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私的MOVIEキャラクター烈伝⑤芹沢大助博士(ゴジラより)

今回は特撮枠ではなく映画枠で、芹沢大助博士を取り上げてみようと思います。芹沢博士とは1954年(昭和29年)に公開された映画「ゴジラ」において、現在までの全てのゴジラシリーズの中で、唯一ゴジラを完全に抹殺することに成功した兵器オキシジェンデストロイヤーの開発者です。

芹沢博士は全ゴジラシリーズで唯一「ゴジラ」という存在に完全に勝利した人物でもあります。科学が社会にもたらす脅威を誰よりも理解していた敬虔な科学者であり、それでも科学を人々のために役立てようと心がけていた善良な人物です。

戦争経験者であるためか人間の弱さや恐ろしさを強く意識しており、科学を人間のエゴのために使うことを忌避していました。それゆえに酸素を研究する過程で水中酸素破壊剤「オキシジェンデストロイヤー」を発明したものの、その絶大な破壊力に戦慄した博士は、自らの発明が兵器利用されることを恐れて研究成果を公表せず、屋敷に引きこもって隠遁生活を送っていました。

しかし、婚約解消後も懇意にしていた恵美子にはその秘密を打ち明けてしまい、彼女の現婚約者・尾形にオキシジェンデストロイヤーの存在が伝わってしまいます。尾形からゴジラ撃滅の為にオキシジェンデストロイヤーを使用することを要求された芹沢博士は、「その存在が公表されたならば、原水爆以上に人類にとっての脅威になる」と考え、頑なに拒絶します。

ですが、ゴジラが破壊した東京の惨状を見せられたことで心が揺らぎ、遂に使用を許可してしまうのです。最終的に博士は尾形と共に東京湾へ潜行してオキシジェンデストロイヤーを使用しますが、研究資料を全て焼却した上で自らもゴジラと死を共にすることで、自身が生み出した脅威への責任を全うしました。

平成ゴジラシリーズ最後の作品である「ゴジラVSデストロイア」はこの映画から40年後の世界を描いていますが、東京湾横断道路工事の掘削工事により酸素に触れた古代生物が、異常進化して怪獣「デストロイア」となって蘇ります。

オキシジェンデストロイヤーによる無酸素状態を作ったために復活した完全生命体のデストロイアが、人類に襲い掛かるということで、あらためて原水爆以上の脅威になったという点がなんとも皮肉な話ですね。


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両親2人の介護を一人でやってます。プロレスブログ「せかぷろ」&YouTube「チャンネルせかぷろ」主宰。現在ステージ2の悪性リンパ腫と格闘中。