地域を知ろう!~豊中の北部と南部を歩いてみる~【とよなか地域創生塾第8期 DAY2】
みなさん、こんにちは!今回は9月15日のとよなか地域創生塾DAY2の様子をお伝えします!とよなか地域創生塾は、豊中市を舞台に「地域」を「創」り「生」かしていくための考え方と仲間が得られる連続講座(ゼミナール)です。
DAY2では豊中のまちを歩いて、活動に取り組む方々のお話を現地で伺いました。午前中は全員で南部地域を、午後からはさらに南部を堪能するコースと北部を探索するコースに分かれて、豊中のローカルに迫ります。どこもユニークで面白い場所ばかりだったのでその魅力をみなさんにお届けしたいと思います!
文:児玉和奏(こだま・わかな)、多久島まい(たくしま・まい)
DAY2は少し早めの時間帯、10時からスタート!中には集合10分前に飛び起きたという塾生も。(笑)まずはとよなか地域創生塾の企画運営を担う株式会社ここにあるの藤本遼(ふじもと・りょう)さんから挨拶。藤本さんの住んでいる尼崎では朝雨が降っていたそうで、無事晴れている豊中の空を見て安堵の表情。続いて、この日南部を案内してくださる我らが塾長、橋本慶(はしもと・けい)さんと、北部を案内してくださる中西由美子(なかにし・ゆみこ)さんをご紹介!お二人とも豊中市の職員さんで、豊中のプロフェッショナルです。
集合場所の旧野田小学校は庄内駅から歩いて10分ほど。1年半前に廃校になった野田小学校では、何やらきのこが栽培されているらしい…。そんな話を聞いた後、きのこの謎を解き明かすべく、いざ校内へ潜入!
小学校できのこ栽培…!?
旧野田小学校で行われているのは知的障がいのある方の雇用創出を目指した循環型きのこ栽培事業「ONE TOYONAKA」。こちらを運営する中尾英理(なかお・えり)さんはなんと、今期のとよなか地域創生塾の塾生!「まりおさん」の愛称で親しまれています。
なぜまりおさんはきのこ栽培を始めたのか、そしてなぜ小学校を事業の場に選んだのか、気になるポイントだらけです…!
そもそもまりおさんの活動の原点には障がいのあるお子さんをもつお母さんたちの声が。今の社会には障がいのある方が支援学校卒業後に働ける場所が少ないという問題があります。そんな中でまりおさんは、我が子の将来を不安に思うお母さんたちの声を知り、障がいのある方も働きやすい場所を作る必要があると感じたそうです。
そうして働きやすい環境を考える中で辿りついたのがきのこだったんです。というのも、ここでのきのこ栽培は次の3つの理由から障がいのある方でも働きやすい仕事なのだそう。1つはルーティンワークが多く、働く方も安心できること。2つ目に季節を問わず作業環境が20℃程度で安定していること。そして、駅から一人でも歩いて行けるアクセスの良さも就労しやすいポイントの1つです。
事業を始めるにあたって、アクセスのいい場所を探していたまりおさん。目に留まったのは野畑配水場という場所でした。
早速豊中市へ相談したところ、「配水場は条件などが厳しいが、野田小学校という廃校の活用は考えられる。」という話がでたそう。ちょうどこのとき市は、廃校の本格活用までの2年間を使ったある取り組みを計画していました。それが、使われていない教室を南部地域のにぎわいに貢献する事業者に貸し出すというもの。これがまりおさんの計画と合致して、トントン拍子で廃校が使えることに!
藤本さん曰く、活動拠点を探しているとき、こういった使い手のいない場所は狙い目とのこと。今余っているスペースやもうすぐ潰れそうなところに積極的に声をかけてみることは重要で、話してみると意外にも使わせてくれることもあるのだそう。むしろ、うまく場所を使えていない持ち主からすると嬉しい提案だそうです。
使われていないスペースは使えない場所ではなく、使う余地がある場所。お二人の話を聞く中でまちを見る目が変わったように思います。「他にも使えそうな場所はないかな?」、そんな視点を手に入れて小学校をあとにしました。
南部フェスティバルへ
続いては旧野田小学校から徒歩5分、野田中央公園へ。この日は南部フェスティバルが開催されていて、公園内はかなりの賑わい!地域の自治会の出店があったり、地域の消防団が集まって消防車の乗車体験をしていたりしました。他にも子どもたちによる吹奏楽やよさこいのステージがあり、地域の人やモノがぎゅぎゅっと集まった場でした。
ややタイトなスケジュールの北部コースの塾生らはここで昼食をとって早速午後の探索へ出発!
小学校の一画に地域の人が集まる畑…?
ここからは北部と南部に分けてまち歩きの様子をお届けします!
車に乗り込み、北部組がまず向かったのは豊中市立北丘小学校。ここでは校内の空きスペースを使って、地域の人たちが畑をしています。説明してくださったのは、「畑のある交流サロン@kitamachi」の岡本さん。
こちらの畑は地域の人たちが楽しく、花づくりや野菜づくりができるようにと始まり、今では地域と小学校が深く繋がる場に。みんなで育てて収穫した野菜は自分たちで食べるだけでなく、イベントで振る舞ったり、子ども食堂に提供したりしています。また、小学校の家庭科の授業でもこちらの畑を使っているそうで、収穫体験や採った野菜を使った調理実習を行っています。授業などを通して子どもたちに畑を楽しんでもらえるのがみなさんのやりがいになっているのだそう。また、ここで作る野菜は無農薬で育てていて、さらに有機肥料を使っているのでお店で売られているものより安心で美味しいんだとか!
学校が閉まっていて教員のいない日曜日も活動しており、校門の鍵の管理も地域の方がしているとのこと。地域と学校の信頼関係が見て取れます。小さい学校だからこそ、地域と深く関わっていて、それゆえに強い信頼関係が築けているのだと中西さんが教えてくれました。
「誰でも来れる畑なので、興味のある方は日曜日の午前中にまた来てください。」と最後に岡本さんから一言。ぜひ足を運んでみてください!
公園のおしゃれスポット!1OOORE SCENES(センリシーンズ)
続いては豊中市最大級の公園、千里中央公園へ。公園に入ると何やらおしゃれな場所が…!
こちらは豊中市役所の中西さんが案内してくださいました。「1OOORE SCENES(センリシーンズ)」は、豊中市が公募した公園再整備による活性化事業をきっかけに誕生。公募に手を挙げた株式会社エイチ・ツー・オーリテイリングに施設の整備や公園管理、駐車場管理を委託し、公民連携して公園を運営しています。
旧公園管理事務所はリノベーションした新公園事務局、もとい、コミュニティスペース「LABO」にはパークコミュニケーターが常駐していて、公園使用について相談に乗ってくれたり、市との間に入ってくれたりと、地域の方々が公園で活動しやすいようサポートしています。そうして、地域の方が主体となって公園を使うことが、持続的に公園の賑わいを生むことに繋がるのです。
本棚から生まれるコミュニティ〜千里ヒトハコラボ〜
3箇所目は新千里南町近隣センターに9月2日にオープンしたばかりの「千里ヒトハコラボ」。ここでは運営者の1人である北村拓(きたむら・たく)さんにお話を伺いました。
ヒトハコラボが行なっているのはいわゆる「みんとしょ(みんなの図書館)」。一箱本棚オーナー制度による、みんなでつくる図書館です。一箱2,000円で本棚を借りたオーナーはその棚に好きに選んだ本を置いて、利用者は無料で本を借ります。2,000円で棚を借りるなんて珍しい人だなと初めは思っていましたが、よくよく聞くとヒトハコラボで生まれているのは本の貸し借りだけじゃないらしい!
本棚オーナーの最大の魅力は新しい人と出会えること。本を借りた人と手紙を通した交流が生まれたり、オーナー同士の交流会が行われたりと、本棚を通じて人との繋がりが生まれています。オーナーたちには個性のある方や地域活動に興味のある方が多いらしく、面白い出会いが沢山ありそうです。また、店番ができるのもオーナーの特権!店番をしている日はヒトハコラボを自由に使っていいそうで、ワークショップや創作物の販売を行えるんです。
新しい人との出会いや、場所を借りられるということにピンと来た塾生も何名かいたようで、本棚オーナーデビューを真剣に検討していました。彼・彼女らの本棚はどんなものになるのか、そこからどんな出会いが生まれるのか、想像するだけでわくわくします。
帰りの時間まで少し余裕があったのでもう1箇所立ち寄ることに!それが「ぼん・しゃれーる」。UR都市機構が管理する団地の中にある「ぼん・しゃれーる」も本で繋がるコミュニティスペースです。そしてここは前期のとよなか地域創生塾で塾生らが最終プロジェクトを行った場所でもあります。まちには活用できる場所が沢山ありそうですね。
下町の雰囲気と人の温かさがともにある、南部地域
続いては、南部コースのまち歩きをご紹介。
豊中南部は、とよなか地域創生塾の拠点である庄内コラボセンター「ショコラ」がある地域です。南部コースは、南部ブラザーズの橋本慶さんと上野正彦(うえの・まさひこ)さんが案内してくださいました。
庄内駅付近は、美味しいご飯屋さんや居酒屋さんが多いんですよ〜と語る橋本さん。ここの飲食店が安くて美味しいのは、市場から直接仕入れているからだと教えてくれました。
塾生のみなさんの話を聞く姿勢も思わず前のめりに。(笑)
庄内駅をスタート地点に、まずは駅周辺の散策です。
実は、豊中市は「音楽あふれるまちづくり」を進めています。市内には大阪音楽大学があり、音楽で人と社会をつなごうと様々な取り組みがなされているのだそう。ここ庄内駅周辺も、音符と人のイラストが歩道に描かれていたり、音楽イベントが開催されていたりと、音楽あふれるまちづくりがされているとのこと。美味しいご飯と音楽があるまちだなんて、庄内は賑やかで素敵なまちですね…!
南部地域についての概要説明を経て、いよいよ1つ目の目的地へスタートです!
空き家ビルを改装して誕生した、ローカルゲストハウス
まず訪れたのは、「日本宿屋一六八(いろは)」。
代表の井関さんは、豊中市の空き家マッチング事業を通してここを見つけ、コロナ禍の少し前にゲストハウスをオープンしました。もともとバックパッカー向けに開いていましたが、現在は、主にファミリーや出張で訪れたビジネスマン、外国人観光客、学生の合宿の拠点として利用されているそうです。
かつてはパチンコ屋や芝居小屋が入っていたというビルの階段を3階まで登ると、井関さんが温かく出迎えてくれました。井関さんは、庄内を「お客さんをシェアするまち」だと表現します。補足で橋本さんも、周辺の飲食店に入ったお客さんが次のお店に行くときには、みんな「行ってらっしゃい」と挨拶すると教えてくれました。このゲストハウスでは、あえて食事の提供はしていません。その代わりに、宿泊客には“庄内バルマップ”という庄内の美味しい飲食店情報が詰まっているマップを渡しています。その理由を、庄内の飲食店をぜひ回ってほしいからだと語る井関さんには、きっとお客さんをシェアするという庄内カルチャーが根付いているのでしょう。
このゲストハウスは、色々な目的で庄内を訪れる人々が、ただ宿泊するだけでなく、庄内ローカルに触れる出発点になっているのだなぁとしみじみ感じました。
豊中で今最も盛り上がりを見せる!?コワーキングスペース
続いて訪れたのは、駅前の商業ビル「サンパティオ」の中にある、クリエイターたちのためのコワーキングスペース「Toyonaka Venture」です。写真やグラフィックデザイン、システムエンジニアなどのクリエイティブ領域で活動する方々の拠点となっている場所で、ゼロイチで何かしたい!という想いのある若手クリエイターたちが集まっています。
Toyonaka Ventureの代表である大隅さんは、実はとよなか地域創生塾の第7期生。地元である豊中を盛り上げたい!豊中をシリコンバレーにしたい!という熱い想いから、技術のあるクリエイターたちが学び、影響を与え合える場所をつくろうとコワーキングスペースをオープンしました。
8期の塾生たちに事業への想いを語る大隅さんは、エネルギーとたくましさに溢れていました。そんな大隅さんが何度も繰り返し伝えていたのは、「縁と勢いの大事さ」でした。大隅さんが手掛ける事業の中にマツエクサロンやおにぎり屋さんがありますが、これらも初めから取り組もうとしたというより、ご縁があって関わるようになったと言います。周囲を巻き込んで活動を続けていったことで、徐々に上手く進んで現在の事業へと繋がっています。
想いを想いだけにとどめず、実際にガンガン行動している大隅さんからは、会社の経営者として、まちづくりプレイヤーとして大切なマインドを教わったような気がします。これから豊中で何かしたい!と考える塾生たちにとって、先輩である大隅さんの活躍はとても刺激になったのではないでしょうか。
とよなか全体でつくる、子どもの居場所
最後に訪れたのは、庄内のとある建物の中にある子どもたちの居場所です。
訪問させていただいたのは、主に中学生以上の子どもたちが集まる場所で、支援や専門機関との連携が必要な子どもたちが安心して過ごせる場所として機能しています。ここを運営する女性の方は、「子どもたちにとって『助けてほしい』と頼りやすい存在を目指したい」と話します。ここに来る子どもたちの中には、初めは周りの大人に助けてと言えなかった人もいましたが、ここで一緒にご飯を食べたり話をしたりするうちに、助けを求めることができるようになったそうです。
居場所づくりは簡単にできることではないし、デリケートな問題を含む場合もあるのが現実です。簡単にできることではないからこそ、豊中市では、子どもたちを一人にしないための居場所づくりをまち全体で行っています。
まちの課題は目に見えるものだけではないし、自分の知らないところにも存在しています。今回のまち歩きは、おそらく塾生たちも詳しいところまでは触れてこなかった課題に触れる貴重な機会になったと思います。
南部コースのまち歩きでは、南部地域のユニークな取り組みや人を知る一方で、様々な課題にも気付かされました。参加した塾生は、今後につながるヒントを得ることができたのではないでしょうか?
まち歩き終了!
まち歩きを終えて、北部コース、南部コースともにショコラに戻ってきました。ここからは全員で1日の振り返りの時間になります。と、まずはその前に“キヨシの時間”が。とよなか地域創生塾第7期の塾生であるキヨシさんによるアイスブレイクでみんな打ち解けていきます。
とよなか地域創生塾第8期には前期の塾生らがサポーターとして関わってくれています。既に活動を始めている前期の塾生らとの繋がりが生まれることで、豊中での活動の幅が広がりそうですね。
アイスブレイクの後はこの日のベストショットお披露目会。みんなの撮った写真を見ながらまち歩きを振り返ります。
どんな資源および課題が豊中にあるだろう?それをどうやって知ればいいだろう?
まち歩きでの気づきを整理し、次回以降に繋げるために最後に豊中の地域資源と課題について考えました。4、5人でグループになってディスカッションした後、全体で共有。
「今日訪れた場所や出会った人が資源なんじゃないか。」
「資源はあるけど、それを知る機会が不足している。情報発信が足りないんじゃないか。」
「課題を知るためには人との関係を作り、直接声を聞くことが必要だと思う。」
「自分がコミュニティに入って、長い時間をかけて課題を知っていくことも重要なのではないか。」
「市民の当事者意識に課題があるのではないか。課題に直面する当事者や活動をしている人たちだけでなく、広く課題を認識してもらう場をもつことで、当事者意識をもち課題に取り組む市民や活動を応援する人が増えるのではないか。」
藤本さんは、地域課題に取り組む際には当事者と関わる中で課題の解像度を解決できる高さまで上げることが重要だと話します。地域課題は総論的に語りがちですが、それは何がどう問題で、誰がどう困っていて、どう解決していけばいいのか、解決のためにはそこまで掘り下げていく必要があります。そのようにして問題を立体的に捉えることで解決のための糸口が見つかるのです。
また、課題と資源がイコールになる場合も多々あるそう。ここで大切なのは視点を変えることで、使われていない資源を資源として認識するマインドセットが重要です。余剰の活かし方をイメージできると資源が生まれる。そんなまなざしをもって地域を見ることで、色々なモノが資源として見えてきます。視点を変えるためには様々な人や場所、事例をインプットして、様々な切り口を持っていることが大事だそうです。
DAY2で実際に見た事例に加えて様々なインプットをしていけるといいですね。
次回DAY3「地域に関わるにあたっての重要なマインドセットやスキルセットを学ぼう!」
実際にまちを歩き、少しずつ地域の特色や課題が見えてきました。とよなか地域創生塾を通して地域に滲みだそうとしている私たち。では、地域に関わるにあたっての重要なことって一体何なんでしょう?
次回DAY3は「コミュニティデザイン」という言葉を広めた山崎亮(やまざき・りょう)さんと藤本遼さんの「ダブルりょう」さんにお越しいただき、地域の方たちとともに活動してきたお二人から、地域に関わる際に重要なマインドセットを学びます。
ぜひお見逃しなく!
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