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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2020年10月の記事一覧

短歌 空が青すぎた日 十首

短歌 空が青すぎた日 十首

1
青空はとうにふたりを見放して気づけば秋も過ぎ去ってゆく

2
泣いたなら強くなれるの仰ぎ見た空にひとつも雲はいなくて

3
いい天気あまりに今日はいい天気きみが堕ちても気づかないほど

4
すずかけの葉っぱも枯れて踏まれればくしゃりくしゃりと悲鳴をあげる

5
混み合った待合室でふたりして濃度の高い孤独を溶かす

6
親指の大きさ比べあったこと忘れないでね私は泣かない

7
無力さは罪の深さと

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短歌 天気雨 十首

短歌 天気雨 十首

1
いつの日かわかりあえると信じてもブルーブラックインクは滲む

2
私から嫌いになると思うからもう少しだけここにいさせて

3
おやすみがうまくいえないまた明日会えるはずだと信じられずに

4
ジュテームの意味も知らずに愛犬に名付けて呼べば皆が振り向く

5
キスをした夢から覚めて午前二時とつと秒針だけがうなずく

6
聞こえないふりをしていたさよならはクリームソーダと一緒に溶けた

7
天気

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短歌 コンビニ 十首

短歌 コンビニ 十首

1
このおかずあたためますか?と訊かれてお願いしますと涙ぐむ夜

2
新作のスイーツ登場またひとつ我の行手を阻む刺客め

3
同じ色同じカロリー同じ味 棚に並んだドリアの小海老

4
午前2時になるとひとつの街明かりとなって孤独を引き受けている

5
ときどきはメールしてよねと別れたファミマの手前のテールライト

6
雨が降るみんなひとりとふと気づく嬉しくなってコンビニへ行く

7
便利さとぬくも

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短歌 コーヒー 十首

短歌 コーヒー 十首

1
ブラックに口をつけたら短めのワンピを着てもいいと思った

2
溶けてゆくミルクを混ぜることもなくひとつになるのをじっと待ってる

3
いつも朝にきみが淹れる一杯は視界を明るく照らすルーティン

4
切りすぎた前髪にまだ気づかずにエスプレッソときみは闘う

5
怒りから逃げて許しにリーチしたそのご褒美はカフェラテがいい

6
摩耗したこころにそっと寄り添って一緒に泣いてくれる褐色

7
失恋の味

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短歌 傘 十首

短歌 傘 十首

1
もしきみが降ってくるなら曇天も悪くはないな(傘はいらない)

2
新しい傘を買った日誰よりも雨に焦がれているワンピース

3
うろこ雲のしっぽ目で追う横顔をずっと眺めていようと誓う

4
もしきみが雨予報なら大きめで丈夫な傘を持ってゆきます

5
コンビニのビニール傘がまた増えた 二人暮らしに傘が八本

6
衣替えのたびに不思議なことがあるなぜに服とは縮むのかしら

7
ライフイズビューティフ

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短歌 ピアス 十首

短歌 ピアス 十首

1
まだなにもわかっていないことだけはわかった(たぶんわかっていない)

2
すごろくのあがりのマスのすぐそばにふり出しに戻るマスがある

3
コスモスの花冠に触れたくて触れたら朽ちるそんな関係

4
白鳩の羽ばたく姿レコードに針を落とせずじっと見ている

5
長袖も脱いでしまえば同じことどうせ夏さえ逃げ出したんだ

6
唐揚げのコロモ部分が好きというきみのとなりは特等席だ

7
片方をなくしたピ

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短歌 沈黙 十首

短歌 沈黙 十首


赤い羽根飾ったひとの何割が鳥の痛みを思うのだろう

2
いっせーの、でジャンプをしよう二分後に特急新宿行きが来るから

3
テーブルに並ぶナイフとフォーク見て「切って刺すのか」と呟いたきみ

4
花束と拳銃ならば花束を選んで撃たれる人生がいい

5
荒らげた声の寂しい(獣より寂しい)今は沈黙が華

6
前髪を切ったってのに誰からも気がつかれないで風まで凪いだ

7
足もとに転がる木の実またひと

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連作短歌 恋人

1
きみの住む街へと進む各駅に乗り換えるとき降る三連符

2
特別じゃなくてきみにとっての当たり前になりたいだけなの

3
秘密って甘いにおいがするんだね「ごめん」だなんて通用しない

4
なにごともなかったみたく読書する文字たちにすら嫉妬する夜

5
前ぶれは必要ですか好きなのに泣いてしまうのは嫌ですか

6
ホーム越し小さく右手を振り返す胸の痛みを知る京王線

7
腕時計ちらりと見やる仕草さえ

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秋風は出せずじまいのお手紙の正しい弔いかたを知ってる

秋風は出せずじまいのお手紙の正しい弔いかたを知ってる

1
わがままを許してくれた夜のこと永遠にして胸に沈める

2
きみの目のなかの私はなぜかしらいつも寂しい顔をしている

3
トンネルを抜けてはじめて助手席のきみの涙の意味がわかった

4
秋風は出せずじまいのお手紙の正しい弔いかたを知ってる

5
梨を剥く指先でさて幾人のこころを葬ってきたでしょう

6
無難さがトレンドとして跋扈する ときに誰かを轢死させつつ

7
「がんばれがんばれがんばれがん

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