呪いの臭み #毎週ショートショートnote
春、彼女の好きな苺タルトを買って帰る。
口に入れるとバニラの香りが広がり、クリームの滑らかな甘さが舌に触れる。苺の僅かな酸味は中和され、最後にタルト生地が甘さの追討ちをかける。僕に美味しさは理解できないが、目を輝かせて食べる彼女の顔が、心の底から好きだった。
夏、彼女の好きなメロンケーキを買う。
よく熟れた果肉は甘く、それだけで口の中が鬱陶しい。下のケーキをあげると言えば、彼女は嬉しそうに平らげていた。
秋、彼女の好きな栗のモンブランを買う。
優しい甘みは素材の邪魔をせず