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2022年1月21日

今日のココ日(ココルーム日記)
釜ヶ崎に住むオッチャン、慶次郎さんが、今日ココルームにコーヒーを淹れに来てくれた。
慶次郎さんは今月28日から始まる大阪関西国際芸術祭に参加するココルームの展示場で釜ヶ崎コーヒーを振る舞う予定で、その練習を兼ねて味をみてほしいという。
慶次郎さんの淹れるコーヒーは、まさに釜ヶ崎らしいガツンと苦みが冴え渡る深煎りの味わいだった。
ただ、彼のコーヒー以上に僕が興味を持ったのは、彼がコーヒー道具と一緒に持ってきた古びた鍋だった。
「これ、なに?」
「これか?俺がホームレスしとった時に持ち歩いとった鍋や」
「え!じゃぁこの鍋でセミとか料理してたんだ?」
「そうそう笑」
「へぇ!四国の山の中で死に場所探してた時もこれ使ってたんだね」
「そうやぁ。結局あん時死にきれんかったから、今考えたら俺の命の恩人やなぁ」
「何年くらい使ったの?」
「何年や、確か三年か。大分から船に乗る時ぶつけて壊れてな。柄の部分にサージカルテープってあるやろ?あれ巻いて応急処置したん。そのあとで落ちとるハリガネ拾って巻いて直したわ笑」
「相当年季入ってるよねぇ。どこで買ったの?」
「100均」
「えーっ、結構持つんだね!」
「中は真っ黒に焦げついとったけど、釜ヶ崎に来てから重曹で洗ったった」
「今も持ち歩いてるんだねぇ」
「まぁな。俺の放浪生活の相棒やったさかいな」
僕はキッチンの上に置かれたその鍋をじっと見ていた。
慶次郎さんも暫し鍋を見つめていた。
コーヒーカップを口に運び、ひと口すすると、少し冷えたコーヒーはさっきよりもうちょっと苦い味がした。
(書いた人:テンギョー)

現在、ココルームはピンチに直面しています。ゲストハウスとカフェのふりをして、であいと表現の場を開いてきましたが、活動の経営基盤の宿泊業はほぼキャンセル。カフェのお客さんもぐんと減って95%の減収です。こえとことばとこころの部屋を開きつづけたい。お気持ち、サポートをお願いしています