見出し画像

女子校で女性の先生が教える技術科の授業を支援〜日本女子大学附属中学校での実践〜

みなさん、こんにちは!みんなのコードで中学校の担当をしている千石です。私はみんなのコードで主に中学・技術科の教材やカリキュラム開発、そして先生方に向けての研修などを担当しています。

※この記事はみんなのコードコーポレートサイトからの転載です。


なぜ私学の女子校とコラボ?

みんなのコードは2023年9月に日本女子大附属中学校とカリキュラム開発に関する連携協定を締結しました。

みんなのコードは、公教育におけるテクノロジー/情報教育を推進するNPOではなかったのか?と、意外に思われるかもしれません。

連携させていただくに至った理由は、私自身、女子学生の技術・情報教育について以前から課題を感じていたからです。女子学生は「テクノロジーやコンピュータに苦手意識を持っている」というステレオタイプが存在しているのではないかと思います。

私自身、教員をやっていた時から、以下の疑問を持っていました。
その原因はどこにあるのか

原因が教材にあるのか
指導者にあるのか
また生徒の性別の違いによって生じているのか

様々な先行研究や調査はありますが、ジェンダーギャップを乗り越えていくための取り組みに、ぜひ何か貢献したいと思っていました。

これまで女子校では、その歴史的背景から家庭科が重視されてきた経緯があり、技術科の内容について、なかなか専門的な指導が行われて来なかった状況がありました。日本女子大学附属中学校でも同様の問題を抱えており、状況を改善したいという思いを持っていたようです。みんなのコードとの連携協定について取材に応えた、國澤教頭の言葉が大変印象に残っています。

大学の進学先や就職先を選ぶときは、持っている選択肢から絞っていくことになる。教育現場として、特に中学生くらいの段階で選択肢や興味・関心をいかに広げていくかが重要だ。
プログラミング現場には、他の分野よりも教育現場から続くジェンダーギャップがあると考えている。本校のカリキュラムでは伝統的に被服・調理がメインになっているのを強みとして見ていたが、ここからのジェンダーギャップが社会に続いていると気が付いた。

日経クロステック「日本女子大付属中とみんなのコードが連携、中学段階からITのジェンダーギャップ解消へ」(2023.10.16)

日本女子大学附属中学校の「選択肢や興味・関心を広げる技術・情報教育を行いたい」という思いと、みんなのコードの「すべての子どもに届く技術・情報教育をつくりたい」という思いが合致し、連携して取り組むことになったのです。

技術を教える女性の先生はどれくらいいるのか?

ところで、技術を教える女性の先生はどのくらいいるのでしょうか。
下の図は中学校の先生の各教科ごとの男女の構成比率を示しています。この図では技術と家庭は技術・家庭科としてまとめて集計されているので、教科として男女のバランスは良く見えます。しかし、その内情は女性のほとんどが家庭分野、男性のほとんどが技術分野を担当しており、このグラフでは先生の性差が見えにくくなっています。

令和4年学校教員統計調査より

一方、みんなのコードが2022年に全日本中学校技術・家庭科研究会と協力して行った全国調査では1,539件の回答に対し、女性の先生からの回答は101件、約6.6%でした。全国には約1万校の中学校があるので、単純に計算すると、660人くらいの女性の先生が教鞭を執っていることになります。

上の図に戻りまして、他教科の男女比と比較してみます。男性率の高そうな数学で女性8.0%に対して男性18.5%と2倍強、理科も同様で女性6.6%に対して男性14.4%とこちらも約2倍、おおよその男女比が2:1です。これらの科目と比較しても、技術科の女性の割合がいかに偏っているかがお分かりいただけると思います。

女子生徒のロールモデルとしての先生

今回の取り組みでは、日本女子大附属中学校で、普段、家庭分野を主に指導されている女性の先生を支援し、授業を行ってもらいました。これは生徒にとって身近な女性の先生から指導を受けることによって、技術や情報、AIといった内容に対して親しみを感じたり、学習に対するハードルが下がることを意図しました。

平成元年の学習指導要領から、技術・家庭科は男女同一の内容を学習するようになりました。しかし、30年以上経過した今でも、技術は「男性の先生」が教えるものとして認識されており、免許保有者も圧倒的に男性が多いです。女子生徒は技術や情報が嫌いなわけではなく、ロールモデルとなる大人が身近にいないから技術や情報から離れていくのではないでしょうか。そんな状況を少しでも改善し、生徒たちが学習したいと思える環境に近づけるために、伴走支援を行いました。 

日本女子大附属中学校での授業について

2023年度、みんなのコードは、中学校1年生から3年生まで、それぞれ6時間から13時間の授業支援を行いました。
具体的には以下のとおりです。

  • 1年生は2学期に6時間、3学期に6時間の合計12時間

  • 2年生は3学期に6時間、 

  • 3年生は2学期に6時間

1年生の2学期にはD(1)情報の技術を中心に、コンピュータに関する基礎的な内容、デジタル/アナログ変換や情報通信について学習しました。授業の内容は用語の暗記などにならないよう、プログラミング作業を交えながら実際に体験しました。そして体験を通して、理解する授業内容を心がけました。 

2年生の授業ではScratchとAkaDakoを用いてチャットを作りました。テキストの送受信だけでなく、メッセージを受信した際に着信音をつけたり、不適切な発言を拒否するフィルタについてもプログラミングを通して学習しました。

3年生では、画像認識AIや生成AIの学習を行いました。この内容は教科書に記載されていない内容ですが、これから必要になるであろう内容を先取りする形で学習しました。画像認識AI(Teachable Machine)を用いてジャンケンゲームを作ったり、みんなのコードの提供するみんなで生成AIコースでプロンプトのやり取りについて学習しました。

最後に

今回の記事では、日本女子大学附属中学校との連携協定の経緯や、それぞれの学年で行った情報分野の授業の概要を中心にお伝えしました。今後の記事で、各学年の実践について、ご紹介したいと思います。まず次回は、3年生で実践した画像認識AIや生成AIに関する授業について詳しく報告しますので、お楽しみに!

そして、2024度からはキンドリルジャパン株式会社さまの助成により、技術・家庭科技術分野のカリキュラムを開発・実施します。キンドリルジャパンの社員さまがボランティアとして授業に参加する形で支援もしていきます。その様子も今後ご紹介できればと思います。

最後に、みんなのコードは、今年3月に「D&I推進レポート」を公開しています。テクノロジー分野のジェンダーギャップに関する課題感の認識、日本女子大附属中学校との取り組みを含む学校教育・社会教育双方でのアクション事例などを掲載していますので、こちらもご覧ください!


(関連記事)
・日本女子大付属中とみんなのコードが連携、中学段階からITのジェンダーギャップ解消へ
 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08493/
・旅行計画やしりとり 生成AIの基礎を学ぶ授業に中3が挑戦
 https://www.kyobun.co.jp/article/2023112904
・キンドリルとNPOみんなのコード、テクノロジー分野のジェンダーギャップ解消を目指し連携
 https://code.or.jp/news/20240717/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?