛ける。

TKは設置済のシンセサイザに手をかけ「片つ」から音の実験開始。

直後は生まれたばかりの新曲「will-ill」、シンセサイザを交えたDJリミックス風に仕立て上げた新境地のアレンジだ。「コードギアス」を意識した紫色のライティングは、キネマ倶楽部ならではのモダンで大正浪漫な内装と相まり、色っぽく感じた。

エレアコを持ったTKが凛として時雨のアルバム「#5」から「Serial Number Of Turbo」を演奏。本当は345がメインボーカルを務める予定だったがハマらなかったので、結果TKメインで録ったと言うエピソードが思い出される。

直後にギターを持ったまま「fragile」、またシンセサイザに戻ると「like there is tomorrow」を演奏。

これまた個人的にも忘れられないエピソードがあり、以前TKがAimerと対バンしたとき、Aimerが「せっかくだからTKとコラボしたい」とお願いをしたところやんわり断られたらしく、めげずにAimerから「どうして安藤裕子さんとは歌うのに私とは歌ってくれないんですか?」と上品で可憐な姿からは想像し難い強引な発言でギャップを食らい、今でもふとしたときにそのエピソードを思い出す。その日コラボレーションした曲が「fragile」である。

「unforever」は歌手のりぶにプロデュースした楽曲でセルフカバーとなる。ぶっちゃけ記憶飛んだ。まさか「Shandy」以外でセルフカバーをするとは思わなかったからだ。”実験ライブ”なんだから多少の覚悟は決めておかなければならなかったけど、さすがにそこまで心の準備が出来てはいない。いや、おそらくそれも”実験ライブ”のキモで、曲順が読めないと言う予測不能のスリリングさも彼にとっては計算内。そうした心臓にいい意味で悪い予想外も含めて”実験ライブ”なのだろうと、書いていて思った。

この日初めてTKの相棒とも呼べるテレキャスターを持った訳だが(私の記憶では)、やっぱり彼はエレキギターを持つと人格が変わる気がする。鍵盤を優しく奏でる姿とは別人のように、殺意剥き出しの鋭利で凶暴的になる。どちらが本当の彼なのだろうとライブに行く度に思うが、毎回どちらも本当の彼なのだろうと言う結論に至る。

予めステージに一人分の譜面台と椅子が用意されていたのでゲストが来るだろうと思っていたがここで登場、シークレットゲストは「Super Bloom」でコラボレーションした阿部芙蓉美さん。ステージに迎えてすぐ「Super Bloom」を演奏。

阿部さんは黒のレースをあしらったタイトなドレスが似合う長身で落ち着いた大人の女性で、その歌声は音源よりもはるかに神秘的で透き通っていて、穢れが赦されない教会でしか聴いてはいけないような神聖な歌声だった。

「せっかくなのでもう一曲」と引き続き「melt」をコラボ。私の大好きな曲だ。あまりにも心地よい無重力と包み込まれるような控えめに甘いメロウさで、本当に溶けたかと思った。初めてライブで聴いた時と同じぐらいに感動した。

TK「来てくれてありがとうございます、今回は実験的なライブという事で、ギター弾かないんかいって思ったかもしれませんが、普段しないアレンジで頑張りました...12月は作ったものを壊す時期なので(会場笑)大変でしたね、一郎さん」

Ba.一郎さん「大変だったよ!」(オフマイク)

「abnormalize」はタイトルそのままアブノーマルで、そのアレンジありなの?と衝撃を受けるまま脳がパンクした。

中野雅之(ex.BOOM BOOM SATELLITES)のリミックスを基調にしたアレンジで、最初は不慣れで緊張気味に演奏していたシンセサイザから中盤本業のギターにシフトチェンジ、しかもボーカルはTKたったひとり(無論345のパートもTKが歌う)と、神業を超えてもはや無謀で狂気的だった。

今回演奏した曲でも「abnormalize」は群を抜いてしっちゃかめっちゃかだった。数年前自分で作った曲を人様にアレンジしてもらい、その人様にアレンジしてもらったバージョンを基調に自ら破壊する。側から見れば清々しさを覚えるほど鬼畜極まりない行為だ。

だが恐ろしいのは全てのノイズを排除した完成度の高さだ。曲のアレンジはオリジナルの他にアコースティック、DJリミックスの3つが多いが、TKはジャンルの垣根をするりと超えてしまった。

DJリミックスを基盤に起き、バイオリンやピアノなどクラシック要素の強いオケを加え、さらにはギター、ベース、ドラムと従来のバンドサウンドそのものをぶち込んでしまったのだ。もはや「PSYCHO-PASS」シリーズの各話全て詰め込んだのではないかと思うぐらいに情報過多でボリューミーだった。

冷蔵庫の余り食材で作った美味しい手料理でも、好きな果物を混ぜ合わせたミックスジュースでもない、まるで本来会席料理だったメニューを御膳一枚にまとめてたかのようなバランス感覚で、新たに曲を生まれ変わらせてしまったのだ。

「abnormalize」を演奏し終えて一度ステージから去り、止まないアンコールの拍手のなかTK1人だけ再登場。

「サポートメンバーも下がってしまってやる曲が無いので1人でやります」とTKが「テレキャスターの真実」を弾き語り。どうやらアンコールやるかすら決めてなかったようで、かなり突発的な様子だった。

演奏後は「ドキドキしました」と言い残し、2部を控えたTKは再度バックステージに戻って行った。

実験結果

”実験”は好きだ。成功したら喜べるし、失敗しても面白いし、単純にワクワクする。ただ「音楽の実験」は例外で、音楽そのものに正解がないため、曲がどんな風に生まれ変わるかだけを楽しみにしていればいいので「失敗」と言う概念が無い。

TKを観ていると新しい曲を作ってライブをすることを繰り返すだけではなく、産んできた曲を新たな角度からアプローチすることも、ミュージシャンの使命として重要なのだと痛感させられる。

私は一切曲作りが出来ないので常に受け手の身だが、彼の曲を一度も飽きることなく聴けるのは、彼の音楽に対するストイックさと、いいものを届けたいと言うクリエイター精神、そして底抜けの努力があってこそだと思う。

誰かに観て欲しい実験と言うのは成功する確証があるから行う。そんな実験の目撃者となった私は、また彼が公開実験をすると聴いたら駆けつけるだろう。

TKに関連するスタッフよ、もしこの拙すぎる素人のレポを読んでくださったのなら、今日のライブの音源化を熱烈に希望する。実験の成功記念に。

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セットリスト

1.片つ
2.will-ill
3.Serial Number Of Turbo
4.fragile
5.like there is tomorrow
6.unforever(りぶ プロデュース曲)
7.Super Bloom(with 阿部芙蓉美)
8.melt(with 阿部芙蓉美)
9.abnormalize

en.テレキャスターの真実(TK弾き語り)

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