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笹塚 心琴
2020年10月31日 20:36
1青空はとうにふたりを見放して気づけば秋も過ぎ去ってゆく2泣いたなら強くなれるの仰ぎ見た空にひとつも雲はいなくて3いい天気あまりに今日はいい天気きみが堕ちても気づかないほど4すずかけの葉っぱも枯れて踏まれればくしゃりくしゃりと悲鳴をあげる5混み合った待合室でふたりして濃度の高い孤独を溶かす6親指の大きさ比べあったこと忘れないでね私は泣かない7無力さは罪の深さと
2020年10月27日 21:29
1いつの日かわかりあえると信じてもブルーブラックインクは滲む2私から嫌いになると思うからもう少しだけここにいさせて3おやすみがうまくいえないまた明日会えるはずだと信じられずに4 ジュテームの意味も知らずに愛犬に名付けて呼べば皆が振り向く5キスをした夢から覚めて午前二時とつと秒針だけがうなずく6聞こえないふりをしていたさよならはクリームソーダと一緒に溶けた7天気
2020年10月23日 09:12
1このおかずあたためますか?と訊かれてお願いしますと涙ぐむ夜2新作のスイーツ登場またひとつ我の行手を阻む刺客め3同じ色同じカロリー同じ味 棚に並んだドリアの小海老4午前2時になるとひとつの街明かりとなって孤独を引き受けている5ときどきはメールしてよねと別れたファミマの手前のテールライト6雨が降るみんなひとりとふと気づく嬉しくなってコンビニへ行く7便利さとぬくも
2020年10月20日 19:41
1ブラックに口をつけたら短めのワンピを着てもいいと思った2溶けてゆくミルクを混ぜることもなくひとつになるのをじっと待ってる3いつも朝にきみが淹れる一杯は視界を明るく照らすルーティン4切りすぎた前髪にまだ気づかずにエスプレッソときみは闘う5怒りから逃げて許しにリーチしたそのご褒美はカフェラテがいい6摩耗したこころにそっと寄り添って一緒に泣いてくれる褐色7失恋の味
2020年10月18日 19:24
1もしきみが降ってくるなら曇天も悪くはないな(傘はいらない)2新しい傘を買った日誰よりも雨に焦がれているワンピース3うろこ雲のしっぽ目で追う横顔をずっと眺めていようと誓う4もしきみが雨予報なら大きめで丈夫な傘を持ってゆきます5コンビニのビニール傘がまた増えた 二人暮らしに傘が八本6衣替えのたびに不思議なことがあるなぜに服とは縮むのかしら7ライフイズビューティフ
2020年10月16日 23:30
1まだなにもわかっていないことだけはわかった(たぶんわかっていない)2すごろくのあがりのマスのすぐそばにふり出しに戻るマスがある3コスモスの花冠に触れたくて触れたら朽ちるそんな関係4白鳩の羽ばたく姿レコードに針を落とせずじっと見ている5長袖も脱いでしまえば同じことどうせ夏さえ逃げ出したんだ6唐揚げのコロモ部分が好きというきみのとなりは特等席だ7片方をなくしたピ
2020年10月13日 22:39
1赤い羽根飾ったひとの何割が鳥の痛みを思うのだろう2いっせーの、でジャンプをしよう二分後に特急新宿行きが来るから3テーブルに並ぶナイフとフォーク見て「切って刺すのか」と呟いたきみ4花束と拳銃ならば花束を選んで撃たれる人生がいい5荒らげた声の寂しい(獣より寂しい)今は沈黙が華6前髪を切ったってのに誰からも気がつかれないで風まで凪いだ7足もとに転がる木の実またひと
2020年10月10日 20:28
1きみの住む街へと進む各駅に乗り換えるとき降る三連符2特別じゃなくてきみにとっての当たり前になりたいだけなの3秘密って甘いにおいがするんだね「ごめん」だなんて通用しない4なにごともなかったみたく読書する文字たちにすら嫉妬する夜5前ぶれは必要ですか好きなのに泣いてしまうのは嫌ですか6ホーム越し小さく右手を振り返す胸の痛みを知る京王線7腕時計ちらりと見やる仕草さえ
2020年10月5日 18:06
1わがままを許してくれた夜のこと永遠にして胸に沈める2きみの目のなかの私はなぜかしらいつも寂しい顔をしている3トンネルを抜けてはじめて助手席のきみの涙の意味がわかった4秋風は出せずじまいのお手紙の正しい弔いかたを知ってる5梨を剥く指先でさて幾人のこころを葬ってきたでしょう6無難さがトレンドとして跋扈する ときに誰かを轢死させつつ7「がんばれがんばれがんばれがん