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障害のある子の「親なきあと」に向けてゆっくり考えていけばいいこと

「親なきあと」に向けて「親あるあいだ」にできる準備はたくさんありますが、ほとんどのことは一朝一夕にはできないものです。焦る必要はないので、頭の片隅に置きながら、何年もかけてゆっくり・じっくり考えて取り組んでいけばいいことがほとんどです。
ここでは、その中でもコアとなる点の概要について紹介したいと思います。それぞれの詳細については別の記事で紹介していきたいと思います。

子どもが「親なきあと」も困らないために

信頼できる”支援の輪”を考える

お金を残すことも大事ですが、それよりも、信頼できる”支援の輪”を残すことが大事です。信頼できる”支援の輪”があれば何とかしてくれます。しかしながら、信頼できる”支援の輪”を作ることは、お金を残すよりも難しいことかもしれません。試行錯誤しながら長い年月をかけて取り組むべきものでしょう。


親なきあとの住まいとサポート体制を考える

親なきあとの子どもの暮らしを想像しながら、住まいと、誰にどのような支援をしてもらうかを考えていきます。

住まい
一人暮らしができない人・したくない人は、障害者支援施設やグループホームで暮らすことができます。
一人暮らしをしたいけど不安のある人は、一人暮らしをサポートする様々なサービスを使うことができます。例えば、外出時に移動のサポートをする移動支援(ガイドヘルプ)、家での家事や身体的な介助を行う居宅介護(ホームヘルプ)、定期的な訪問により生活状況を確認して相談にも応じる自立生活援助、などの障害福祉サービスを使うことができます。また、全国にある各地域の社会福祉協議会が、日常の預金の出納や支払いの代行・サポート、通帳などの保管、障害福祉サービスの利用手続きのサポート、職員による定期的な訪問などを実施しています。

代表的な住まいのタイプと費用

サポート体制
サポート体制については、子どもの苦手なところを補ってくれる各種障害福祉サービスをうまく組み合わせて利用することが重要ですが、その際「計画相談事業者」が頼りになる存在となります。
金銭管理や契約行為等を本人の代わりに行ってくれる成年後見制度の利用も考える必要があるかもしれません。成年後見については、悪い噂やニュースにより不安を抱きがちですが、”悪い”後見人にあたらないように、上手に進めていくことがとても重要です。また、通帳などを預かって金銭管理を本人の代わりに全て行う成年後見人とは違い、判断能力によっては重要行為のみを代理・サポートする保佐人・補助人と呼ばれる制度が使われる場合もあります。制度の改正(改善)が5年ほど後に行われる予定もあるので、制度や進め方について十分に理解してから利用を検討していくといいでしょう。
きょうだいがいる場合は、きょうだいとオープンな会話をして、何をして欲しいか・欲しくないかを明確に伝えておくと共に、障害のある子の様々な情報を残しておくと安心です。きょうだいに負担を掛けたくないと思っていても、親がいなくなると、相続手続き含めてきょうだいがサポートしないといけなくなることが出て来ますので情報は必要です。

子どもに残すお金を考える

必要以上に大きなお金を残してもあまり良いことはありません。また、単にお金を残すだけでは不十分で、安全に、そして本人のために使えるような仕組みを整えておくことが必要です。


親の将来への備えを考える

子どもが困らないように準備することは大事なことですが、親自身が将来困らないようにしておくこともとても重要です。子どもに障害があり頼ることができない場合ななおさらでしょう。

老後資金を考える

親が老後資金で破綻すると子どもにお金を残すどころではなくなります。年金減少や物価上昇などに備えて早くから”お金が勝手に増える仕組み”を作っておくと安心です。”お金が勝手に増える”と言っても怪しい投資商品のことではなく、株式の投資信託などをコツコツと長い年月をかけて積み立てて行くことを指します。投資対象と時間を分散させることでリスクを抑えながら長期でみると大きなリターンが期待できます。

認知症になるリスクを考える

親が認知症になると銀行預金などの資産が凍結され、家族でも引き出すことができなくなる恐れがあります。障害のある子に経済的援助をしていた場合、認知症で預金が凍結されると援助を続けられなくなってしまいます。

親の認知症への備えとして任意後見家族信託の活用などが考えられます。

任意後見

任意後見とは、判断能力があるうちに成年後見人を自分で選んでおいて、判断能力が低下した場合に財産管理と身上保護(契約手続等)をしてもらう契約を結んでおくことです。判断能力が十分でない障害のある人への成年後見は法定後見と呼ばれ、自分で後見人を選ぶのではなく裁判所が選任することが大きな違いです。

基準を定めて、家族の生活費を自分の財産から支払う旨を任意後見契約に入れておけば、任意後見人が自分(親)の財産から家族(子ども)の生活費を支出することができます。ただし、成年後見制度はあくまでも被後見人(親)の財産を守ることに主眼が置かれますので、親の財産が家族(子ども)の生活費を援助するに十分でないと裁判所等が判断すると、家族の生活費のための支出をストップされる可能性がある点には注意が必要です。

家族信託

“信託”とは難しそうな言葉ですが、信頼できる人や企業に財産を託して使い方を指定しておく契約のことです。親族など個人に財産を託すことを家族信託と呼んでおり、例えば、親がきょうだい児に財産を預けて、自分と障害のある子を含めた家族のために使ってもらうよう指定しておくことができます。家族信託は、裁判所に監督される任意後見より柔軟なお金の使い方が可能になると言えますが、対象となるのは信託された財産のみであり、信託されていない財産には家族は手を付けることができません。また、信託できるのは財産だけなので、身上保護(契約手続き等)は対象外である点も任意後見との大きな違いになります。

死後の事務手続きを考える

親一人子一人の場合、親が亡くなったあとの事務手続きを子ども一人ではできないかもしれません。死後事務委任契約をしておくことで、死亡後に必要な事務手続き等を弁護士、司法書士、行政書士などの専門家がしてくれます。

死後事務委任契約では以下のようなことを委任することができます。

  • 行政手続き:死亡届提出、健康保険証や介護保険証の返納、年金などの手続き

  • 指定された連絡先への連絡

  • 指定された葬儀、埋葬などの執行

  • 遺品整理(含むデジタル遺品)

  • 病院・施設等の退去手続き・費用の清算

  • インフラやクレジットカード等の契約解約、費用の清算

まとめ

子どもが「親なきあと」も困らないために

  • 信頼できる”支援の輪”を作っていく

  • 親なきあとの住まいとサポート体制を想像しながら少しずつ準備していく

  • 子どもに残すお金と残し方を考えていく

親の将来への備えを考える

  • 老後資金が破綻しないように

  • 認知症への備え

  • 親一人子一人の場合は死後の事務手続きも


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