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船橋 喫茶いずみ 取材文

伊「前はほら、本当に、ちょっと鶏ガラでスープ作って麺つゆかなんかで、多少化学調味料の力を借りてスープを構築して既製品の麺入れて、『おお!けっこうウメェなぁ!』って調子こいてたんですよ笑。」
古「笑。」

(『伊』喫茶いずみ、伊藤拓史氏。千葉県船橋夏見台団地そばにある珈琲屋さん。喫茶いずみの伊藤さんとはかれこれ7,8年、何かとお世話になっています。天真爛漫に珈琲愛が爆発している、少し、狂ってる(褒め言葉として笑)くらいの珈琲オタクです。)

伊「最近はけっこうストイックモードで、まぁ化学調味料を否定はしないけど、やっぱり無化調で作った方が難しいので笑。麺も自家製麺を使用してですね笑、良いラーメンを一杯構築するという笑。ふふふふふふ笑。」
古「笑。だんだん趣味の範疇から逸脱してきている。」
伊「いやもう、そうなんですよ、すごい、やればやるほど面白いみたいな感じなんでね笑。けっこうね、最初の頃のラーメンよりは自分では良いなぁって思っているけれど、やっぱプロと、食べ比べると、笑、ちょっと、やっぱね、プロは、旨い。ホント旨い。さっきから言ってるようにね、ネルドリップを初めて知った頃に、あの~笑、低温で豆を30gぐらい使ってゆっくり点滴でこう、作って、デミタスの液体できるじゃない?あれ飲んで、『うを!これけっこうL(銀座の老舗珈琲屋さん)に近ぇな!』って思ってその足でLに行くと、もう・・・ダメだったねぇ~笑笑。その感じがある笑。何が違うのか分かんないんだけど、なんか、やっぱ違うなぁ。っていうのはあったよね笑、自分が作ったものとはさ笑。違いがすごいみたいな感じ笑。」
古「だんだんプロに歩み寄って行ってる感じなんですか?」
伊「違いはあるなってのはすごい理解できてるけど、どこがどう足りないのかまだ分かんないレベル。うん。少なくとも分かるのは、それぞれの具材とか、それぞれの、スープとか、麺とか、その全体のバランス感とか、やっぱりどれもすごいハイレベルな位置で、構築されてるなって理解できてはいます。」
古「ふうむ。」
伊「しかも最近ラーメン、笑、より複雑になっています、手法が笑。」
古「複雑?」
伊「複雑。すっごい複雑笑。見た目、あのーね、やらしいのが、最近のラーメン、見た目は中華そばですごいシンプルに見えるのがあるんですけど、ああいうやつも実はすげぇ複雑な作り方してて笑笑。」
古「複雑っていうのはどういう、出汁の取り方とかですか?」
伊「出汁の取り方が何段階もあって、それを複合してったりとかするんですよ。」
古「ひとつひとつ取っていって最後に混ぜ合わせるみたいな。」
伊「そうなの笑、で、透明に見えるんだけどすごい手間がかかってたりとか、別にやっぱり油もちゃんと作ってんだぁとか、油って香味油っていって、香りがある油を作ったりするんですけど、それをまた別仕立てでやってたりとか。もうホントにすごいっす笑。」
古「笑。」
奥様「この前冷蔵庫開けたら自分で入れた記憶のないボトルがあって、なんか、中に得体の知れない白い物があって笑、『なんだろこれぇ』って思ったら、『Tちゃん、それはね、使うから!』って笑。」
伊「油だね。」
古「油笑。」
奥様「油笑。大事な油だったんですそれ笑。」
古「ラーメン用の油笑。」
伊「あれはね、鶏ガラをスープにした時に、綺麗に上にうすーく油が浮くんです。それを抽出しておいて集めて冷やしておいたんです笑。」
奥様「知らないと捨てちゃう笑。」
伊「捨てちゃうよね。でもあれはね、ラーメンの香りのふわぁっと感になるのよ、うん。それが、ホントに良いのよ。それのもう何段階すごいのがプロですよ。油でもけっこうコントロールできるんだねあれ。」
古「そういうラーメンのことは店主に聞いて分かったことだったりするんですか?食べ歩いてて?」
伊「いや、最近ラーメン本が出て、僕はね、珈琲もそうなんですけど、割と聞けないタイプなんですよ笑。Lとか行っても絶対喋んなかったし笑。今だと割とみんな親しく話していただいているんですけど笑。そこはねホント、けっこう聞けなくてネットの知識とかをすごい駆使して自分に組み込んでいくタイプ笑。」
古「ラーメンもやっぱりそういう本が出てるんですね。」
伊「出てます笑。すごい良い世の中です。ラーメン自作教本みたいな。数ある有名店のレシピが全部。でもそのレシピは、むちゃくちゃ難しい。」
古「難しい。」
伊「うん、やっぱり使ってる材料が多かったりとか、さっき言ったみたいに三日間くらいかけて仕込むとか。割合とかもすごい難しい。自分には再現できない。」
古「家で作るんじゃ少量でしか作れないですしね。」
伊「そうそう少量でやっぱり大体十二時間くらいで作りたいよね笑って言う笑。流石に三日間は仕込めないからなぁって。」
奥様「でもね、最近とてもね、美味しいよねぇ。」
伊「ありがとうございます。」
奥様「黎明期の頃はちょっと不安定だったりしたんです。」
伊「今もう塩分濃度とかを完璧に計算できているから、そこはもう全然コントロールができてる。」
古「理詰めでいってますね笑。」
伊「いやもう、塩分濃度はねぇ~やっぱ、やった方がいいですあれ。薄くなっちゃうんですよねぇ。いつも使ってる塩分の素が決まってれば良いんだけど、そこはまだ一定がないから。ちゃんとスープに対して1%の塩が入るようにタレを調整してやるといつもの塩加減になる。」
古「1%がちょうど良い割合。」
伊「うん、大体1%~1.3%って言われてますね。それはもうホントにねぇその教本に、教科書通りだなぁって感じ笑。そこはちゃんと定量でやった方が良いんだなぁって。笑。」
古「笑。じゃあ伊藤さんオススメのラーメン屋さんはどこですか?」
伊「うへへへへ笑。ボクのオススメのラーメン屋さん笑。オススメですか笑。色々あるんですけど笑、やっぱり、Tかな。」
古「あ、Tさん。Tさんって食べたことないですけど有名なお店ですよね。」
伊「有名です。Tさんの本店の整理券取って食べる。あれは食べた方が良い。」
古「本店ってどちらに?」
伊「松戸ですね。他にも店舗あるんですけど、やっぱりご本人が作った物を食べた方がいい。」
古「本店と支店でけっこう違うんですか?」
伊「なんかね、違いますね。本人がお作りになられてるのと支店で食べるのとでは。まぁ、元は同じに作っていると思うんですけど、本店だとメンマとかも温められていて、麺がビシッとなって出てくると、やっぱこう、なんか違いますよねぇ笑。もちろん支店のも美味しいんですけど、なんだろうね?なんかね笑。やっぱご本人ので食いてぇーってなる笑。」
古「なるほど笑。つけ麺でしたっけ?」
伊「つけ麺つけ麺つけ麺。なんかね、けっこうモッテリしてるラーメンなんすけど、色々勉強になった。」
古「笑。もう勉強しに行ってるんですね笑。」
伊「ラーメンもそうだし、チャーシューの仕立て方とかもすごい勉強になった。あとこの間行った時すごい勉強になったのが、接客。」
古「接客。」
伊「うん、全然ね接しないんだけど笑、なんかね、それこそあの~笑、ちょっと緊張感がある珈琲屋さんの笑、もっとこう、ハイレベルみたいな感じで笑。」
古「けっこうピリっとしている感じで?」
伊「うん、たまたま行った時にね、ちょっとまぁ偏見じゃないけど、有名店らしいから食いに行ってみようぜ的なガチャガチャした感じの男の子たちがいて、『うお、T食べんのマジかよぉ』みたいな、ちょっとカウンターで騒いじゃう感じ。おっさんたち皆静かにしてるんだけどみたいな情景があって笑、でもTさん流石なのが、そういう子たちにも、なんだろうねぇ、別に声はかけないんだけどちゃんと丼置いて、『どうぞ。』みたいな、すごい、礼節、じゃないけど、そういう雰囲気で接するんですよ。『どうぞお召し上がりください。』みたいな。それで、最後食べ終わった後にその子たちがすごい感動した面持ちで『ありがとうございました!』って言って出てくのよ。あ、なんかこう言うの見たことあるわ!珈琲屋で、みたいな感じで笑、そこにこの間行った時はすごい感動しました笑。」
古「おぉ。」
伊「あとね、行くんなら肉は頼んだ方が良いです。肉の四種盛りが千円くらいであるんですけど、それぞれ、チャーシューが色々な姿形で調理されてて、『ああそうか、なるほどなぁ』って言う感じで違いが分かります笑。」
奥様「お店に入る前にお店の外の椅子でちょっと座って待てるんですけど、すごい緊張した面持ちのおじさま方が歩いてくるんです、すごい真剣な顔して歩いてきて、お店の中入った後すごい柔らかい顔して帰って行くんです笑。『ああ、あの方は今日の整理券が取れたんだわ』って思って笑。」
伊「笑。」
古「笑。」
伊「・・・、珈琲、淹れる?笑。」
古「あ、やりましょう笑。」
伊「話がついね笑。ついラーメンの話を笑。」
古「いやもうバッチリラーメンの話も収録させていただきました笑。」
伊「ああ、どうぞどうぞ笑。ボクは大丈夫なんで笑。」
古「失礼します。お邪魔します。」
(カウンター内に入る。)
伊「あ、じゃあ古屋くんから点てますか。」
古「ああ、なんか久しぶりですね。」
(前にも喫茶いずみさんのカウンター内で抽出したことがある。)
古「ちょっと変わったとはいえ。」
(いずみさんはコロナ対策としてカウンターをリフォームされました。)


伊「はい。どうぞどうぞ。」
古「50g持ってきました。」
伊「50g。じゃあ二人で飲むと想定してやります・・・?何gにします?」
古「全部使って150ccくらい・・・?」
伊「ああ、いいですよ。」
古「いやでも、それだと(この辺よく聞き取れず)」
伊「あ、じゃあ二杯分にしようぜぇ。100ccくらい。」
古「50で100。」
伊「うんうん。50で100いけるかなぁ大丈夫か笑。」
古「50で100は相当ですね。」
伊「どうするどうする、もうちょっと少ない量でもいいぜぇ笑。」
古「いや、じゃあ100ちょいくらい抽出しましょうか。」
伊「分かりました笑。」
古「これが噂の三段刃ですね。」
伊「はい、三段刃です笑。」
(最新のリードミル。豆を目的の粒度にするまでに三度刃を通る。)
伊「あ、挽くところやってみますか?」
古「はい。」
伊「ここに豆入れて。」
古「ここすか?」
伊「はい。」
(チリチャリチャリチリチャラという金属音混じりの音。)
伊「それで、あ、これはこのままで大丈夫です。これはねぇ、若干使い勝手が少し・・・、」
古「これ(粉受けの横の部分)何で横空いてるんですか?」
伊「あ、これはね、そういう設計なんすよね笑。ぴったりではない。あ、ここ、ONにしてもらって。」
古「いきまーす。」
伊「はい。」
(コトゴトコロゴトコロというリードミル特有の音。微かに豆が斬られる音。)
古「おおー。」
伊「お馴染みの音。」
古「はい。」
伊「いやぁゼイタクだぜぇこれは。」
(音が少し遠退く。)
古「これもうOFFで?」
伊「あ、はい。で、これが、挽き目でございます。どうですか?」
古「割と細かい。」
伊「そうなんですよ。一応ね、一番性能を引き出すために一番細かくしてます。」
古「あ、挽き目を調整できるんですね。」
伊「そうですね。ここで。」
古「こっちのツマミは?」
伊「これは上の刃ですね。三段刃なんだけど、こことここしか調整がない。」
古「真ん中は決まってる。」
伊「決まってる感じすね。」
古「これ、あれなんですね、ツマミがカチカチいうやつじゃなくて、」
伊「いうやつじゃない笑、所がヤバイから笑、ちょっとあのう、ほぼ触ってない笑、怖いから笑。」
古「あ、それで印つけて分かるようにしてるんですね。」
伊「はい笑。そういうことです笑。怖いよねぇこれ、動かせないよねぇ笑。まぁ面白いですよね。」
古「へぇ、でも調整できるの意外でした。できないのかと思ってた。」
伊「あ、そっか。二つは調整できますね。」
古「大体同じくらいのツマミの位置ですね、上も下も。」
伊「うん、そうなんだよねぇ。」
古「あ、いいですか?」
伊「うん。」
(水音。)
古「買っちゃいましたねついに。噂には聞いていましたが。」
伊「笑。まぁもう一生、一生するしかないと思ってたんで笑。」
(珈琲屋を、ってことですね。)
伊「この辺使って大丈夫です。」
古「はい。」
(作業音。ポットややかんを動かす音。)
伊「ネルは、大きいのってこれ一本しかないんですけど、これで、よろしいですか?」
古「はい。ありがとうございます。」
伊「たぶん50は問題ないと思うんですけど。」
古「伊藤さんネルはこれ、Lさんのネル生地と一緒ですか?」
伊「うん、そうだと思う。仕入れ元は違うけどY織物っていうところで綾織を、綾織外側起毛を仕入れてます。」
古「うち主に大坊珈琲店のやつ使っているんですけど、大坊さんのやつもこういう・・・」
伊「ああ、確かに、A屋さんで売ってるのと同じ・・・(離れてネルを持ってくる音)これでしょ?」
古「ああそうです。で、うちあのー、もう一種類ネル生地使ってて、薄手の物を。で、そっちは平織りですね。」
(この平織り綾織りは聞いた情報が錯綜としていて、ホントについ最近区別がつきました笑)
伊「ああ、うん笑、ここのこれね?笑」
古「そうですそうです。それで薄手っていう生地。」
伊「ああ、なるほどなぁ。あ、そのまま入れちゃって・・・あ、やりますわ。」
(ミルの受け皿から挽いた珈琲をネルフィルターに移そうとしてますね。口が大きいので少し移しにくいんです。)
古「ありがとうございます。」
(バンバンバン、と叩く音。)
伊「これ温度は80度に調整した方が良いですか?」
古「80・・3,4度くらいで。」
伊「はい。」
(やかんからポットに湯を移す音。)
古「まぁそこまで気にしないで大丈夫かな、と。」
伊「はい。このまま(やかんからポットに湯を移してすぐ)いっても大丈夫だと思うよ。この間もここで・・・(豆の袋を持ってくる)、この、珈琲屋うずのブラジル。」
古「あ、今日もブラジルだ・・・。」
伊「えっへっへ笑。」
古「お、1リットルサイズですね。」
(ドリップポットのサイズ。うちは750ccサイズ。)
伊「はい。これで、ちょっと慣れないでしょうけど笑。」
古「いえいえ。いや、ホントは1リットルサイズ使えば良いんでしょうけどね。何故か750サイズなんですよね。」
伊「うっへっへ笑。まぁそれぞれのやり方があるからね笑。」
古「これ無加工ですか?口。」
伊「口はね、加工してあります。」
古「ちょっとだけ細くしてる?」
伊「うん、少し細くしてベロって垂れやすくしてるっす。お!」
(もう淹れてますね。)
古「今淹れ方大きく分けて3種類使ってるんですよね。」
伊「えへへ笑、面白そうですー笑。」
古「そのー、細かいところまで見たら境界線は無くなっちゃうんですけど。」
伊「ああー。・・・良さげだなぁ。おおうぅぅ。」
古「けっこう・・・いつも淹れている粉の感じより細かめですけど・・・、」
伊「笑。そうですよね笑。」
古「細かいけど、やっぱ、粒揃い良いですね、この感じ。綺麗ですね。浸み込んでいく感じが。泡の出方も。」
伊「うんうんうん、やっぱり、作り手の心がそのまま表現されてくる感じするんすよね。初見で三段刃のこれを淹れててさ、そんなに破綻しないのヤバくね笑?」
古「え、そんなにあれですか、あ、でもなんかあれですね、(リードミルで挽いた時は)ネルを動かす速度速くしないと危なかった気がする。」
伊「大丈夫な感じがするけど笑、色がこの感じだと笑笑。」
古「・・・感覚的に自分のとこでやってたらもう下から垂れてきてる気がするけど、まだ・・・浸みていってますね。」
伊「うん、これはね、けっこう時間かかるから気にしないでください。」
古「細かさなのか、湯が浸みこみやすくカットされてるのか・・・。」
伊「おお、出てきてる出てきてる。・・・良さそうですね。おほっほっほほ、大丈夫だこれ。」
(珈琲液が珈琲パンに当たる音。)
古「最近待ってるんですよね、こうやって。」
(一旦注湯をやめています。)
伊「ああ、確かにこの感じだとボクは待つと同時に揺り動かしちゃう笑。待つ感じは非常に分かります。」
古「・・・伊藤さんストップって言ってくれますか?」
伊「ん?ああ、終わった時にね。100でいいです?」
古「100、10くらいで。」
伊「大丈夫す。今ちなみに20ccくらい。・・・色が良い~笑。」
古「最近1分くらい待って、下から出る珈琲の感じ見て、で、このブラジルはやる必要ないですけど、煎ったばっかとかガスの出が・・・まだ中に溜まってるなみたいな時は、叩いちゃいますね、こうやって笑。」
(フィルターの金枠をポットに叩く音。これ今はあんまりやらなくなっちゃいましたね。)
伊「笑。やりますなぁ笑。そういうことするんすか笑。そういうことしてる珈琲屋さんあんま見たことなかった笑。」
古「まぁこれが意味あるのかないのか分かんないですけど笑。」
伊「なんとなくでしょ?笑。良いことです笑。」
古「笑。お守り的な、叩いとくかって。」
伊「まぁあるよなそういう・・・あ、でもこの色でこんなんなってたら全然良いじゃん。」
古「・・・うん!やっぱ粒綺麗だなぁ。こんな細かく挽いてこんな粒がはっきり分かるの凄いな・・・。」
伊「違う感じですよね。」
古「うん、なんかあの、(ドリッパー内の豆の感じが湯を垂らしていくと)一つになっちゃうじゃないですか。」
伊「笑。はいはいはい。」
古「まぁこれも一つになってるんですけど、でもこれは一粒一粒がちゃんと分かりますよね。それが凄い。職人技ですよね。」
伊「うん、これはもうちょっとね、普通じゃないなぁってなりますよね。」
古「うん、凄い。一回Iさんのところに行ったですよ。Uさんに連れていってもらって。何年も前に。」(Iさん、I社長。リードミルを作られた方。)
伊「おおう笑。」
古「その時持っていった珈琲豆をこのリードミルで挽いて飲んだんですけど、味酷かったですね。焦げっぽくて。」
伊「ああ、そういうことになる時もあるんだよね。今の古屋達也の感じだと・・・」
古「今の豆はけっこう自信ありますね。ただこれブラジルだからどうかなぁ・・・。」
伊「いや。ここのところうずの珈琲、いろんな人に戴いて飲んだりしてるけど、キテレツなことにはなってないから。」
古「ふむ・・・、今の焼き方でIさんのとこ持ってってみたかったですけどね。」
伊「笑。何て言うかね笑。喜ぶかもしんないけど、『俺の焙煎釜買えよ』みたいなこと言うかもしれないけど笑。」
古「その時(昔行った時)手廻し釜の三人で行ったから、凄い嫌な顔されましたね笑。」
伊「笑。まぁまぁまぁまぁ笑。いやでも、良かったんじゃないですか笑。あ、ストップです!」
(ネルを置く音、から珈琲を分ける音。)
古「良いカップですね。」
伊「アンティーク中古品で購入しましたんで笑。逆に古屋くんのとこで使ってるOの、あの、」
古「ああ、オールドOのかな。」
伊「あれ、良いよね。なかなか見ないですよね。」
古「あれはカップマニアで今はそれが嵩じて販売してるっていう方から安く譲っていただきました。シンプルで良いですよね。」
伊「あ、じゃあ、いただきます。」
古「はい。いただきます。」
(間。)
古「うん。やっぱり断然すっきり入りますね。」
伊「あ、全然良いわ。」
古「すっきりしっかり出てくれますね。」
伊「やっぱり本人が淹れてくれた方がしっかり世界観が凄い出てる。あ、全然良いわ。自分で感じるでしょ?あの、なんか、ああ、通ってる通ってる。すげえな。良いっすね。」
古「この、味的に、割と細かめに挽いた味感があるけど、すっきりしてるって感じっていうのが。」
伊「それは、古屋達也の焙煎技術が凄いからすっきり行くんすよ。」
古「いやいや、これ(ミル)でしょう笑。」
伊「いやいや、焼きですよこれは。焼きなの。・・・笑。ボクこれ淹れた時もうちょっと違う味になったんですけど笑。こういう風になるんだ、やっぱ違いますね笑。」
古「今出来るだけ焦がさずに深煎りにするっていうのをやっているんで、」
伊「いやあ、やっぱ良いすね。スーと行きますね。」
古「でもブラジルはね、多少焦げても美味しいから。焦げちゃってもってそんな焦げ焦げした感じじゃなくて。」
伊「うんうん、いやでもこうやってスーッと行くもんね。しかもさ今さ50gで100ccのちょっとマッチョなことやってたじゃない?だからそれでもけっこうしっかり目ですね。」
古「デミタスくらいの濃さでしょうね。うん、美味しい。もうちょっと深くても良いかな。」
伊「そうですね、ちょっと明るめに入るから。」
古「これは最近焼いた中でも浅めだったブラジルなんです。そんなに差はないですけど。」
伊「あ、そう?全然良いじゃないですか。凄いすね。職業の人とかじゃなくて色々な手廻しの焙煎豆飲む機会がありますけど、やっぱ違いますね。」
古「手廻しは、あれはー、手軽に始められるっていうのはありますけど、やっぱり初心者向けではないですよね笑。」
伊「笑。私もそう思いますー笑。やっぱり難しいとこあると思うなぁ。」
古「難しい。難しいというか、能力が悪すぎて。」
伊「あのー、難しいよね笑。難しさを感じる笑。」
古「うん、火が入っていきにくいすね。」
伊「火通そうとして火力とか調整し過ぎると今度は焼けすぎちゃうしね。難しいすよね、ギリギリの感じが。」
古「うーん、・・・これイエメンですか?あ、全然話変わってすみません笑。」
(置いてある瓶の豆を指して。目に付く物が多くて笑。すみません。)
伊「これはね、エチオピアですね。」
古「あ、エチオピアですか、綺麗ですね、粒が。」
伊「これはね、うん、ツルっと小さめの感じで。」
古「さっきチラとイエメンのI見ましたけど、やっぱり色々混ざってきつつありますね。」
伊「はい、そうですね。なんかね、まぁ、やっぱ色々あるんだろうなって産地の方で。」
古「この間Bnei Coffeeの渡邊さんがイエメン持ってきてくれて、」
伊「うわおう!良いねぇ、ブネイイエメン、美味しそう。」
古「それはね、なんかこれよりもちょっと粒揃い良かったんですよね。」
伊「なんでやねーん笑。いや、ブネイさん凄くしっかりハンドピックしてるんじゃないの。」
古「いや、イエメンはあえてあまりやらないって言ってましたよ。」
伊「そうかあ笑。まぁ、やっぱり、こんな感じですかね。」
古「イエメン取りたいなぁって、今イエメンやめちゃってるんですよ。」
伊「あ、そうなの?」
古「はい、ちょっと、あまりにもかなぁって思ってやめちゃったんですけど。」
伊「ああー。」
古「そのー、渡邊さんの、美味しかった。久々にイエメンの深煎り飲んだなって。」
伊「うおう、ブネイちゃんブネイちゃん、ブネイちゃんの飲んでみたいな。」
古「笑。」
伊「笑。」
(間。外の車の音。)
伊「やっぱね、本人が点てるとより美味しく感じるなぁ。」
古「まぁ、どうなんでしょうね、自分だと味のイメージは明確だとは思いますけど。」
伊「ああー、そうかそうか。それはそうだ笑。」
古「まぁでも今出来上がった珈琲は全然イメージと違いましたけどね笑。」
伊「笑。」
古「こんなすっきりするんだと思って笑。」
伊「なるほどねなるほどね笑。」
古「淹れてる時の表面の細かさの感じ見てるとけっこうどっしりがっしり、もわぁっと来るかなって思ったけど、全然。」
伊「意外にサラっと。」
古「うん、味は出てるけどすっきりしてる。」
伊「うん、全部出てますよね。良かったですよ。」
古「ありがとうございます。」
伊「ちょっとビビって40gとかに豆量減らそうかと提案しかけたけど、全然その心配は必要なかった笑。」
古「笑。うちの機材じゃあれかもしれないけど笑。飲みづらかったかもしれないけど。」
伊「いやいや、焼きだもんこれ。基本的に現象は焼きですから。」
古「でもまぁ、ちょっとはありますね。さわりのあれが。」
伊「ああ、まぁまぁまぁね、ちょっとあるにはあるけど、そこはまあね、綺麗過ぎる水には魚は住めないっていうのと一緒だから。多少は濁りがあっても。」
古「うんうん、これを取ろうとすると深煎りっぽさが薄れちゃうんですよね。」
伊「それもそうですね。私も多少はある方だと思いますね。多少はあった方が良い。」
奥様「凄い綺麗な珈琲だと思います。」
古「ありがとうございます。・・・久々にここで淹れたな笑。」
伊「笑。そうですよね、前もあれを企画して、まぁ頓挫したけど。」
(前にちょっとした催しを伊藤さんとやろうとしたんですが、途中でコロナになってしまって見送りました。)
古「そうですね、あれもどっかで出したいんですけどね。」
伊「全然、こっちは大丈夫だけど。」
古「もう大分古い内容になっちゃいましたけど。あの当時とはけっこう変わっちゃってますね。」
伊「ああー、まぁ確かに。それぞれ確かにね。」
(作業音。)
伊「今度はボクが淹れればいいんですよね。」
古「はい。すみません、お願いします。久々に飲むんですよね。」
伊「そうよねそうよね笑、この間笑。」
古「この間とんぼ返りになっちゃったから。」
伊「あははははは笑。」
(この何ヶ月か前にいずみさん訪ねたんですが時間がなくなってしまって豆だけ押し付けて帰ったことがありました。)
伊「じゃあ、どうしようかな、話題に出たイエメンI、行きましょうか。」
古「お、I。良いんですか?」
伊「はい。ちょっとね、より浅くなってるかもしれないですけどね。」
古「そうですね、色的に。」
伊「もうほとんど浅い状態かな笑。ちょっとじゃあ、ボクも今面白いから50g100ccくらいで久しぶりに抽出してみようと思う笑。」
古「はい笑。」
(水音。豆を測る音。)
古「(焙煎から)一週間くらいの豆。全然油浮いてませんね。」
伊「そうだね。深いとは言ってるけど、2ハゼ起きてない。」
古「あ、2ハゼ起きてない。」
伊「うん、起きてない起きてない。浅いかもねぇ~笑。」
古「浅い深いの判定も難しいですよね、長月の飯田さんと記事読みました?」
伊「全部読んだ。すげえ面白かった笑。」
古「あの時も話題に上がってたんですけど、深煎りの条件って、どういう風に判定してるかみたいな。」
伊「まぁ一般的な指標ってもちろんあるから、けっこううちの場合色んなお客さん来るから、お客さんのイメージに合うように話はするけど、自分の中で浅い深いってやっぱ圧倒的にあって笑、このIなんかも自分的には圧倒的に深いけど笑。」
古「あ、このイエメンは伊藤さんの中では深煎り。」
伊「深い深い、全然深いですよこれ。深いけど・・・笑。」
古「でも色の判定じゃないですよね?」
伊「そうですね、味の感じですよね、やっぱり。」
(リードミル特有の音。)
伊「酸の解け方が、みたいな話が出てたけど、本当にそういう感じあると思うから。」
古「ふむふむ、全体的な判断、ですね。」
伊「そうですねそうですね。普通のお客さんが判定するのは、やっぱり家で淹れて飲んだ時に酸が来るか苦味が来るかによって判断されているとボクは感じるので、お客さんに向けて販売する時はそれを念頭に置いています。あとね、珈琲詳しい人たちなんかは、その辺はご自身で判断できるから、その辺は放っておいても大丈夫笑。他の人には軽い濃度で淹れてみて苦いか酸っぱいかだよね笑。」
古「あー、普通、一般的に普及している珈琲の濃度って、私たちからするとかなり薄いじゃないですか。」
伊「あー、薄い薄い。ホント薄いでしょ。」
古「だから大分酸味が残っていたとしても、程よくこう伸びてくれているというか。」
伊「意外にあのー、あれですよ笑、ボクら浅煎りだと思っていても『意外に酸っぱくないですね』とか言われるもん。」
古「笑。」
伊「明確な指標に従ってやってらっしゃる方もいらっしゃると思うんで、それはそれで良いとは思うんですね、もちろん一応全体としての8段階のローストがあるわけですから。」
古「そうですね。」
(コンロの火を止める音。カチ。)
伊「あ、沸いてます?」
古「沸いてます沸いてます。」
(ポットに湯を移す音。)
伊「ぐふっ笑。50g100ccかぁー、ちっとなぁーどうかなぁー笑。」
(今回全部そうですが、伊藤さんは本当に楽しそうだぁ笑。)
古「あ、もうすでにイエメンのいい香りがしますね。」
伊「ああ、はい笑。」
古「久々に、伊藤ドリップ。」
伊「伊藤ドリップ。最近のボクはですね、真ん中重視なんですよ。」
古「なるほど。うわー綺麗に浸み込んでいきますね。膨らみが。」
伊「これでね、こうやって少しずつ動かして浸みていく所を広げていくんすよ。」
古「うんうん、傾けがね、そういう感じですもんね。乾いている方に浸み込ませるように。」
伊「もうまさに、おっしゃる通り。・・・徐々に広げてって。まぁ50gあるもんなぁ。」
古「これ今デミタス淹れの感覚で?」
伊「そうすねそうすね。だって100ccしか取らないからね。」
古「うん。・・・うわぁ膨らみ良いすねぇ。」
伊「はい。・・・、これで、全体にいったら、ちょっと上に・・・、やって・・・」
古「一応この辺は蒸らしっていう感覚でやってるんですか?」
伊「そうですね。・・・、これでけっこうワタクシですね、ゆらゆらと笑。」
(ネルフィルターをゆらゆら色々な方向に傾ける。)
古「満遍なく。」
伊「すんごいゆらゆらする笑。満遍なくこう笑。ある意味、T式みたいな空気さえある。」
古「Tまろやか式?」
伊「Tまろやか式みたいな。笑。あれも、意外に真理だなって思いますよ。理想状態だとああいう感じだろうなって思うし。」
古「うん。まぁやっちゃいけないことも特にないじゃないですか、気に入るか気に入らないかだけで。」
伊「笑。そうすね笑。けっこうこれゆらゆらしてて、一分くらい経ってると思うんですよね。で、あとはね、こうやってズンと。」
古「点滴混じりの。」
伊「はい。」
古「まぁ大体、あれですよね皆さん、原則に従いつつそれぞれに色があるみたいな。」
伊「うん、まぁね、ありますよね。大筋のところは大体は。それぞれのね、使い方っていうのはあるけれど。」
古「ふんふん、例えば伊藤さんと私、湯の回しかける向きが逆っていう。」
伊「ああ、そうだったっけか?笑」
古「私時計回り。」
伊「ああ、そうなのか。それもう考えられない笑。今やろうとしたら頭おかしくなる笑。」
古「そういう細かい違いで変わってくるんでしょうね笑。」
(珈琲パンに珈琲が当たる音。)
伊「このまま行っちゃおうかな。・・・、このまま行っちゃいます。」
古「うーん、(粉の感じが)やっぱ綺麗ですねぇ。」
伊「そうか、そういう・・・、ボクもう見慣れてきてるから、ちょっとそこに対する感動が少ないけど。」
古「うん、感動しちゃいますね。あんまりこれを長時間見てると脳が疲れそう。」
伊「ああなるほどね。高解像度過ぎてね。あ、こんなもんですね。・・・オーケイです。」
(作業音。珈琲を取り分ける。外を車の音。)
伊「50g100cc久しぶりにやったなぁ。」
古「私も相当久しぶりにやった笑。」
伊「ああ、そうですか笑。」
古「うん笑。」
伊「・・・はい。」
古「ありがとうございます。いただきます。」
伊「はい。」
(間。)
伊「ぐふふふ笑。・・・おおう。なるほど。イメージより酸っぱく入った。何故なら酸がバッってきたから笑。でも、良い、悪くないです。」
古「いつもの感覚より濃いからじゃないですか?」
伊「それもあると思う。粉多く使って、苦いのでもギュウと出すと酸が出るときあるじゃないですか。その感覚に近いかもしんないです。」
古「すごい、これをそんな通ったわけでもない私が言うとあれだけど、めちゃくちゃLさんぽいですね。」
伊「いえええぇい笑。ありがとうございまーす。」
古「口に含む前の香りの感じもそうだし、口に含んでからの酸味のこう、じゅわっとくる感じといい。」
伊「いえーぇえい、嬉しいよー、素直に嬉しいよー。」
奥様「良かったねぇ拓ちゃん。うふふふ。」
(このご夫婦の感じが良過ぎる笑。)
伊「これねえでもね深煎りだからね笑。」
古「これはどうでしょうね。私は中深煎りって言うかな。」
伊「そうですよね。まぁ豆量と抽出の兼ね合い的にはこれで良いかなって感じかな。」
古「でもこの酸味がなくなったら、このエキゾチックな感じと言うか、異国ロマンスがある感じが薄れてしまう。」
伊「完全にそれです。酸味は欲しいですよね。酸味は欲しいす。割とその受け皿が深煎り専門の人たちより大きいかもしれないですねボクは。」
古「色気がありますよね、この酸が出ると。」
伊「うん、久しぶりに50g100cc点てたけど、こういう風にになるんだなって発見がありますね。あんまりやんないんだけど。普通100cc点てる時って30gでやるんですけど、なんか、濃い方が意外にすっきりするかも。意外に意外に。」
古「味が十分に出切った状態でカットできるから、より味わいの輪郭がはっきりするんじゃないですかね。」
伊「そうなのかも。その後サラッと行くしね。ちょっと今久しぶりにやってみて勉強になりました。」
古「・・・、脳内で勝手にオールドビーンズの風味が乗ってきますね。」
伊「あはは、そうですか、それは私にとってはあの、またとない褒め言葉の一つでございます。嬉しい嬉しい。やっぱりね、Lを尊敬してやってきた甲斐がありますね。・・・ちなみに明日Sさんの御誕生日なんです。爆誕祭。ちゃんとTwitterでもつぶやきますんで。爆誕S.I。ちなみに今もL Tシャツ着てますから。」
古「その、L Tシャツっていうのがあったんですね。それ今初めて知りました。」
伊「そうなんです。(Tシャツのデザインを読み上げてくれているんですが聞き取れず。)」
奥様「赤いポットのマークのやつもあるの。」
伊「あっちの方が格好良いんだけど今日は洗われてたの。最近もうこれしか着ないっす笑。」
奥様「発売当初は遠方のお客さんから多めに買ってくださいっていう、うふふふ笑。なんか銀座のユニクロに直接行かないと、買えないんです。通販とかで売ってないので。」
伊「うふふ笑。・・・あー、でも(珈琲が)一週間経って、ちょうどこう落ち着いて良い感じかも入れないね。」
古「焼いた当初はどういう感じだったんですか?」
伊「もっとね、イケイケ感がありました。」
古「イケイケ。」
伊「もっとこうスパイシー感が出ててむしろ良いんじゃねえかみたいな勢いなんだけど、でも同じ豆で次淹れた時、急にその感じが陰に潜みそうな危険性もあるから、やっぱりこのくらい経ってくると何回淹れてもこの感じになってくるよなみたいな。完全にバランス感が良いですね。素晴らしい。まぁでも最初の焙煎した後で良い感じのやつは時間経ってもまぁ大体大丈夫だろうなって感じはするよね。」
古「ふむふむ。・・・、私時々裏切られますけどね。」
伊「裏切笑、られることもある!笑」
古「最初あんなに美味しかったじゃんみたいな笑。」
伊「笑。どの豆でとか傾向ありますか?」
古「いや、どうだろ。でも、私の焼き方だと、2,3日くらいから割と苦味が目立ち出す傾向にあるんですよね、最初そこまで苦味感じなくても段々苦味がちになっていって、でそこから熟れてくるみたいな感じが多いですね。」
伊「良いですね!」
古「大体どの豆もそうかな・・・、イエメンだけは別か。」
伊「ふむふむ。ボク、大体イメージで総合焙煎時間決めるんすよ。」
古「何分までに煎りあげる。」
伊「そうそう。時間内に煎り切るためにちょっとまだ浅かったから火を強くしようみたいなのあるんすよ。そういうのは決めてない感じすか?」
古「物によりますけど、今焙煎時間はかなり短いですね。」
伊「ボクね、あの、受注生産で、ドリップパック売ってんすよ今。で、これ焼く時はかなり短時間で焙煎終了させます。」
古「へぇー。そのー、短い方が味が強くなるじゃないですか、ちゃんと中まで火が通せれば。」
伊「はいはい。」
古「今はだから、聞いた話じゃS珈琲さんとかがやられているようなタイプの焙煎になるのかなって。」
伊「Sさん笑。Sさんもね、この間いただいたキューバがすごく美味しくて笑。まあね、今手廻し、大坊さんの本とかにも書かれていますけど、やっぱり総合時間3,40分でも・・・、これは個人的な見解ですけど、火強い状態の時間は、長時間でも短時間で焼けている場合でも、変わらないかもしれない。根拠として自分の焙煎がそうだから。ボク凄い強いんすよ火。温度で言うと40度くらいから、まぁ、1ハゼ2ハゼくらいの温度まで急激に上げていくんすよ。」
古「40度って言うのは、生豆入れてから・・・」
伊「そうそう、ちょっと釜余熱しておいて、豆入れてから温度が下がり切った所、カシテンですね下死点。まぁ中点とも言いますけれど。そこが40度くらいなんすよね。」
古「けっこう低い?」
伊「うん、すごい低い。何故なら強い火にずっと当てたいから。」
古「強い火にずっと当てたい。」
伊「うん、これは個人的経験則なんだけど、そうすることによってスーッといく感じになったんすよね。なんかね、うん、強火にした方が良い、ボクの場合は。」
古「すっきり感が強くなる?」
伊「そうすねそうすね。焼け残っているイガイガ感が少なくなる。ボクの場合、短時間も長時間の焙煎もやるんですけども、どちらの場合でも最初はとにかく強くが良い。が経験的な部分。」
古「で、後半を引っ張る?」
伊「後半引っ張ると、ここに出てきたようなやつになりますし笑、短いとこっち側になりますね(おそらく瓶に入った別の豆を指している)。今日は面白いの焼いたよって言って短い焙煎の出す時もありますけど、基本的には後半延ばしたもの、大体20分くらいのもの。」
古「20分。」
伊「20分。それがね、確信に変わったのは、それこそあの、Kさんの火だるま焙煎。」
古「あー。」
(火だるま焙煎。手網に豆を詰め込んで豆を火に包みながら短時間焙煎する方法。(良い意味で)コーヒークレイジーな方が考えたに違いないので真似をされる方は火事火傷などご注意ください。)
伊「あれってやっぱしすごい短いんすよね。で、2ハゼよりはるかに超えている段階にあって。Kさんがオリジナルで送ってくれたものってこれ(リードミル)で挽いて飲んでもすっきりして旨いんすよ。」
古「ふむふむ。」
伊「ボクその頃、短時間焙煎、ちょっとこう、疑問視していた人間で笑。」
古「これちゃんと焼けんのかな、みたいな。」
伊「うんうん、でもI社長も勧めてたから、まぁ一応うっすらそういう現象はあるんだなとは思ってたんだけど、」
古「あー、なるほど。Iさんも早かった。」
伊「早い。あの人は早いです。8分から10分以下を勧めているんで。・・・うん、まぁそういうのもあって、Kさんの火だるま焙煎を飲んで『うわっ!』って思って笑。あー、なるほどなと思いました。それで色々繋がったんだよね。KさんはKさんでまた色々な思想があるとは思うんだけど、」
古「笑。」
伊「まぁ単純にボクにとっては、『あ、強火でいいんだ』っていう。」
古「ふむふむ、でもあれ(Kさん火だるま)、手網じゃなきゃ厳しいんじゃないすかね?」
伊「あ、火だるまはそうでしょうね笑。強火でやってこうひっくり返すみたいな笑。」
古「笑。確かにKさんのあのマンデリン美味しいですよね。」
伊「うん。だからそういうのがあって強火で良いんだなって感じました。あと、これは個人的な推測ですけど、極端な話、そこを強火で焼いていれば後はどうなっても大丈夫みたいな感じさえある。強火でやってうまく化学変化起きてれば、後でダラダラしたり、そこで切っちゃっても全然オッケイ。だからボク短時間焙煎も否定しない、手網で短時間焙煎の豆持ってくる人もいるけど、それなりに上達してくれば焼けてくるなって思うしね。ボク自身も、火だるまじゃないけど、短時間で焼いてみて、『やっぱり焼けるんだ』っていうのは実感としてあったから。」
古「ふむふむ。ちなみにその最初の強火で最後まで煎りあげた場合どういう味になりますか?」
伊「強い味になる、かな。でも希望の煎り具合で切っちゃうから。」
古「中まで火が通らない、ということは?」
伊「あ、それはね、ないない。意外にないのよ。」
古「あー、まぁIさん・・・、僕らがI製作所さん伺った時にそこに、確か5kgの焙煎機が置いてあって、試しに焼いてくださったんですよ。」
伊「はいはいはいはい。」
古「で、その時は確か8分くらいで焼かれていた・・・10分ちょいだったかな・・・、ちょっと記憶が曖昧なんですけど笑、とにかくそのくらいで、すごい浅煎りの珈琲だったんですけどちゃんと火が通っていて美味しかった。」
伊「うん、そのくらい。焼ける焼けないの話だと全然違和感なく焼ける。後はどうでもいい、どうでもいいって言うとすごい問題あるけど笑、割と大丈夫な感じ笑。何て言うんだろ、違うかもしれないけど、手廻ししてて、何も余熱がない状態からガンガン強火で焼いていって、1ハゼの時間まで15分くらいあるかもしれないけど、1ハゼまできたら皆火下げますでしょ?で、実はその下げるところから熱の上がりがかなり強火の状態なんじゃないかな。で、下げ過ぎちゃうとそのまま落ちてっちゃうけど、上手い人はそのままギリギリのところまで持っていける、って言うのが推測ですけど笑、妄想の笑笑。」
(焙煎時、強火を入れてある程度の熱量を加えたらその後は好きな味作りの為に、自由に焙煎時間を伸び縮みしてもいいんじゃないか、手廻しの場合、1ハゼとかで火を下げる人が多いけど、その時には熱量的には十分入っているんじゃないか。という推測。)
古「温度って手廻しだと分かんないですからね。温度計入れて温度を測ったとしても上昇速度はこまめに温度測って都度計算して出すしかないですしね。」
伊「今若い人たちの間じゃRORって言って、専門用語で。」
(知らなかったので何の略か調べました。RoR=Rate of Rise、温度上昇率。)
古「あ、そういう指標もあるんですね。」
伊「ありますあります。何分間で豆の上昇温度はどのくらいかっていう。」
古「でも過ぎ去ってからじゃないと分かんないですよね?」
伊「うんまぁ、最近の道具だとそれがリアルタイムで過去と参照しながらできるし、現在地も平均値で割り出すことができる、割と普通の、汎用コンピュータでも出来るようになってるんで、ある種カーナビゲーションみたいな感じでやることは可能です。」
古「すごい。じゃあ、自分の理想の温度上昇の値を入力しておけば『現状こうなので今からこうして行けば値に沿いますよ』みたいなこともできる?」
伊「火力で都度調整しながら予測される温度調整に対しての調整っていうのは割と色々な機械でできると思う。自動調整っていうのはハイスペックマシンじゃないと無理だと思う笑。」
古「へぇー。でもまぁそこまでいってるんだったら、もう充分ですね。」
伊「うんまぁ、ある程度の部分は理論的にできるけど、ボクはでも、やっぱり人間が人間に飲ます限りは充分とは感じないなぁ、なんか、ありますよね、その、焼くのもそうだし、うん、ありますよ笑。まぁ割とボクなんかはすごい、データに頼ってますけど笑、正直言うと笑。」
古「正直、データの方が頼りになりませんか?」
伊「うん、過去の記憶に参照する場合はそれはあります。」
古「自分の感覚より」
伊「うん、で、あの、ボクの場合、焼き上がってできたデータがあるでしょ?もう一回焼く時はそれでやるの。」
古「一回前の焙煎を追っていく形。」
伊「うん。追っていく形。『うを、この間焼いたこれすげぇ良いのできたわ』って時はかなりの精度で再現することが可能。」
古「そのデータに沿って焙煎すればほぼ同じ仕上がりになる。」
伊「うん。ほぼ同じになる。ま、それはまぁ、そうだよねって感じですね笑。そこには余計なものは入んない。・・・、だがしかし、それを飲み手として意識で加工する部分には、やっぱり飲み手側の部分があるからねぇ、レシピを作るには、レシピっていうか、物事を作り出すのはやっぱり作り手側だからなぁ。後で再現することは、もう今科学技術が高い時代だからそれなりにできる側面はボクはあると思うけど、そうは言ってもやっぱ人間が人間に飲ますんだからねぇ。今珈琲淹れるんでもレシピが優先な珈琲もあるじゃないですか。」
古「スケールを置いて測って時間見ながらみたいな?」
伊「うん、その通りだとは思うけど、なんだろうねぇ、さっきのラーメンの話じゃないけど、ご本人のラーメン食べたいよなみたいな何かがそこにある感じ笑。けっこうだからあの、手廻しの焙煎も、再現はしやすいと思う機械で。」
古「私しばらく、Bneiさんで機械の焙煎機借りてやってたんですよね。迷惑だろうなぁとは思いつつ半日くらい篭りながら笑。」
伊「笑。素敵、楽しそう笑。今、良い時代だからできるんじゃないかな、機械の方でも。」
古「結局(手廻しの焼き方に)寄せてって、で、でもやっぱり違くて。何が違うんだろうというところで止まってるんですけど、その、半熱風で風通してるじゃないですか?」
伊「はいはいはいはい!」
古「それが強過ぎるんじゃないかと思っています。」
伊「ううを!!」
古「それが強すぎて味と香りが飛んじゃうんですよね。」
伊「ああ、なるほどねぇー。」
古「その、味と香りが飛んじゃうって言うと語弊がありますね。確かに残っているけど・・・」
伊「いや、手廻しってそれが抜けないのよ。それが逆に素人殺しでもありますけど笑。分かりますよ。」
古「あの、幹の部分は残るんですけど、枝が払われちゃうんですよね。手廻しだと、そういう枝葉の部分まで残っているような感覚。」
伊「おおー、じゃあアレですよ、このI製作所の焙煎機は送る風の量とかも繊細に調整できるようになっているんですよ。」
古「おおー、やっぱり出来るようになっているんですね。」
伊「うん。」
古「一応Fさんの方にもレバーが付いていて調整できそうなんですよね。だから、今度一回、それを全部切ってみようかなと思っていますね笑。・・・。でも、それやったら機械の焙煎機の良さっていうか、その、言ったらメインの機能なわけじゃないですか笑。」
伊「エヘヘヘヘ笑、そうね、アレは一体化してあるものとボクは思ってるんで笑。」
古「それをそこまでしてやる意義はあるのかどうかっていう。」
伊「うん笑。まぁやってみることにボクは価値があると思うけど笑。」
古「まぁ試してみないと・・・、ただ、その特性を活かした上で手廻しの焙煎器より美味しい珈琲を目指すっていうのがやる意義じゃないかなと。」
伊「まあね笑。」
古「でも機械の焙煎機は優秀ですね。手廻しの焙煎器で、あ、これ失敗したなまずいなっていう時は本当にマズイんですよ。だけど機械だったら、あ、でもこれはこれで美味しいみたいな。」
伊「なるほどね笑。」
古「で、細かく詰めるのもすごく楽だし。温度分かってて時間も分かるから。タイミング予測して温度調節しようって。だから突き詰めてやるんだったら機械の方がいつかは美味しい珈琲が作れる手法かなぁって。」
伊「ふむふむ。今言ってたような風の調整とかも意識して落とし込めればいけるかもしれない。手廻しの焙煎器でガンガンやっている感覚があるが故に届く部分があるかもしれない。」
古「ああ、手廻しの焙煎工程に似せて機械で焼くっていうのはけっこう簡単にできましたね。」
伊「ああなるほど。そういうのはそうでしょうね。ボクも手網焙煎やってて良かったって思いました。最初ボクは機械の焙煎機使った時データ重視でやってたから、それはそれで色々勉強になったけど、振り返るとやっぱり手網とかの経験で開拓するスピードを上げることはできるなっていうのはありますよね。手網焙煎をしたことで発見したことを機械の焙煎機に落とし込む。だから、送る風調整したいなってのもいじってみたらいけそうな気がする。」
古「ふむふむ。・・・まぁ、でももうそれしか(送る風の調整)残ってないよなぁっていうのもありますね。だからやったらかなり寄せられるんじゃないかなぁと。」
伊「まぁ、でも手廻しにはよく言えば揺らぎのようなものがあってそれが面白い。」
古「ううーん、よく言えば揺らぎですけど、悪く言えばブレですからね。」
伊「笑。まぁボクとしては飲みに行く側視点だと、ある程度イメージがあってその中で揺れ動いているっていうのは全然良いけど笑。」
古「それは私もそうですね笑。でも作り手側だとやっぱりねぇ。」
伊「それも分かります。すごい良いのできたなぁっていうイメージがあってそれを再現したい時にやっぱりズレると最悪ですもんね。それは確かに。」
古「特に、今の焙煎方法にしてから難しいんですよね。」
伊「そりゃあそうでしょうね笑。同じ時間に対するブレの差がすごいもんね笑。」
古「全焙煎そうでしょうけど、それよりも本当にちょっとした違いでかなり味が変わってしまうんですよね。」
伊「分かります。」
古「そこをまぁ、大目に見てもらおうという事でやっているんですけど、でもその中で理想の焼け方っていうのがちらほらできるわけじゃないですか。」
伊「笑。うんできますよね。」
古「よし、あれをもう一回やろうってやってそこに届かないっていう時・・・」
伊「ああ、そうね、それは悔しいよねぇ。」
古「それはやっぱり苦しいですよね。」
伊「うん。」
古「最近特に気温と湿度の違いによって工程に違いが出るっていうのが、今更ですけど本当に如実に分かるようになって。こんなに影響出るんだって。」
伊「なるほどなるほど笑。」
古「本当にちょっとしたことで火を上げたり下げたりっていうのが真逆になったりするんですよね。」
伊「確かに、それはあると思います。(コンロの火を点ける音)今こうしているのでも出てくる熱量ってやっぱり時々で違うんですよね。燃えているガスの量というか。だからそういうのすごい分かります。ボイルシャルル、pv=nrtとか、ああいうのでやっぱり違いますよね。10℃変わると全然変わる。ちょっと今こうして、ここ(コンロの周りの空気)温めると違いますしね。」
古「その日一番最初に焙煎する時火を点けると、その火ってすごい揺らぐんですよ。で、たぶんそれは引き込みのガス管の方が外気温の影響を受けやすくて安定してガスが供給されるまで状態が不安定だからだと思うんです。」
(引き込みのガス管は元に比べると細いだろうし、地中から家内と外気温が変わるところを通ってコンロまで来るので火をつけずに一定時間経つとその分引き込みのガス管に溜まったガスは影響を受けやすいんだろうなという推測。なのでそこの部分のガスを使い切ると火が安定し出すのではないか。水道もそういうとこある。)
伊「確かに。それはホントそうかもしれない。」
古「・・・最近、ですね、炎自体もあまり見なくなってきました。」
伊「笑。何を感じているの?笑。」
古「こうガス台があるじゃないですか、で、下ステン張りになっていて、カウンター側はちょっとした衝立状になっていて、で、火を点けてやっている時のここ(衝立状の部分。高さの部分。)の照り返り笑。炎で照らされたここの明度で見るようになってきました。炎の大きさは時々で揺らいで見えるけど、ここの照り返りの明度はそれよりも信頼できるんですよ。」
伊「そうなの。ええ・・・。それちょっと妄想も入って喋りますけど、最新の物理学でホログラフィー原理に通じる。」
古「それはどういう?」
伊「三次元のものが二次元に、あのほら、三次元のものを紙に写した時に二次元だけど3Dに出てきたりするでしょ?それって二次元に印刷されているけど三次元に見える。で、三次元のものを二次元に計算すれば三次元のものも描写できるっていう理論があって。」
古「それ!それですよ。」
伊「笑。で、炎は立体じゃないですか、でこっちの照り返りは二次元で笑。」
古「それだ!それですよ!」(自分の声だけど、嬉しそうだ笑)
伊「その話を思った。ホログラフィー原理出たわ笑。」
(ホログラフィー原理。インターネットで検索して出てきた記事をいくつか読んだのですが、難しかった笑。伊藤さんの説明はとても簡単に分かりやすく説明してくださっています。量子力学の分野でブラックホールに落ちた情報はどうなるのかという疑問から生まれたそうなので、いかんせん日常のレベルで通用するものか分かりませんが、おそらくこの理論の言わんとするところは我々という今知覚されている存在はホログラフィックのようなもので、実際に我々という存在を
定義づけている情報はどこか別にデータとして二次元的に表されていて、それが
投影されて存在は現出しているのではないか?ということじゃないかと。つまりここで話している焙煎環境に置き換えると、コンロの火はただの情報の投影で実際のコンロの火の情報は照り返りの光、ということですね。読み取れる情報の正確さの程度を問うものではなく、その人にとってどちらが読み取りやすいか、ということかもしれませんね。私の場合は三次元に現出したホログラフィックよりも二次元に書かれた、コンロの火を三次元に現出できる情報の方が読み取りやすかった、ということですね。・・・たぶん。
とても面白い原理だと思ったのでお詳しい方がいらっしゃいましたらぜひ教えてください。)
古「こう焙煎器前に置いて廻しているじゃないですか、で、私から見える実体の炎ってこっち側(自分のいる側)からしか見えないじゃないですか。」
伊「はい笑。なるほどなるほど笑。」
古「まぁ覗けば下側も見えるけど、向こう側は見えないじゃないですか。だから立体として一時に全部感知出来ない。」
伊「そうだね笑。」
古「でもこっちのまとまった照り返しの二次元に落とし込まれたものだったら・・・」
伊「なるほどなるほど、全量のデータになっているもんね笑。」
古「それ、それですよ。うわあ、すっきりした。不思議だったんですよ。なんでこっちの照り返しの方が信頼できるんだろうって。」
伊「よかった、物理学の勉強がちょっと役立って。」
古「なるほどお。いやあありがとうございます。」
伊「最新の物理学を駆使して焙煎しているわけね笑。」
古「いや、そんな感じじゃないですよ、どうにかして、何か少しでもヒントを、頼りになるものをって。」
伊「笑。こっちの照り返しっていうのは斬新笑。最初何言ってるんだろうって思った笑。」
古「もし焙煎場所を動かしたら同じような照り返し部分も作らなきゃ笑。」
伊「照り返し部分をね笑。ハハハハハ笑。それ大事ですね笑。」
古「いや、でも本当にそうでしょうね。人間はたぶんそっちの方が感知しやすいんでしょうね。三次元だと奥行きがあって膨大になってしまうけど二次元ならって。」
伊「うん、そうかもしれませんね。」
古「いやあ、なんか納得しちゃったなぁ。だから微圧計とかも頼りになるところあるんですかね。」
伊「微圧計も、もうちょっと言うと、あれも圧力なんで気温で安定しなくなるんで、流量と圧量のバランスをとって全体のガスの量はどのくらいかって判断する必要がある。それをリアルタイムで計れるといいんですけどね。」

(間。)

伊「ウヘヘヘ笑。なんかフリートークしてきちゃいましたけど笑、何か他に聞きたい質問とかありますか?」(この時点で1時間半経過。)
古「笑。大体話そうと思って考えたこと話しちゃいましたね笑。もう少しだけいいですか?」
伊「笑。はい笑。」
(ずっとカウンター内で立って話していたため客席側へ移動する。)

(しばらく焙煎についての話。今回はカットしました。どこかで出すかは不明。)

伊「焙煎豆をどのくらい置くか、みたいな話は難しいよなぁ~。」
古「少し味が硬いくらいに焼けたものが2,3週間経って柔らかくなってくるみたいな。」
伊「あるある。今日飲んだIモカもそうだけど1,2週間経つと落ち着いてきて、なんて言うかなぁ、想像しやすい世界に入ってきますよね。ある程度こう整った世界で物事を感じることができると言うか。でも一ヶ月くらい経って飲んでみたりすると今度は、あれ?こんなはずじゃなかった、とか、あれむしろ美味しいな、とかもあったりする。」
古「ふむふむ、焼き方、焼け方に寄りますよね。」
伊「うん、豆の賞味期限的なものがどこまで保つかとかね。焼きがあまいとすぐ悪くなる。」
古「水分がちゃんと取れなかった場合か、肌にダメージが入り過ぎちゃった場合か、あるいは両方か。があると劣化が早まるんでしょうね。」
伊「ウンウン、そうですね。」
古「私の(賞味期限の)目安だと、豆に油が浮くじゃないですか、で、その油が引いたタイミング、そのくらいで注意しだしますね。」
伊「油が引いたタイミングね笑笑笑。」
古「一回出た油が引っ込んだ後はけっこう味が変わりますね。でもその後が美味しいって言う時もありますし、あ、これは酸化感強過ぎてダメだ・・・って時もありますし。」
伊「笑笑笑。油引っ込むのね、分かります笑。」
古「油引っ込んで、今あそこに並んでいるような(いずみさんの豆の瓶を指しながら。焙煎したての珈琲豆で油は浮いていない。)珈琲の豆面じゃなくて、すでに一回生きて、人生を終えてしまった後の表情になるじゃないですか。」(これは比べてみるとよく分かります。)
伊「なりますね笑。油出て引っ込んだ後ね笑。」
古「それを自分が使う豆としては、味大丈夫かな、と心配し出す目安としていますね。豆出した時に油が引いていたら、あ、これ危なそうかな、という風に。バラつきありますけど今の焙煎豆だと大体それが一ヶ月くらい。」
伊「なるほどね笑。ちゃんと焼けていれば一ヶ月くらいは問題ないですね。なんかあの、一回話したことあるかもしれないけど、ドリップパック。あれ、粉の状態で密閉されていて、淹れてみてそんなにこう、ヒネた味しないんですよ。」
古「ふむふむ。」
伊「そういう現象から考えて、ちゃんと焼けた豆っていうのはどういう状態にあっても大丈夫なんじゃないのかなぁって考えていますね。それが(頭の)片隅にあって、Kさんのああいう火だるま焙煎に接して、ああそうか、こんなやり方でも大丈夫なんだって。ちゃんと焼けていれば、問題ないんだなと。ちゃんと焼けた豆なら粉にしてもしっかり保つし、そんな焼き方まさかしないだろうというような焙煎法でもちゃんと焼ければ美味しい。」
古「そういう指標として焼く前と焼いた後の水分量の違いがありますね。」
伊「あると思いますあると思います。焙煎した豆を2,3日裸で置いておいて、雨が降ったりした翌日なんかに淹れてみると悪くなっている味しますね。」
古「へえ。やっぱり水分を吸ってしまって?」
伊「と思います。実際重くなっていますからね。20gが25gくらいになってた。あれ良くないね、水分吸うのはね。除湿剤に使えるって聞きますけど、そうなんだろうな、って思います。」
古「まぁそこから抜けさせたわけですもんね。」
伊「そうそう笑。そこからボクたち頑張って水分を出したんです笑。」
古「湿気はやはり天敵ですね。」

(録音できているか確認した際、止まってしまったので新しいファイルにして再開。)

古「大丈夫かな。さて、珈琲の甘味についてどう考えますか?」
伊「お、王道の話題来ましたね。甘味はね、ボク自身は珈琲に対して感じ取れるとは思っている。美味しさの指標になっているとも思う。ただ、(珈琲を作る)目的地としては、甘さ、じゃないところに置いている。その、美味しい珈琲は確かに甘いし、ボク自身が作る珈琲にも甘さ感じるし、甘味感はあった方がいいとは思うんですけど、甘さのために珈琲を焙煎する抽出する、みたいなトコに力点は置いていない。ボクの作り方はね。」
古「なるほど。まぁこれBneiさんの時にも話に出したんですけど、」
伊「ね笑。まぁ甘さは本当にみんなそれぞれに意見があるだろうし、個人的には色々聞いてみたいトコだね笑。」
古「私は珈琲って甘さはないと思っているんですよ。」
伊「知ってます知ってます。」
古「そもそもなんでそう思ったかというと、珈琲ってそもそも美味しいのかと思って・・・」
(Bneiさんの取材文で話した珈琲の味についての考え方を伊藤さんにも改めて話しています。)

伊「笑。なんかみんな言っていることは違うけど、その、甘味に対しての位置付けは違うけど、そういうことはあるよなぁ。」(そういうこと=珈琲の甘さが本当にちょっとしたことで失われるという実体験。)
古「・・・そう、だからあの、私も味の要素としては取り出さないけど、その要素の組み合わせとして甘く感じることがある、っていうのはまぁ『甘味がある』っていう言い方もできますしね。でも、本当に味をバラバラにして取り出して考えるなら、私は甘味はないなって思います。」
伊「あーなるほどね笑。確かにすごく納得できる感じだった笑。今聞いていて思ったのが、確かに、苦味だけの珈琲や酸味だけの珈琲を美味しいって思うのは、もちろんそういう人もいるだろうけど、難しいよね。珈琲から純粋に苦味の成分と酸味の成分を取り出して飲んでも美味しいとは感じないですよね。珈琲は色々な味のバランスの取り合いの中にあって、バランスをうまく取れた時に美味しいものができる。それが深煎りでのバランスが取れたもの、浅煎りでのバランスが取れたもの、色々あると思うんですけど。」
古「この味の分け方がちゃんと自分の中でまとまってから自分の珈琲を作るっていう感覚が明確になったなって。」
伊「なるほど。言語化できるほど明確化されるとね。」
古「まぁこれが真実かは別として笑。自分の中で、こう、ちゃんと組み立ててできるなって。と同時に焙煎のやり方も今のやり方に変わっていきましたね。もちろん今の方が飲みにくいっていう人もいると思うんですけど、自分が美味しいと思う珈琲の味というのを強く出せているかなと。」
伊「それにあのー、古屋くんはネルドリップとかもより工夫が入って変わってきているかもしれないね。前はほら、点滴である程度濃度やまろやかさを出そうっていうのが主だった目的だったのが、よりこうそれぞれの珈琲に分けた細かい抽出法になってきているのかもしれないね。それも焙煎と噛み合うようになってきたのかもね。」
古「ドリップって難しいですよね。むしろより単純化しちゃっただけかもしれない。どうお湯が通り抜けるか、っていうのに焦点を絞って、その違いで大きく三つに分けたって感じですね。さっき見せたのが一番濃い珈琲を出す時の淹れ方で、それはFコーヒーさんを参考にしました。」
伊「ああ、Fコーヒーさん笑。」
古「はい。M屋式の淹れ方の肝はどこかなって考えた時に、珈琲の層を完璧に固めてしまう。それから水流による圧力変化で成分を下に出すっていう。」
伊「はいはい、なるほど。」
(私は期間を置いて色々な淹れ方をしている派なので今はまた少し淹れ方違いますね。でも大元の考え方は変わっていないです。)
古「あんまり細かく考えちゃうともう訳分かんなくなってきちゃうなって。」
伊「そうそう、だんだんスピリチュアルになってきちゃいますしね笑。」
古「そうそう笑。だから収集付かなくなってきちゃうんで焦点を絞って考えていますね。だから、ネルドリップに関してってうまく言えないですね。今。どれが正しいとかどれが悪いとか、ほんと分からんですね。『どうしてそうやってるんですか?』って今聞かれると困っちゃう。」
伊「エッヘッヘッヘ笑。いやでもそれは笑、淹れ方は、それは後年数値化できるかもしれないけど、今はやっぱ分かんないとこ多いと思うので笑。その人が良いのが良いでそれで良いと思います笑。」
古「笑。昔はね、さらっと、当たり障りなくっていうか、まぁ思ったように答えてたんですけど、今は色々考えちゃって答えにくくなっちゃうんですよね。」
伊「うん、難しいところですよね。まぁ我々もね、だんだんほら、今若手も出てきているから笑。」
古「笑、まだ若手じゃ通用しないっすか笑。」
伊「笑。まぁだから色々考えるよね笑。」
古「でも伊藤さんの抽出の感じは、根本は昔から変わらないですよね?」
伊「そうですね、根本的なところは変わってないと思うけど、淹れ方は今のバージョンになるまでは大分変わった後だと思いますよ笑。」
古「横で見てた感じでは淹れ方の流れは一緒なのかなって。」
伊「そうですね、基本的な流れは一緒ですね。こう、真ん中にお湯入れて均等に蒸らして最初に濃い液体を出すように動かしてあとはスーッと行くみたいな。」
古「伊藤さんはLさんのネルドリップは真似しないんですか?」
伊「ああ、あれはね、できなかった。やったよ?すごいやったよ笑。でもね、真似できなかったから、やめたの笑。あれ意外に難しくありません?やったことあります?」
古「はい、あんまりうまくできない笑。私ポットの方が下手くそなんですよね。」
伊「そう意外とね、難しいんだよねぇ。Y○uTubeかなんかにお客さんの撮ったLさんの抽出の動画が上がっていて何度も見てやったんだけど、ちょっとうまくいかなくて、やっぱり自分には自分の抽出があるんだなと思って、やっています今。」
古「ふむふむ。」
伊「まぁ、一応Lと同じ直系のネル(生地)だけど、形が少し深いのかもしれない。一応Lのネルを買ってきてバラして型とってやったんだけど、縫い付けの位置とかで変わっちゃうし、自分の好みとかでも変わってくるんだよね。最初はLポットも買ってきてやってたんだけど、ちょっと違うな、って思って今はYのポットだしね。」
古「でもたぶん、もっと粗挽きにしたら自然とそう(Lさんの淹れ方に)なるんじゃないですか?」
伊「ああ、そうでしょうね。それはそうでしょうねぇ笑。I社長の力を全部引き出したいですしね笑。」
古「いや、でも全然細かい挽き目でもいけますね。」
伊「ウンウン、でも初見でああいう風に古屋くんが淹れられてるのが笑、やっぱり何杯も珈琲淹れてる人なんだなって感じたっすね。」
古「むしろリードミルの方が簡単になるんじゃないかと。出る味が美味しい美味しくないは焙煎として、淹れる行為自体は簡単になるんじゃないかなと。」
伊「まぁ、濃いのは出るよね笑。濃いのはね笑。」
古「ほら、I社長はリードミル使ってドリップする時なんてけっこうサーって湯入れて、」
伊「そうそう普通にね笑、『こんなんずらぁ(方言。「こんなもんだよ」みたいな意味)』って言って笑。」
古「ねえ笑。こんなんで美味しいよって言って。」
伊「笑。そうそう笑。」

間。

古「さて!何か語り残したことがあれば笑。」
伊「語り残したこと笑。いや、会話しててやっぱりホログラフィー原理のとことか、ピークだったかなと思ってるし、焙煎そういう感じなんだぁっていうのも良いと思ってるし、甘味のことに関しては、より、思想が一歩進んでるんだなぁって思った。」
古「・・・なんか、久々に伊藤さんとこんなガッツリ話したんで、伊藤さんの話を聞きにきたのにテンションが上がって自分のことばっか話しちゃったような気が笑。」
伊「そう?笑。フィフティフィフティで話したんじゃない?笑。」
古「ですかねぇ?出しゃばり過ぎたかなぁと思って・・・」
伊「笑。全然大丈夫だよ笑。今ねぇ珈琲もいろんな価値観の時代だから、色々な意見が聞けて良いんじゃないかと思います笑。面白いよね、ホントにみんな笑。」
古「同じもの使ってそれぞれがそれぞれに遊んでるというか。」
伊「うん。それに今手廻しの人って増えていると思うんですよ。でもそれでも全体として少数なのにその中でも色々あるんだなっていうのが笑、ねえ?こうやって話てて笑。すごい面白かったですね笑。」
古「みんなそれぞれですよね。珈琲の味も並べて飲んだらそれぞれの違いが分かりやすいんですけどね。同じ道具や生豆使っていてもこんなに味変わるのかって。」
伊「ちょうどこの間お客さんが持ってきた豆、噂の北鎌倉の綴さんとうずさんの豆、ちょうど同じブラジル同士だったんですよ笑。」
古「笑。」
伊「でここで淹れてみて、おっと、やっぱりこれは全然違うぞって笑。」
古「笑。綴さんもいつか(取材を)やろうかと思っていますね。」
伊「綴さんも行きたいなぁと思ってるんだけど。」
古「あ、まだ行かれてないですか?」
伊「まだ行ってないんですよ。豆だけは触れ合うことが二回くらいあったんですけど笑。」
古「あー、じゃあ是非是非。なんかネットの地図見ても道が表示されてなくて行くのが難しいみたいですよ。」
伊「やばそうですねぇ笑。」
古「でもInst○gramに分かりやすいように行き方書いてるって言ってましたね。」
伊「あ、じゃあそれで。彼は、何を飲むのがいいんですかね笑?」
古「分かんない笑。でもその時その時で焼く種類色々変えてるんじゃないかな。」
伊「ブレンド重視とかストレート重視かとかありますか?ボクなんかは割とストレート重視なんだけど笑。」
古「あー、私も今ストレートだなぁ。」
伊「綴さんはどっちの傾向強いんすか?」
古「分ーかんない笑。」
伊「笑。ボクブレンドは正直まだ全然詰めれてないんですよ。ぶっちゃけるとブレンドは今プレミックス。」(プレミックス、生豆の状態で混ぜて焙煎。)
古「いやー、ブレンドはですねぇ、難しいですよねー。」
伊「ほら、例の何年か前に二人でイベントやろうとして合わせてった時に、次第に二人の珈琲の均衡が取れていって、一つの別の珈琲の次元がそこにふわっと現れたから、ああ、そうかなるほどこういうブレンドだったらさらにまた違う感じなんだってあの時ボクは感じました。」
(やろうとしていたイベントはお互い珈琲豆を何種類か持ち寄ってブレンドして珈琲を作り、お互いの店に行って淹れようみたいなものです。)
古「あれ面白かったですよね。一つの珈琲に近づいて行く感じが。」
伊「うん面白かったですね、非常に。」
古「まぁー・・・、ブレンドこそうまく言えないっすね。ホントに難しい。」
伊「笑。まぁね、そういう分かんないところがあるから面白いよね笑。」

古「うん。はい!今日は本当にありがとうございます。こんな遅くまで。」
伊「笑。いえいえ笑。楽しかったですよ笑。今度また野点珈琲会やりましょう笑。」

(伊藤さん、ずっとやっているBlogも面白いのでぜひ。)
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