1
私は昔小さな羽虫で
あなたのベッドの裏についてた
のたうちまわるあなたのため
そっそそっそとへばりついてた
不機嫌なあなたの指で
潰されてしまったけれど
2
私は昔生意気なチャトラ猫で
あなたの眠れない夜によく
あなたの唇がそれ以上湿らないよう
窓の下でごろごろみゃんと鳴いてた
朝に怯えるあなたにはただ
ぎろりと睨まれてしまったけれど
3
私は昔おんぼろつり橋の欄干で
あなたがふらふら歩いてゆくのを
ハラハラして見守りながら
あなたの決意を邪魔し続けた
あなたの瞳はどこまでも
空虚に吸われていたけれど
4
私は今あなたの横にいて
同じソファーで揺れている
あなたは生きることが苦しいと
私の首に手をかけてくれるから
私は愚かに従属してみせるのだ
すぐにまた逢えるだろうから
5
青空ばかりを映すテレビをください
6
あなたがソファーで見た夢の中で
私は笑っていましたか
それならばいいのです
7
そんなに傷つけたいか
間違いなく弱さだ
8
とある日たぶん夏の日に
遮断機の向こうに姿を見つけても
決して声をかけないで
知らない者どうしとして
あのはしごをのぼりましょう
9
青い花がみたい
10
私はやがて光の粒になって
あなたの瞳に棲みつくだろう
あなたがどんな孤独をしっても
どんなに孤独を求めたとしても
戻れない道程をずっとともに
ぽとぽと歩き続けることだろう
11
【あなた】へ
よくぞここまで辿りついてくれた。嬉しいです。