C of C
毎週、火・木・土曜を基本に、アップします
何のためにもなりませんが笑
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はじめまして、CofCです。今日は2023年12月31日。大晦日の朝です。 明日から新しい年になりますが、私が所属している、あるアーティストの方のファンコミュニティで、Xの「鍵アカコミュニティ」があり、毎年元旦には「今年の抱負」を投稿してます。 で「2024年は何にしようか?」と考えてたのですが、思い立ち、小説を書いてみようと思い、「思い立ったら吉日」と1分でnoteのアカウントを作りました(笑) 実は、そのコミュニティの中で、あるきっかけで「ラジオ小説」(スタエフ)を作
病室を出てスマホを見るとLINE通知があった。 翔からだった。最寄り駅で待ってるね、と。 「もうすぐで、翔に会える」 病院から駅に向かうバスで、睡魔に襲われた。 幸い終点だったので運転手が起こしてくれた。 催眠療法の影響のようだ。前回も、そうだが、 受けた日は、暫くフワフワした状態が続く。 電車に乗り換え、どうしようか迷ったのだが、 ほとんど空席なのに、立っているのも 違和感があると思い、車両の一番端の席に 座った。 寝過ごすといけないので、アラームをかけた。 そし
病院に着く頃には、だいぶフワフワした感覚は 晴れてきた。いつものように1階ロビーにある エレベーターで4階にあがろうとしたのだが、 このエレベーターが改修で使えない。 どうやって行けばいいのだろう?と思い、 横を通りかかった看護師に、声をかけた。 すると、たまたまだが、父とこの病院に 最初に来た時の看護師だった。 私は思わず言った。 裕奈「あ、私のこと、覚えてらっしゃいます? 前、日曜日にこちらに来て、エレベーターで、 3階と4階を押し間違えた看護師さんですよね」 看
皆での楽しい時間はあっという間に終わった。 片付けを終え、お風呂から出て部屋に戻ると、 どうしても、東京?山形?という 選択の答えを出そうとして思考の沼に陥る。 答えを出す決定打はない。 詰まるところ母が、より望むのは 「母」としての余生か、 それとも「妻」としての余生か、 という事に落ち着く。 この問いは自分以外の価値観の話だ。 とは言え本人に聞いても、 答えが出るわけではないとも思った。 その2つの立場は、きっと、 本人の中でも切り分けができないからだ。 結局は
子供は親の事を知っているようで知らない。 というより子供が知り得るのは、 父と母という側面だけで、 夫と妻という側面については、 ほとんど知らないと思った。 母親を酒に追い込んだのは自分ではないか? という思いは晴れたが新たな迷いができた。 私は山形に行くべきか? それとも、東京に残るべきか? ということだった。 父と母の真相を知った今、 家族の一員として山形に行って、 母に寄り添うべきではないか?と思う一方、 私が居ない方が父と母にとっては いいのではないか?という
夕食の間は山形の病院の話や家の話などが、 中心だった。食事が終わりお風呂に入った。 いつもならば、入浴後は自分の部屋に入るが、 今日はもう少し父と話がしたいと思ったので、 リビングのソファに座った。 父の一時帰国は来週の火曜日に決まったので、 それまではこの家に居る。 父がお風呂から出てきたので、私は言った。 裕奈「ビールでも飲む?お父さん、 もう少し、話さない?」父は言った。 猛「裕奈がそう言ってくれるなら もう1本だけ飲もうかな。」 父にビールとグラスを渡した
家に帰り、父に頼まれて項目で、 最後に残っていたものを片付けた。 その時、ソファに置いたスマホの 通知に気づいた。 一つは父の猛からで、 山形で病院や祖父母との調整をして、 3か月後、母を山形に転院させることが 決まったということだ。 ただ詳しいスケジュールは会社と相談して、 決まるということだ。 あわせて本当は土曜から一旦、 モロッコに戻る予定だったのだが、 現地の空港がストに入り、 もう暫く日本に居るということだ。 それもあって、土曜日に翔の一家を招いて、 モロ
私が尋ねると、クラスメイト達が笑いながら、 教えてくれた。 授業の中で証明されていない定理の話になり、 その中でフェルマーの最終定理の話に なったのだが、寺山先生が、翔に、 「何っていう定理か知っているか?」 と聞いたところ、翔のアホが ユウナーの最終定理と答えたらしい。 すると、寺山先生が 「あ、そういえば、今日、櫻井休みだな。 確かに会えないと寂しいよな、 あ、一応言っておく、非公式ではあるのだが、 うちの学校の先生たち、みんな お前たちのこと応援してるぞ、 非公式
ふと気づくとスマホのバイブが鳴っていた。 慌てて手に取ると画面には翔の名前が見えた。 すぐに通話ボタンを押した。 裕奈「もしもし」 翔「櫻井?大丈夫か、具合でも悪いか? LINEが既読にならないし、電話しても 出ないから」 それを聞いてスマホの通知欄を見てみると、 たくさんの通知が来てた。私は慌てて言った。 裕奈「ごめん!区役所行ったり、 色々バタバタしてて。 で、気づいたら寝てた。ごめんね」 それを聞き、翔は安心して、優しく返した。 翔「よかったよ、なんでもな
翌朝起きると、朝ご飯が出来ていた。 片付けをしながら、父は電話をしている。 電話を切った父が 「おはよう。冷蔵庫にあるもの適当に使った。 それから、学校に連絡しておいたから。 すまないが今日は手続きに必要な証明書を、 役所に取りにいってくれるか? できる範囲でいいよ。残りは父さんが 山形から帰ってからするから」 父の言葉に頷いた。 昨晩、父から、役所は平日しか行けないから、 一日だけ、学校を休み、証明書の手配を するよう頼まれていた。 父は、そう言っているものの、
時間を忘れ、会話を楽しんでいたら 1時間半も経っていた。 その時、翔の母親が言った。 母「櫻井さん、もしよかったら夕食、 我が家でご一緒にどうですか? 今からご自宅で準備されるのも 手間でしょうから」凛が、口を挟んだ。 凛「お母さん、折角の親子水入らずなんだし、 ご無理言ったらだめだよ。 それにお父さんも、私たち家族と一緒だと、 気を遣って疲れちゃうだろうし」 その言葉に、父は返した。 猛「いや、今日初めてお会いしたとは 思えないぐらいです。 自分で言うのもおかし
【第60話 対面】 バスに乗ってすぐ、父が私に、 これからの予定を説明してくれた。 猛「裕奈、お父さん、明日から山形に行く。 母さんが治療する病院を探して 可能なら手続きをする。一応、 お祖父ちゃん、お祖母ちゃんとの話し合いを 含めて、3日間は山形に行くつもりだ で、こちらに戻る日に大手町の 本社に寄って今後の仕事の話をしてくる。 裕奈は学校があるだろうから、 東京に居てくれ。 で、申し訳ないんだが、 今後の手続きのために準備して おいてほしいことがある。 ちょっと、
【第59話 再会】 翌朝目覚めると父からのLINE通知が来ていた。 夜中の2時に、空港近くのホテルに、 チェックインしたという内容だった。 そして明日11時に病院の最寄駅の改札で 待っているというものだった。 今日は父とともに母が入院する病院に行き、 先生と話をする日だ。 スマホを眺めていると横にいる凛が目覚め、 声をかけてきた。 凛「裕奈、おはよう。裕奈、眠れた?」 私は黙って頷くと、凛が「ぎゅー」と言って、 私を抱きしめた。 身支度を終え1階に降りると皆揃って
着替えを取りに行く事と、洗濯や掃除のため 一旦、家に戻った。 翔の母親が発案した企画の撮影は、 駅前で14時に待ち合わだ。 移動時間を含め、3時間以上あるので 余裕はある。 部屋を片付けていると、母が置いたままにした ウィスキーのボトルが目に入った。 その時に、独り言が口をついて出た。 「あんなに飲み過ぎるから体を壊すんだよ。 だいたいお酒飲んで、心と体を麻痺させても、 酔いが醒めたら、元に戻るだけなのに」 母への皮肉を込めた言葉だが、口に出したら、 頭の中で反芻
目覚めると、横にいる凛はまだ眠っていた。 私の手を繋いだまま寝てくれた。 凛の優しさに包まれて眠っていたことに 感謝した。 そんな気持ちで凛の寝顔を見つめていると、 流石に、視線に気づいたのではないだろうが、 凛が目を覚ました。 そして、凛は言った。 「裕奈ちゃんおはよう。眠れた?」 私が頷くと、凛は微笑んで言った。 凛「そういえば、翔より先に裕奈ちゃんと、 寝ちゃったな。後で自慢しよ」 私を元気づけようと、凛らしい心遣いだった。 凛の「さ、そろそろ、起きるか」の
その日は、やはりスカートの中の、 これまで、経験したことのない 無防備さが気になる。 満員電車に乗っている時は不安だったので、 翔とドアの間に身体を潜り込ませ、 翔に後ろに立っているようにお願いした。 自分の後ろ側を無防備にしているのが 不安だったからだ。 なのだが、後ろの翔の呼吸がかなり荒いので、 それはそれで逆効果だと思った。 駅で降りて、翔に向かって意地悪く言った。 裕奈「息づかいが荒かったよ。 ねえ、何を想像してたの?変態」 翔は慌てて弁明した。 翔「