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劇場版『銀河鉄道999』の脚本紹介

シリーズで一番最初の劇場版アニメ『銀河鉄道999』を久し振りに観ましたが、やはり良い映画でした。
僕が初めて観たのは、小学生の頃だったと思いますが、それ以来定期的に見直しても、良い印象は変わりありません。

とはいえ、子供の頃と大人の自分では、『銀河鉄道999』について大きく変わったことがありまして、大人になってから脚本を担当した石森史郎先生から指導を受けるようになったからです。
石森先生も高齢なので、現在は「石森塾」は稼働しておりませんが、今でも年に何回かお会いしてお話しを伺ったりしています。

さて、『銀河鉄道999』に話しを戻しますと、以前石森先生から脚本のコピーを頂いたことがあります。
目を通すと、イマジネーションを掻き立てるト書きや、洒落た台詞のオンパレードで、これぞ石森節!と膝を叩きました。

『銀河鉄道999』の脚本は後日、先生のシナリオ集『再会―パゴダに虹の燃える日』にも収録されることになりましたが、頂いたコピーは今でも宝物です。

アニメのスタッフも目を引きますね。

スタッフ

企画・原作・構成:松本零士
製作総指揮:今田智憲
製作担当:横井三郎
企画:有賀 健・高見義雄
脚本:石森史郎
監修:市川 崑
監督:りんたろう
作画監督:小松原一男
美術:椋尾 篁・窪田忠雄
作画監督補佐:角田紘一
美術補佐:山川 昇
音楽:青木 望

どの方もレジェンド級の人ばかりですが、監修に市川崑さんが担当されているのが、意外性あるかと思います。
こういったポジションだとSF考証が出来る方になるはずなので、もしかするとSFも詳しいのかな……?
と思いましたが、脚本や絵コンテなどをチェックするアドバイザーの立場だったようですね。

作品評価

評価も極めて高いです。
興収も現代のような莫大な金額ではないですが、「1979年度の邦画の第1位」であり、その年を代表する作品ですね。

結果はそれを上回る16億5000万円。『宇宙戦艦ヤマト』の劇場シリーズは大ヒットしても儲け(歩合)をごっぽりオフィス・アカデミーに持っていかれるが、『銀河鉄道999』は東映の製作・配給・興行のため旨みが大きく、東映にとっても正に孝行息子であった。1979年度の邦画の第1位で、これはアニメ映画史上初の快挙だった。さらに1980年の第3回日本アカデミー賞特別賞(話題賞)を受賞。映画雑誌『キネマ旬報』のキネマ旬報ベストテンでは17位と、映画としてアニメ映画が評価されなかった時代に異例の評価を得る。同じくキネマ旬報の読者選出ベストテンでは5位、ぴあのぴあテンでは8位を獲得している。映画パンフレットも105万部を売り上げ、松本零士ブームの頂点を成した。1970年代後半から1980年代前半に巻き起こったアニメブームを代表する作品の一つである。
(wikipediaより)

脚本

さて、脚本です。
石森先生の脚本は、撮影に使う台本として機能のみを追求するものではなく、関わるスタッフのイマジネーションを刺激する……言い方を変えれば、時にはあざとさも感じさせるほどドラマを徹底して描いてあります
と言っても、無駄な描写は一切なく、あくまでもビジュアルを意識させる脚本です。

『銀河鉄道999』でハーロックが初めて登場するシーンがあるのですが、以下の通りです。

○ トチローの家の裏庭
  こうこうたる月の光。
  トチローの墓標の前に佇む男の影。
  キャプテンハットに金モールのマント。
  帽子の微章はドクロマーク。
  トリさんはその人影の肩に止ってボロボロ涙を流して泣いている。
  ──キャプテン・ハーロックである。

ビジュアルだけではなく、その場に流れている音や空気感までも伝わってくるようです。

また映画の最終盤で、クレアが鉄郎のために女王プロメシュームを道連れにして粉々になってしまった後のシーンも、叙情性があって印象的です。

○ 客車の中
  デッキからチリ取りにかき集めたガラスの破片を車外へ棄てている。
  窓の外を流星のようにその破片が後方へ飛び散ってゆく。
メーテル「貴方を守って……砕け散ったクレアの体……」
  鉄郎、窓枠に小さな破片が一個残っているのをみつける。掌の上に乗せる。
  涙の形をしている。
鉄郎「こんな哀しそうな涙は見たことがない」
メーテル「もしかしたら、それはクレアの心かも……」
鉄郎「……クレアのこころ……」
  キラリ、涙の形をした破片が鉄郎の掌の中で光る。

単語の並び等含め、これぞ映像のト書きという感じもしますし、鉄郎とメーテルのやり取りからも心情が伝わってきます。

また石森先生の脚本は徹頭徹尾、「映画」として意識されていて、松竹映画の傑作『約束』なども彷彿とさせます。
メーテルと鉄郎は最後別々の道を行きますが、『約束』に登場する運命的な二人も切ない別れがあります。

なお『約束』の脚本については、『シナリオ作家石森史郎メロドラマを書く』にも収録されています。

改めて観た『銀河鉄道999』

今回、noteの記事を書くにあたって、映像と脚本を照らし合わせながら観たのですが、シナリオの方が若干ボリュームがありますね。
そのまま撮ると2時間半ぐらいの映画になりそうなので、まあシナリオそのままとはいかないのは、仕方のないところだと思います😅

また、今の視点で鑑賞すると、演出や画面作りは流石に時代を感じさせるますが、レジェンドクラスのクリエイターが最も脂の乗り切っている時代に手掛けられたので、アニメーション作品として完成度がめちゃ高いです。

キャラクターの画が動いているだけで、アニメーションとしての心地良さも感じさせてくれます。

やっぱりこの一番最初の『銀河鉄道999』は最高ですね。
『銀河鉄道999』に内包するテーマも、この映画内で見事に描ききっています。
ですので、これに続く『銀河鉄道999』シリーズは……おっと、誰か来たようだ……。


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