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体外受精の移植周期って何するの?

体外受精では、大切に大切に育てた卵胞を採卵し、受精卵を培養して、
やっと待ちにまった「移植周期」。

 この「移植周期」って、具体的にどんなことをするんでしょうか?
かかる期間や使う薬など、いざ治療を受けるにあたって何をするのか知っておくと安心ですよね。
 
今回の記事では、体外受精の移植周期に行う具体的な治療法や使う薬、移植が出来ない場合はあるのか紹介します。
 


体外受精の移植周期に行うこと

移植周期では、着床しやすいような環境に整えて受精卵を戻し、妊娠を目指します。
 
では、どんな子宮が着床しやすいのでしょうか?
 具体的には、子宮内膜が十分に厚くなっている状態の子宮です。
 
子宮内膜を厚くして環境を整えてから移植するわけですが、
移植には主に2種類の方法があります。

子宮内膜を厚くするためにホルモン剤を使う「ホルモン補充周期法」と、
自然な身体のリズムに合わせる「自然周期法」です。
 
それぞれどんな方法なのか見てみましょう。メリット、デメリットも合わせて紹介します。
 

 ホルモン補充周期法

ホルモン剤を使用して子宮内膜を厚くし、身体を排卵が起こった時と同じような状態にします。

メリットは、
・移植日の日にちが決めやすい
・来院日数を減らせる

お仕事をしながら治療をされている方にとっては調整しやすい方法です。

デメリットは、
・ホルモン剤による副作用

具体的には頭痛や不正出血、
また、貼付剤で皮膚がかゆくなる方もいます。 

それほど恐れる必要はありませんが、異常があった場合は、
速やかに医師に相談しましょう。

自然周期法

治療を受ける人の自然の排卵に合わせて移植を行う方法です。

超音波検査で排卵を予想・確認して、
内膜が厚くなった事を確認して移植を行います。

メリットは、
・ホルモン剤を使わないので副作用の心配がないこと

デメリットは、
・生理周期が整った人でないと難しいこと
・前もってスケジュールを決めにくく通院回数が多くなること
  
ただし、いずれの方法でも妊娠率には有意差がないことがわかっていて、
それぞれにメリット・デメリットがあることを理解しましょう。

 
実際は、医療機関によって適応になる方法は変わってきます。
自然周期を原則としているところもあれば、ホルモン補充を基本として考えているところも。

よく先生と相談して、その時の自分にあった方法を選びましょう。

使用するホルモン剤

続いて、実際に移植周期で使われるホルモン剤を紹介します。

ホルモン補充周期の場合でも、
・テープを貼る
・錠剤を飲む
・ジェルを塗る
・注射をする

…と様々な方法があります。
 


令和2年に行われた調査報告書によると、
 
①    エストロゲン(卵胞ホルモン)
②    プロゲステロン(黄体ホルモン)
③    hCG(用ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)
 
を使用している医療機関が大半でした。
どれも受精卵が着床するのを助ける目的で使用されます。
 
プロゲステロンが最も多く使用されていて98.2%、
続いてエストロゲンが93.5%です。

プロゲステロンは、膣錠を使う場合がもっとも多く、
続いて錠剤、ジェル、注射の順で頻度が高くなっています。

エストロゲンは、テープ貼り付け、錠剤、ジェル、注射の順で頻度が高くなっています。

また、hCGの使用は6.2%と少数派ですが、使う場合は注射で投薬されます。
 
受診している医療機関や周期によって使うホルモン剤の形が違うので、
使うタイミングや回数、量など説明をしっかり聞くようにしましょう。

医師は、最も良い状態で移植ができるように、
ホルモン剤の量もとても考えて処方してくれています。

もしわからないことや飲み忘れなど不安なことがあれば、
自己判断せず、電話などで医療機関へ必ず確認しましょう。
 
 

移植が出来ない場合

今までのお話にあったように、移植周期では、
子宮内膜を着床しやすい状態に整えて移植を行います。

しかし、残念ながら中止になってしまうこともあります。
ここでは移植中止の考えられる理由をご紹介します。


 
①    子宮内膜の厚さが足りなかった
着床には、子宮内膜にある程度の厚さが必要と言われています。

基準は受診している医療機関によって異なりますが、8mm程度を基準にしているところが多いようです。
子宮内膜が厚くならないと着床の確率が低くなるため移植が中止になることがあります。
 
②    自然周期において排卵済みだった
自然周期で移植する場合は、自然な排卵後に内膜が厚くなったタイミングに行います。
排卵後の子宮が着床に一番良い時期を狙うため、もしも排卵済みの場合はタイミングがずれてしまうことになります。
その場合は着床率が下がってしまう可能性があるので、移植が中止になることがあります。
 
③    移植予定の受精卵が使用出来ない状態になった
移植する受精卵には、受精して着床出来る状態に培養された新鮮胚と、新鮮胚を凍結した凍結胚があります。

現在は、凍結胚移植が多いようですが、
凍結胚を使う場合は、凍結・融解して移植する時にダメージを受ける可能性が全くないとは言い切れません。
凍結胚を移植する前に融解して、状態が悪い場合は移植中止になることがまれにあります。
 
 

まとめ
 

移植周期には具体的に何をするのかご紹介しました。
移植には大きく分けて
・自然な排卵周期で行う自然周期法
・ホルモン剤で身体の状態を整えて行うホルモン補充周期法
の2種類があります。
 
それぞれメリット・デメリットがありますし、使うホルモン剤の種類や量、タイミングも様々です。
身体をどんな状態にして移植を行うのか事前に知識をつけ、しっかり説明を聞いて移植周期が上手くいくように準備しましょう。
 
 
参考:https://www.hosp.ncgm.go.jp/s016/010/040/020/201512100720.html(国立国際医療センター)
https://www.mhlw.go.jp/content/000766912.pdf(野村総研株式会社 不妊治療の実体に関する調査結果)
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/60/9/KJ00005041861.pdf(薄い子宮内膜の原因と対策 KKR 札幌医療センター斗南病院 生殖内分泌科 東口 篤司)
https://www.jsar.or.jp/dissertation/wp-content/uploads/sites/11/2017/06/Vol18No1.pdf(日本IVF学会雑誌Vol.18 2005)

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