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【ライヴ日記】2019/10/30 嵐@東京ドーム

 10月30日、私は人生初となるジャニーズのライヴに行った。

 今年1月に2020年12月31日をもってグループの活動休止を発表し、また11月にはデビュー20周年を迎えた嵐のコンサートツアー『ARASHI Anniversary Tour 5×20』を観に東京ドームへ行ったのだ。

『 嵐 - A・RA・SHI [Official Music Video] 』

 そもそも私は、今までの人生で一度もジャニーズ系アイドルグループにハマったことがなかった。もちろんテレビの音楽番組やドラマ、バラエティー番組は人並みに観ていたから、小学生の頃に知った光GENJIに始まり、SMAP、TOKIO、Kinki Kids、V6そして嵐…といった具合に、デビューと共にグループ名は日々頭にインプットされていたし、メンバーの名前(人によっては苗字だけだが)と顔は一致し、代表的な曲ぐらいは知っていた。だけど、彼らが出演している全テレビ番組を録画して観るとかは全くなくて、わざわざチケットを取ってコンサートに行くこともないだろうと思っていた(補足するなら、K-popグループのことはもっと知らない)。

 そんな私ですら「嵐の活動休止」のニュースにはかなり驚いてしまった。グループでも個人でも、彼らの活躍を日常的に目にする機会は圧倒的に多かったし、2016年にはSMAPが解散し、その終わり方がとても残念なものだっただけに「嵐まで止まってしまうのか…」と、正直とても寂しくなった。だからこそ、活動休止発表後の記者会見で、記者からの質問に5人揃って真摯な受け答える姿と相変わらずの仲の良さに、彼らのファンのみならず会見を観ていた多くの人が肩を撫で下ろしたと思う。

 私が今回嵐のコンサートに行った一番のきっかけは、身内に誘われたからである。しかし、アイドルのコンサートには縁がないと思っていた私でも「嵐だから観たい」という思いが生まれるくらい、嵐という存在が特別であることを「活動休止」という事実を目の前にして、初めて認めることになった。

☆☆☆

 現在まだコンサート中なので、詳しい内容にはなるべく触れずに、初めて嵐のコンサートを観ての感想を書いていこうと思う。

 まず、私がコンサートを観終えて単刀直入に思ったことが「嵐はすごいしやばい」だ。日本のエンターテイメントを彼らが支え、盛り上げていることを実感せずにはいられない。私の描くアイドル像をまんまと覆していく5人は、観客5万5千人が集まっているという東京ドームの隅々までを幸福感でいっぱいに満たしていく。

 演奏は生バンドだった。最初はオケ(注:ライヴ用音源)を流しているのだろうと思っていたが、大がかりなステージセットに目を向けると、ずらりとバンドメンバーが並んでいたのである。曲によってはオーケストラまで登場する豪華さ。そして、素晴らしい演奏者が鳴らすサウンドに耳馴染みのある5人のユニゾンが重なり完成される世界観に触れてしまえば「嵐は実在するんだ…」とただもう感激してしまう。改めて聴く嵐の曲は、メロディも歌詞もとてもいい。ロック調だったりR&Bテイストだったりと、曲に施されたアレンジも自由。櫻井翔が会場全体を煽るようにラップを披露したかと思えば、二宮和也の柔らかな歌声が響き渡るバラードもある。この楽曲の豊かさがリスナー層の間口を広げグループに開放的なイメージを与えているのだろう。

 テレビよりも実際に生で観たほうが、ダンステクニックの高さもよくわかる。相葉雅紀の機敏な動きにはハッとさせられ、席からかなり離れた場所にいてもつい目で追いかけてしまったし、バックダンサーとして登場するジャニーズJr.の子たちもやっぱりうまい。振りもオリジナリティに溢れており、大野智のソロパートはもうとんでもなくカッコよかった。

『嵐 - Happiness [Official Live Video]』

 映像をはじめステージに仕掛けられた諸々の演出にも、驚かされてばかり。炎だったり花火だったりと、やることなすことスケールのデカさに呆気に取られ、何度も迫力と勢いに負けそうになった。これまでにもホールやアリーナクラスの会場で行われたライヴに行って、様々な演出が施されたものを観てはきたが、嵐の場合はレベルが違う。しかも、今回のツアーの構成を考えたのは、なんと松潤こと松本潤なのである!他所から舞台監督を迎えるのではなく、自ら考えているなんて。「とんでもなく忙しいはずなのに、この人たちのスケジュール管理ってどうなっているの?」やら「どこからそんなバイタリティが溢れてくるのだろう?」と、とにかく感心が止まらない。

 コンサート中にアリーナ席を縦断するステージと、場内をぐるりと回るゴンドラは、まるで「エレクトリカルパレードじゃん!」と私は思った。だが、東京ドームのアリーナ席後方やスタンド席からステージに目線をやると基本的に米粒サイズのメンバーしか観えないだけに(もちろん設置された巨大なスクリーンに姿は映っているが…)、メンバーが客席の近くに来てくれるというのは本当にありがたい演出である。私はいつもの癖で、ロックバンドのライヴを観るかのように嵐のコンサートを観ていたが、自分の席の近くをメンバーが通ったときは思わず「ひゃ~~」と変な声が出てしまうくらい、普段テレビで観る人を至近距離で観てしまえば自制心は見事に崩壊だ。

『 嵐 - truth [Official Music Video] 』

 本編ラストのMCでは、メンバー1人1人がファンへの感謝とそれぞれの胸の中にある今の想いを述べた。そこでは「嵐」という存在がかけがえのないものであること、そして「メンバー5人揃って今年デビュー20年を迎えられたこと」は1人1人の人生に於いて、とても大きな事実であることを全員の言葉から感じられた。嵐の活動休止の発端は大野になるが、残りの4人は彼を敵に回すこともなく、全員で「活動休止」という答えを出せたことが、さらに彼らの結束力を強くしたのだと思う。

 ロックバンドのライヴでは、けっこうな現実を見せられてしまうときがある。一方で、今回初めて観た嵐のコンサートは紛れもなく100%夢の世界。しかし、彼らのステージに掛けた熱意や想いは生半可なものではなかったし、その裏側にある苦労や苦悩も感じられる瞬間があった。アイドルグループだろうが、ロックバンドだろうが、同じ表現者であることは変わらない。そして両者の根本的な部分には「共通するなにか」があるのだと、嵐のコンサートから気付けたことで、私のライヴ観は大きく揺さぶられた。

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 嵐はデビュー20周年を迎えた11月3日に配信限定シングル「Turning Up」をリリースし、既存のシングル曲も全曲サブスクリプション解禁。公式のSNSアカウントもスタートしており、来年5月には国立競技場でのコンサートを開催することをYouTube Live配信で発表した。

『ARASHI - Turning Up [Official Music Video]』
MVの撮影には11月1日にオープンしたばかりの渋谷スクランブルスクエアの展望施設「渋谷スカイ」も使われている。

 活動休止まで1年と2ヶ月弱。嵐は残された時間の中で一体どこまで駆け抜けるのだろう?しかも、この勢いだと2021年以降も生き続けることになる私たちには「嵐ロス対策」を考える必要も出てきそうな気がする。だが、まずはアイドルの可能性を広げ続ける5人の歩みを追いかけるとしよう。私は、東京ドームのライヴで気づいた「共通するなにか」の正体を探ってみたい。

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