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つながり、想い合うことからはじまる関係人口(インタビュー前編)

こんにちは!
NAGANO生き方共創コミュニティ、こくりな(Co-Creation Nagano)です。

今回訪れたのは、長野県南部に位置する飯田市。

南アルプス、中央アルプスに囲まれ、南北に天竜川の流れる自然豊かなまち。
冠雪した山脈が息をのむ美しさでした…!

飯田市は文化も多様で興味深いものばかり。
東山道、三州街道、遠州街道などの陸運、天竜川の水運に支えられて発展し、他の地域では衰退してしまった神楽や人形浄瑠璃の残る稀有な地域でもあります。

そんな「変わらない」自然や歴史に富んだ飯田市ですが、
時代に合わせて「変わる」ことも大事。

変化の渦中にあり、最近盛り上がってきていると噂の飯田市。
そこで人と人を「結ぶ」役目を担うキーパーソンにお会いしてきました。

飯田市について詳しくは、こちらの記事もご覧ください↓↓

湯澤英俊さん
長野県飯田市役所 結いターン移住定住推進室係長
長野県伊那市出身。転勤族の家庭で幼少期は各地を転々として育つ。大学卒業後、静岡の模型メーカーを経て飯田市役所へ入庁。企業誘致や大学連携、リニア推進、シティプロモーション等、企画関連の業務に従事し、現職。人とのつながりによる「結い」を大切にしながら、持続的で柔軟な暮らし方や働き方ができる地域づくりに挑戦し続けている。趣味は天竜川沿いのランニング。

自分の言葉で語れる喜び

ー 最初に、湯澤さんが飯田市で働くきっかけと、今どのようなことをされているのか教えていただけますか?

実は飯田市で働く前に、静岡で別の仕事をしていたんですよね。

前の仕事は模型関連の会社でエンタメ系のイベントをやってました。
今週は仙台、来週は長野、みたいに全国転々としながらイベントをするんです。
だいたい土曜日に行って設営するので、土曜日の夜は地元の販売店さんが一緒に飲んでくれるんですよね。
そうすると、販売店の人たちが地元のものを自分たちがつくったわけじゃないのに、自分でつくったかのように話をしてくれる。
そういう人たちが羨ましくって。

というのも、僕はもともと転勤族の家庭で育ったんですよね。
だから地区のお祭りに参加するようなこともなくて。
でも、ある時友達に誘われて火祭りに参加して、それがすごく楽しかった記憶があって。
その頃から地域の盛り上げ側にいる人たちを見て楽しそうだな、羨ましいな、とずっと思ってたんです。

その記憶と、自分のことのように地域の人たちのつくったものの話をしてくれる販売店の人たちが重なって。
当時の仕事も楽しかったんだけど、地域に根ざして創り出す側になりたいなと思ったんです。
それで、創り出す側って思うと地方公務員しか思いつかなかった。
転勤があると地域に根ざすことができないから、引越しがないのがポイント。
いろいろな地域を受けたりしてたけど、結果的に地元のそばっていうのもあって飯田に来た。
それがここにくるきっかけでした。

そうやってモチベーション高くして戻ってきたけど、最初の配属は税務で。そこでの4年間はこんなことをしたいわけじゃないんだけどな…と思いながら悶々としながら過ごしてました。

そのあと企業誘致の部署に異動になって、飯田のことをいろいろ知って覚えるようになって、自分の育った場所ってわけじゃないのに自分のことのように喋れてる喜びがあった。
それからは都市間連携、大学との連携とか、リニア、プロモーションとか…ここ9年くらいはずっと企画系のプロモーションとか関係人口とかに関わってます。

そうして移住の仕事をすることになって、飯田の中や外との繋がりが生まれるようになって。
この財産とも言える繋がりをもっと広げていきたいという想いが今の仕事になってます。
今では新しいことをやろうと思うと、誰に声をかけたらいいかすぐ頭に浮かぶし、来週やろう、と急に決まったことでも協力してくれる人たちがいたり、飯田の人たちの人柄も相まってとってもやりやすいです。

フラットな関係づくりの、2つの方法

ー 今の仕事は繋がりや関係性をつくっていくことが中心にあると思いますが、関係性づくりで大事にしていることはありますか?

フラット感ですかね。

ゆくゆく仕事にしていきたいとは思っているけど、最初は仕事じゃない付き合いにしたくて。
仕事だと肩書がついて回るので受注者と発注者、力の関係性が生まれるじゃないですか。
そうすると間違いなくフラットじゃなくなる。
まずは友達になろうよ、と最初は力の傾斜がない関係性をいかにつくっていくかってことが大事なので。

お互いに「どこのだれ」となってしまうと力関係が生まれちゃうんで、大事なのは飯田にとってのあなたは何、っていうようにこちら側が名付けていくみたいな。
よくあるのが、「飯田さん」って呼び間違えられるんですよね。
それだけ僕に飯田のイメージが強いんだと思うけど、それでもいいじゃないって。
お互いに名づけ合うことがきっかけづくりっていうか、自分の中に相手が名づけたっていう関係性が生まれる、遊びのようなもの。
フラットにしていくためのアプローチはいろいろあると思うけど一つは肩書をつけない、名づけ合うってことかな。

飯田名物、焼肉。これもフラットな関係づくりの秘訣かもしれません。

ー 確かに飯田に来ると何をしているのか、とか肩書ではなく私そのままを見てくれているような感覚があります。
湯澤さんが案内してくださるからこそ飯田がおもしろく感じる気がしていて、それはわたしたちの興味に合わせて紹介する場所が変わるからだと思うんですよね。

そうですね、フラットな関係をつくるときに、2つのアプローチがあると思っていて。

ひとつは手探り型。
初めて会った人とか、すでにアンテナが立っている人とかに有効な方法。

あの人を紹介したらどんな反応するかな、あの人と話したらなにか生まれそうだな、とか、相手をずっと見ながらいろいろ想像してあたりをつけて繋ぐっていう。
このアプローチが有効な背景には飯田の特徴があって、飯田は歴史とか文化があるので、それを知ってもらうためにいろんなものを見たりとか、食べたりとかして、その反応を見ながら提示していく。基本的に喜んでもらいたいので。

もうひとつは、よくわからないものを一緒に見るやり方。

これに気付いたのは南信州次世代会議っていう2014年に立ち上げた団体がきっかけなんだけど、このメンバーは飲食、酒屋、主婦とか、多業種の人たちが30人ぐらい集まってて。
団体の目的は異業種の交流だけではなくて、プロジェクト化すること。
やりたいことをメンバーに共有したときに、それをやりたい人が他にいなければ1人でやってね、でも2名以上集まったらプロジェクトにしようってことだけを決めてた。

それで、1人がやりたいって言い出したのがコワーキングスペースで。
その頃、飯田ではコワーキングスペースってなかったからその言葉自体を誰も知らなくて。
でもよくわかんないのに、やりたいってみんな手を挙げたんですよ。
よくわからないことに対してこうやったらいいんじゃないかとか、やったことがない人たちみんなが妄想するんですよ。
その時に見えた関係性が超フラットだったんです。

みんなでなにかやる時に、よくわかんないものを投じるとか、問題の中核にアプローチするんじゃなくて思いっきり外したところでわけわかんないことをやるって大事なんだなって思って。

1人の発案から誕生した、コワーキングスペース

ごちゃごちゃしてて、楕円でいい

ー 湯澤さんの関係づくりって、短期的には繋がるかどうかわからなくてもけっこう手間暇かけられている印象なのですが、関係づくりに対してどんなモチベーションがあるのですか?

仕事とプライベートが完全に一緒になってるんですよね。
なので、モチベーションがどこに向かっているかというと、生きていくため、かなと。
みんなが生きていくため。
これってみんなにとって必然だと思うんです。

コロナでみんなの価値観の変化が顕在化して、繋がりと分断を意識することが増えたと思うんですけど、あるとき水引の例を使ってその話をしたんですよね。
飯田って水引のシェア7割なので。
水引って、人と人を結ぶ、っていう意味合いがあるんです。
でもそれを聞いたフランスの人に、水引は結界なのかって言われたんです。
契約を結ぶことで結界を張って、その相手との繋がりは大事にするけど内と外を切り離すということですか、って。
そういうことじゃないです、って言ったんですけど、一方で腑に落ちたんです。

繋がりと切り離すことは一緒に存在しているんですよね。
そのことを理解しないと、繋がりを意識するだけでは理想的な地域とか社会が描けるとは思ってなくて。
だから繋がりと分断を意識したうえで、その間を埋めていくこともモチベーション。

向こう側とこっち側、都市と農村、とか、領域を分けて捉えられがちだけど、その間を繋ぐことが絶対大事だと思ってる。
もちろん、仕事とプライベートも。
共助とか、「共に」ってことを大事にしたいなって。

そうやって考えていくと、一つにまるくまとめようとするから無理が生じるんだと思うんです。
いびつだったりとか、楕円だったりとか、ほんとはいろんなものがあって初めてひとつなんですよね。
ごちゃごちゃしてていびつで、円の中心がいっぱいあっていいはず。
それを認めないと描くものがみんな同じ正円になっていって、インクルーシブな社会は実現できないから。

「日本のチロル」と表される飯田市南部の下栗の里

【編集後記】
湯澤さんとお話をしていると、なんだか自分という存在を大事にしてもらっているような感覚を抱きます。

それは湯澤さんの関係づくりへのこだわりがあってこそ。
その人が何に興味を持ち、どんな反応をするのか。
フラットな関係をつくるにはどうすればいいのか。

関係づくりは「生きていくこと」だとも言う湯澤さんの話を聞いて、
心からその仕事、人生を楽しんでいる様子が伝わってきました。

さて、後編では関係人口に焦点をあて、彼らが地域にもたらすこと、そしてこれからの飯田についてお伝えします。

聴き手:神原沙耶
書き手:松永圭世

3/21(祝)10:00~15:00開催!オンラインイベントのご案内

10月末から始まった「NAGANO生き方共創コミュニティ こくりな」の活動も、そろそろ一区切り。
そこで今年度の集大成として、
「こくりな」「長野県」を通して繋がってくださった方々が、場所を超えて繋がり直し、自分らしい生き方への一歩を踏み出せる場を作ります!

今回お話を伺った、湯澤さんも参加予定。
みなさんのご参加をお待ちしております!

詳細・お申込みはこちらのnoteをご覧ください↓ ↓


後編へ続く・・・!


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