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【テクノロジー分野のジェンダーキャップ】女子参加率を上げたい!注力した3つのこだわり

みなさん、こんにちは。みんなのコードCOOの杉之原と申します。みんなのコードでは業務執行責任を担っています。私はこれまで、ITベンチャー企業で組織の成長フェーズを経験してきました。個人的なライフミッションとして、インクルーシブな情報教育をつくりたいという思いで、みんなのコードで働いています。

みんなのコードは、10代の子供たちが無料で最先端のテクノロジーに触れられる子どもの居場所を全国で3箇所開設しています。石川県加賀市にはその第一号拠点である「コンピュータクラブハウス加賀」があります。

加賀市は消滅可能性都市とされている地域で、”生き残り”をかけてテクノロジー教育が推進されています。プログラミングが必修化される3年前から全国に先駆けて取り組みを開始。現在も、学校内におけるデジタルデバイスの利活用度が非常に高い自治体です。

その加賀市で、2023年1月にみんなのコードと加賀市教育委員会の共催で実施された小中高校生向けのテクノロジーイベント「TEEN SUMMIT KAGA」は、加賀市史上最大クラスの子ども向けイベントとなりました。

▲イベントの様子

今日は、本イベントの企画にあたり、プロジェクトマネージャーを務めたコンピュータクラブハウス加賀の古岡と、ダイバーシティの観点で工夫したことをまとめたいと思います。

女の子も来たいと思えるイベントにしたい

みんなのコードが2022年6月に発表した「日本国内の大学における情報系学部・学科の実態調査」では、情報系以外の理学部、工学部における女子比率は2011年から21年にかけて微増しているのに対して、情報系は微減していることが認められました。

同調査では、さらに、コンピュータクラブハウス加賀がある石川県は、情報系学部・学科入学者数に占める女子学生の割合が最も低いエリアであることが分かりました。(調査対象は12都道府県)

OECDの学習到達度調査2018年の結果によると、ICT関連職に興味のある15歳女子の割合はOECD最下位です。日本では高校1年生に文理選択があるため、それより前に機会を提供する必要があると考えています。

こういった背景から、小学校から高校生までを対象とした「TEEN SUMMIT KAGA」は、とりわけ女の子が参加したいと思えるイベントにしたいという強い思いで企画設計を行いました

1. キービジュアルのこだわり

このような社会背景や、日々、コンピュータークラブハウス加賀を見ている古岡の肌感から、「何もしなくても男の子は興味を持って来てくれるはずだ」という仮説を立て、ターゲットを女の子に定めました。もちろん、性別関係なく参加してほしいイベントではありましたが、ターゲットを女の子に決めたことで、思い切ってこのキービジュアルを選択することができました。

▲イベントサイトのキービジュアル

さらに今回は、小学校から高校生までを対象としたイベントでしたが、特に高校生に伝わるように言葉を選びました。

なぜ高校生を対象にして言葉を選んだか。

小学生を対象にしてビジュアルや言葉を選ぶと、中高生は来なくなることが予想されます。一方、小中学生は年上の人に憧れる。そのため、あえて高校生っぽいキービジュアル、ハッシュタグにしました。

余談ですが、講演会のゲスト2名が男性登壇者になったことで、イベント紹介ページの登場人物が一時全員男性になり、そもそもかなりの危機感がありました

2. メッセージングのこだわり

キーメッセージにもこだわりました。背景として、IT、コンピュータ、テクノロジーという単語ひとつで「私には関係がない」と思われてしまうことを避けたいと考えたからです。

▲イベントのキーメッセージ

「難しいと思っていたけど、実際にテクノロジーに触ってみたら、意外と出来るかもしれない」というメッセージが伝わったら嬉しいと思いました。

そんな古岡の思いが、キーメッセージ、キービジュアルに添えた「ITって難しいことだと、思ってた。」というメッセージ、「#みんながチャレンジャーになれる日」というハッシュタグにつながりました。

そして、最後の最後にこだわったのは以下の一節です。

“女の子も男の子も、大人も。”

普通に書くと『男の子も女の子も』となりますが、『女の子も男の子も』に修正しました。小さな粒感のように思えるかもしれませんが、普段は違和感がない表現も、目線が少し変わるだけでこだわりが生まれました

3. コンテンツとネーミングのこだわり

TEEN SUMMIT KAGAの開催にあたっては、11企業様にご協力をいただきました。女の子が参加しやすい企画をしたいと思い、非営利活動法人Waffleさんに女の子およびジェンダーマイノリティ向けの企画「ガールズデー!オリジナルホームページをつくろう!」、The360合同会社さんにはARを活用したインスタ映え企画を提供いただきました。また、公益財団法人あくるめさんには、かがじょ基金に関する展示をいただきました。

▲Waffleさんの企画

各プログラムのネーミングについても、「このままだと、ネーミングだけで女の子ドン引きしちゃうよね」という議論があり、こだわりました。

例えば、メンバーズさんに提供いただいたイベント「アイディアソン!加賀をテクノロジーでもっと"好(ハオ)"に!」のネーミングは、古岡が、コンピュータクラブハウス加賀を利用する女の子にも意見をもらって仕上げたものです。

▲メンバーズさんの企画

結果、プログラム参加の女子率が38.7%

TEEN SUMMIT KAGAは、どなたでも参加いただけるイベントでした。総来場者数の分析が難しいため、事前申込が必須であった4企画に絞って女子率を算出しました。

<集計対象>
・「チームで会社経営!?ビジネスシミュレーションゲーム!」(SAPジャパン株式会社)
・ 「夢をもって、好きなことを続けよう!」(マヂカルラブリー野田クリスタルさん講演会)
・「ガールズデー!オリジナルホームページをつくろう!」(特定非営利活動法人Waffle)
・「アイディアソン!加賀をテクノロジーでもっと”好”に!」(株式会社メンバーズ)

算出してみると、上記プログラムに参加してくれた女子の比率は38.7%という結果でした。(「ガールズデー!オリジナルホームページをつくろう!」を除いても35%)

比較対象として、コンピュータクラブハウス加賀の利用者に占める女子の割合は以下のとおりです。

このことから、少なくとも、コンピュータクラブハウス加賀の利用者比率を上回る結果になったことが分かります。

ちなみに、コンピュータクラブハウス加賀は、長らく利用者に占める女子比率が10%以下の状態が続いており、2022年から女の子限定のガールズデーを月1回開催するなど、出来ることをやってきた拠点です。そのため、TEEN SUMMIT KAGAの開催にあたっても、企画段階から議論を重ねていました。

継続的に状況を見守っていく必要がありますが、4月はさらに多くの女の子に来館いただくことができました。

今回は、子供向けテクノロジー関連イベントを開催するにあたってジェンダーギャップの観点で工夫したことをまとめましたが、みんなのコードでは、「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」というビジョンの実現に向けて、さまざまなギャップと向き合っていきたいと思います。


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