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毎週ショートショートnote参加作

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たらはかにさん主催「毎週ショートショートnote」へ参加した記事です。 企画概要→ https://note.com/tarahakani/n/n1ac47fd88166
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記事一覧

お返し断捨離 #毎週ショートショートnote

「お返しはいりません」 隣人に旅行のお土産を渡した。隣人はとても喜んでくれた。私の顔は自…

きたこ磋秧
1か月前
26

行列のできるリモコン #毎週ショートショートnote

高校生になり裕貴は落胆していた。 中学時代、それなりに女友達はいたし、部活では黄色い声援…

きたこ磋秧
2か月前
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ドローンの課長 #毎週ショートショートnote

体には運勢がある。 「あなたの体、ちょっと微妙ねえ」 社会人1年目、仕事で失敗ばかりの散…

きたこ磋秧
3か月前
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君の音 #毎週ショートショートnote

目を閉じ耳を澄ます。 教室の窓から入った風が私の頬を撫でた。 トロンボーンの軽快な音が聞こ…

きたこ磋秧
3か月前
21

競り落ちる雪 (会員制の粉雪)#毎週ショートショートnote

地球に季節というものがなくなり、もう何百年と経つらしい。僕が生まれた時から、この世界には…

きたこ磋秧
4か月前
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夜光おみくじ #毎週ショートショートnote

サービスエリアへ入るとホッとした。 夜の暗い高速道路は心細く、休憩中の車が仲間のように思…

きたこ磋秧
4か月前
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白骨化スマホ #毎週ショートショートnote

地球・ニッポン。 数年ぶりに大規模な発掘調査が行われた。 「寒い。こんな所に住んでたのか?地球人は頭がおかしいぜ」 「いいや、むしろ感謝だ。未来の宇宙人のため、寒さに耐えた健気な生物さ」 地球の中でも、とりわけニッポンの遺物は価値が高い。 男達は、荒廃した家が立ち並ぶ丘で地面を掘り続けた。 「ははっ。お前、白骨化スマホ見つけただけか」 人類が使っていた情報端末デバイス、通称スマホ。中のデータは地球を紐解く重要な資料であり、発掘の報酬は高額だ。 ただし大多数は、不正に情

助手席の異世界転生 #毎週ショートショートnote

雨の音だ。 ザアザアと激しく降り、車内に流れるラジオが聞こえない。 男は急いでいた。寝坊を…

きたこ磋秧
5か月前
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着の身着のままゲーム機 #毎週ショートショートnote

金曜の夜。 残業から解放されようやく帰宅した。 リビングは真っ暗だ。 いつものこと。 同棲中…

きたこ磋秧
5か月前
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強すぎる数え歌 #毎週ショートショートnote

今日は、美香ちゃんの家でゲーム! おともには、お菓子とジュースを用意して。 とーっても楽し…

きたこ磋秧
5か月前
9

ごはん杖 #毎週ショートショートnote

常連のお爺さんが久しぶりにやって来た。 高齢のお客さんがパッタリと来なくなるのは、たまー…

きたこ磋秧
6か月前
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数学ダージリン #毎週ショートショートnote

放課後、数学の先生へ質問に行く。 「これで分かった?」 「はい。ありがとうございます」 …

きたこ磋秧
6か月前
20

秋の空時計 #毎週ショートショートnote

夜空に浮かぶ月。 「はぁ……酒が旨い」 田舎暮らしは不満ばかりだ。でも、窓から見るこの夜…

きたこ磋秧
7か月前
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呪いの臭み #毎週ショートショートnote

春、彼女の好きな苺タルトを買って帰る。 口に入れるとバニラの香りが広がり、クリームの滑らかな甘さが舌に触れる。苺の僅かな酸味は中和され、最後にタルト生地が甘さの追討ちをかける。僕に美味しさは理解できないが、目を輝かせて食べる彼女の顔が、心の底から好きだった。 夏、彼女の好きなメロンケーキを買う。 よく熟れた果肉は甘く、それだけで口の中が鬱陶しい。下のケーキをあげると言えば、彼女は嬉しそうに平らげていた。 秋、彼女の好きな栗のモンブランを買う。 優しい甘みは素材の邪魔をせず