見出し画像

2022年1月20日

今日のココ日(ココルーム日記)
「最近なぁんにもやる気がおきひんのや」
今朝、スーパー玉出のチラシで作ったコヨリでお城や通天閣を組み立てる釜ヶ崎のオッチャンが、ココルームに来るやいなやそう言った。
いつも「あんた東京行って悪いことばっかりしてきたんやろ」など冗談を言っては僕をからかうオッチャンが珍しくしおらしいので、僕は少し心配になった。
「オッチャン、どうしたん?コーヒーでも飲んで気分転換してったら?」
僕は最近友人から届けられたばかりの浅煎り豆を使ってコーヒーを淹れた。
「このコーヒー浅煎りだからちょっと酸っぱく感じるかもしれないけど、飲んでみて。」
そう言った僕にオッチャンは、「わしブルマンとかキリマン時々飲んでたからな。酸っぱいのも好きやで」と答えた。
「昔はキリマン飲んで、「このコーヒー腐っとる、酸っぱいわ!」とか言うやつおってな」とオッチャンは愉快そうに笑った。
「口に合うといいけど」とコーヒーカップをオッチャンの前に置く。
黙ってひと口飲むオッチャン。
「・・・美味いなぁ、このコーヒー!」
オッチャンは目を見開いた。
あっという間に飲み干すと、「今日で死ぬかと思ってたけど、このコーヒー飲んだら寿命が三日延びたわ」と言った。
「そうかぁ、それはよかった。オッチャンにそう言ってもらえて俺も嬉しいよ」
僕はそう言ってオッチャンを見送った。
「また三日後おいでね、コーヒー淹れるから。三日に一回飲んでたら死なないですむしね」
オッチャンは振り返らず背中越しに手を振って応え、商店街へと消えていった。
人生は一期一会。
孤独の先にここへたどり着き人生の終焉を釜ヶ崎で迎える人たちから、いつもそれを学ばさせられる。
でもまた三日後のオッチャンとのコーヒータイムを、僕は楽しみに待っていようと思う。
(書いた人:テンギョー)

現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています