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【短編小説】黄昏、そして、きらめき(2)

濱田真理は、戦後の復興期、オリンピックの頃に生まれ、令和の時代を生きる女性。これは、彼女の思い出を振り返りつつ、時代の変化を見ていく物語である。

 人は、昔はよかったとよく口にする。だが、濱田真理は、そうは思わない。今はいい。昔より、だいぶいい。と。年末、年始になると、真理は、家族とともに父親の実家に泊りがけででかけ、母親は、真理の祖母のおせち作りの手伝いをする。手伝いといいつつも、祖母の指示のもと、ほとんど全て真理の母親が作っているようなものであった。一方、父親はというと、のんびりとこたつに入って寝転んで祖父とふたり、テレビを見ている。子供心に不公平感を感じずにはいられない真理であった。「お父さんはいつも外で一生懸命働いているから。」と言われても、母もいつも一生懸命家の用事をしているではないか。
そして、母親自身も楽しくおせちを作っているのではなく、どうもしぶしぶ感はぬぐいされないようで、夜寝るときになると、夫である真理の父に、様々に愚痴を言っているのであった。

 そんな年末年始を繰り返してきた真理の母親は、どうやら自分のような思いをさせたくないと思うようで、真理の弟の奥さん、つまり真理の母のお嫁さんにあたる人には、とてもやさしい。その結果、、弟一家は、年末年始は実家には帰らず、自宅で祝い、年末年始をちょっとはずして、お年始の挨拶をする風習となった。

 そんな風習を人々はかなしいというのだろうか。絆がないというのであろうか。ちょっとさびしいけれども、これはこれで、お互いに気楽でよいのではないか。と真理は思うのであった。

 けれど、ふと真理は思った。自分の母は、損な世代だなあ。と。価値観の過渡期。厳しい部活で後輩が先輩になったときにやたら威張りだす人もいた時代とは違い、自分のような思いをさせたくないと部活の雰囲気を変え、やさしい先輩になるのとも似ている。


(つづく)

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