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ファシリテーションことはじめ。とよなか地域創生塾第7期「DAY4 会議・ワークショップを進めてみよう!」開催レポート

こんにちは!10月初旬にはじまった「とよなか地域創生塾第7期」のイベント・メディアコースも第4回を迎えています。2023年11月26日(日)に庄内コラボセンター「ショコラ」で開催された今回のテーマは「会議・ワークショップを進めてみよう!」。

前半は、NPO法人場とつながりラボhome's vi/ファシリテーターの山本彩代さんより会議・ワークショップのテクニックをその場で実践しながら解説していただきました。そして後半は、グループに分かれて、実際に自分たちで会議を進めてみるという実践の時間に。

今回の講座の中では、ファシリテーションに関するワザがたくさん登場したので、会場の様子を交えつつ基本から応用まで余すところなくお伝えしたいと思います。

(ちょっとおどけて見せる山本さん。こういった表情や表現もファシリテーションにとって重要なのかも?)

<Profile>
山本 彩代(やまもと・さよ)氏
NPO法人場とつながりラボhome's vi/ファシリテーター
1990年大阪府四條畷市出身。2015年より現職。京都市伏見区での市民活動創出会議「伏見をさかなにざっくばらん」事務局を4年間勤め、20以上の活動が提案される場に尽力。現在は「未来のあたりまえを今ここに」を合言葉にNPO・企業・大学でのプロジェクト支援や研修に加え、次世代型組織に向けた組織支援を行う。挑戦したあとの乾杯、偶発性、昼寝、カラオケが好き。共著に『はじめてのファシリテーション』(昭和堂)『描いて場をつくるグラフィックレコーディング』(学芸出版社)、事例掲載に『コミュニティ政策16』(東信堂)、『人と組織の「アイデア実行力」を高めるーOST実践ガイド』(英治出版)等がある。

会場には前回の空間活用コースで作成したオリジナル屋台も登場しました。屋台からひょっこり登場してDAY4スタート!

文:佐々木 一款

O・A・R・Rを大切に

最初に、会議やワークショップで大切なこととして「OARR」という考え方が紹介されました。OはOutcome(目的とゴール)、AはAgenda(予定・流れ)、RはRole(今日の役割)、2つ目のRはRule(大切にしたいこと)です。特にOとAは最初に共有していないと、その日に何をすればいいのかわからない、最後に目的を達成できているか確認できないという困った事態になってしまいます。この日のゴールは「明日からこれやってみよう!が見つかっている」、「グループで話す時に次はこうしてみよう!と思えている」です。達成目指して頑張ります!

アイスブレイクから仕掛けがたくさん

まずはアイスブレイクから。2つの質問に対して、グー(0回)・チョキ(数回)・パー(頻繁)で答えていきます。じゃんけんを使ったこの方法なら普段は自己表現が苦手な人も、気軽に楽しみながら自分を表現するきっかけになりますね。

質問1:ワークショップをやったことある人は?
こちらの質問はグーが多い様子。高齢者向けの健康ワークショップをやったことがある方もいらっしゃいました。

質問2:自分がリーダーになったことは?
リーダー経験がある方はたくさんいるみたい!毎回活気あふれているのも納得です。

(じゃんけんで質問に答えていきます)

続いて、A4用紙を使って「いまここの自分紹介」という準備運動グループワークを行いました。4つ折りにした紙に、①呼ばれたい名前、②今日期待していること、③とよなか地域創生塾がここまで進んできて今感じていることを天気で表す、というユニークな表現方法が用いられました。

天気で表現すると、同じ曇りでも分厚い雲や光が差し込んでいる雲など小さな違いが生まれていて、お互いの感じていることを言葉にするきっかけになるのだそう。「今の気持ちはまだ曇りだけれど、創生塾では晴れになるように過ごしたい」など、天気の表現をうまく使って自分の気持ちを話していきました。

実は、みんなで話し合う前に1人で紙に書く時間をとるのも大事なテクニックの1つなんです。自分が話したいことを可視化して整理することで、いきなりでは発言しにくい人も話し合いに参加しやすくなります。

(天気を使って今の自分の気持ちを表現しました。星がキラキラしているのはどんな気持ちだろう)

また、ワーク中に隣の部屋からミュージカルの歌声が聞こえてきたときの対応が印象的でした(ショコラではさまざまなイベントや講座、ワークショップが開催されています)。参加者の意識が逸れそうになると、普通ならちょっと慌ててしまうかもしれません。しかし、みんなが気になっている「隣で歌ってるよね?」ということをあえて言葉にすると、その状況はなんなのか?気づいているのは私だけかな?といった未解決のモヤモヤが整理され、集中力が戻るんです。おまけに、笑いとともにみんなで場を共有している感覚が生まれるのを感じました。起きたことに臨機応変に対応して、場に声かけをすることも大事なファシリテーションの姿勢でありテクニックなんですね。

そもそも、ファシリテーションってなんだっけ?

アイスブレイクが終わったところで、ファシリテーションとは?という問いが投げかけられます。英語の「Facilitate」という言葉が元になっているこの言葉。僕にとってはあまり身近なものではなく、辛うじて「ファシリテーション=進行役」のイメージがあるくらいだったのですが、山本さんなりのファシリテーションの意味を下記のように教えていただきました。

・緊張を解いて、新しいアイデアの創造性を促進すること
・会議をわかりやすくしたり、事を容易にすること

そして、博報堂・同志社大学・東京工業大学などでファシリテーション・ワークショップ開発に尽力された中野民夫さんによるファシリテーションの定義も紹介されました。

「人々が集い、何かを学んだり、対話したり、創造しようとする時、その過程を、参加者主体で、円滑かつ効果的に促していく技法」

実際に企画を行う段取りは、「くわだてる(企画設計)」「すすめる(進行)」「きく(聴く)」「手をうごかす(描く)」の4段階に分けられるそうです。例えば、ファシリテーターは「くわだてる」から「きく」までを担うなど、色々な役割が存在しているとのこと。山本さんは全体にかかわるグラフィック・ファシリテーションを行うこともあるそうです!

(企画のプロセスがわかりやすく表現されています)

どんな人が参加するの?自分の目で確かめておこう

ここからは、山本さんと株式会社ここにある代表の藤本遼から飛び出したファシリテーションのテクニックをご紹介していきます!

まずは準備編!

お二人に共通していたのは事前に参加者の雰囲気をつかむのがとても大事だということ。山本さんは今回の講師を引き受けた際に「自分で来ている人が多いのか、会社や誰かに言われて参加している人が多いのかわからなかった」だとか。そこで、事前にとよなか地域創生塾に参加して雰囲気を確認してくださっていたそうです。

(株式会社ここにある代表の藤本遼(ふじもと・りょう)。豊富なファシリテーション経験から、実践的なアドバイスを提供しました)

ここにあるの藤本からは、このワークの前日に開催されていた福島県での講演会のエピソードを踏まえ、開始前に少し参加者と会話し、その場にいる意図や気持ちを理解することが大切だという話題提供がありました。講師として呼ばれて地域づくりに関する講演会の会場に行ってみると、参加者の雰囲気が想定していたものと少し違うことを感じ取ったのだとか。そこで、開演前の数分で参加者と会話をすると、お友達同士で楽しみに来たという参加動機が判明します。地域づくりを学びに来た!というスタンスではなかったということですね。そこで藤本は、機転を利かせて事前に予定していた内容を組み替えたそうです。内容を準備する、そして事前に参加者の雰囲気をつかんで調整するという何重もの準備がプロの仕事につながります。

他にも会場設営については、事前に主催者とコミュニケーションをとってイスや机の配置を変える、事前に一番悪い席に座ってみて見え方を工夫するという準備ができるとよいそうです。今回の会場もジグザグに机が配置されていたり、事前に最後列からの文字の見え方を確認したりしていました。藤本が言う「座り位置で知らず知らずのうちに考えが固定してしまう」という言葉にハッとさせられました。

わからん、わからん。だからこそ人に頼ってみよう!

続いて「人に頼ってみよう」編です。みなさん、質問された時は自分で答えを返さなくてはいけないと思い込んでいませんか?実は、自分がわからないということ自体をファシリテーションに活かせるのです。

(人に頼るのもファシリテーターの大事なスキル!山本さんはわからないことも上手に活用していきます)

地域活動では、順調な時ばかりではなく、不満が出ることもしばしば。そんな時こそ、頼ること武器にもなります。解決策を提示するのではなく、「どうしたら良くなると思いますか?」と問い返す。そうすることで、一見不満を持っているように見える人が主体的に解決策を考えるきっかけになったり、自分たちにはなかった視点やアイデアを教えてもらえたりする機会になるようです。普段からわきまえないことを意識し、立場などはあえて気にせず、ワークショップや地域活動の参加者に積極的に頼っているという山本さん。「わからないから、人とつながることができる」こともあると話してくれました。

この話に関連して藤本さんからは、空間活用コースのDAY4「 モノをつくってみよう!」のゲストである今村さんの「質問されたら100パーセントで返さなくていい。壁打ちしながら大きくしていける」という言葉が紹介されます。これを聞いてとよなか地域創生塾の各回とコースはしっかりつながっているんだ!という感覚になりました。「これも意図的な発言ですよ(笑)」という藤本さん。プログラム全体の構造を頭に入れて、意識的に情報を出し入れすることもファシリテーターの大切な役割なんですね。


午前中の最後は、会場からの質問タイム。興味深い質問がいくつも出ましたが、1つだけご紹介します!

Q.知らず知らず自分のやりたい方向に誘導してしまうことがあると思うが、個人としての立場とファシリテーターとしての立場の切り分けはどうすればいいですか。

A.自分がプロジェクトリーダーの場合は、意見を譲らないことも大切。その時には、「ここまではこだわりたい」という線引きを明確にして共有することがポイントです。

会議やワークショップの進行役としてのファシリテーターと、プロジェクトオーナーとしてのファシリテーション。似ているようで違うそのスキルは、経験していく中で少しずつ身についていくものなのだと感じました。

いざ実践!会議をまとめるのは難しい

お昼休憩をはさんで迎えた後半は、参加者から挙がったテーマについて実際に話し合いを行います。5つの班に分かれ、ここまでに提供されたテクニックを使って会議を進行していきます。

各班のテーマはこちら
・よき出会いを作るには?
・ショコラをより良い場所にするには?
・餅つき大会でみんなが話せるようになるには?
・おかずクラブを作りたい
・ファシリテーターとしてのあり方は?

制限時間は20分。進行役と記録役を決めていざスタート。慣れない人もこの機会に進行役にチャレンジしていました。「そもそもこのテーマの意味ってなに?」という確認からはじまり、いろいろな意見を出しているうちにタイムアップ。みなさん、時間配分や議論のまとめ方には苦労したようです。


(みんなで1枚の模造紙に記録していきます)

テーマごとに議論した内容を発表した後は、みんなで振り返りを行います。今回の振り返りで取り入れたのは「グループ観察」という手法。まずはシートに「何をしたか」「どう感じたか」「どんな貢献をしていたか」を記載します。このとき、タイムラインにそって記載していきます。グループ観察では3つの視点が重要です。

①すすめる、達成すること。情報や意見を求めたり、アイデアを練り上げたりと議論を進めていきます。
②つなげる、促すこと。メンバーを肯定したり、参加を促します。
③背景にあるものをひろうこと。時間管理やメンバーの様子から感じられるものを拾います。

(模造紙にまとめた議論内容を発表!記録係の整理力が光ります)
(みんなで振り返ることで、1人での振り返りとは質が違う振返りになります)
(振り返りの様子。ここでも活発な話し合いが生まれます)

山本さんからは、会議の終わらせ方についてのポイントも紹介されました。1つは「最初に決め方の基準を決める」ということ。誰が何分までに、この話に結論を出して終わるということを決めておきます。また、もう1つ大事なのは「デッドラインを決める」こと。みんなの意見をもらっても最終的にはリーダーが意思決定をして伝えることもときには必要です。

実際に地域の会議で重要なことの話題提供もありました。プロジェクトを運営する際には会議の終わりは次の始まりです。大事なことは以下の通り。

①話されたこと、決定した/しなかったこと、タスク/担当/期限の確認
②次回の日程と議題の確認
③決定しなかったことをどうするか?を決める

また、+αとして
④ふりかえり・フォロー会を設ける
⑤3回先の日程・候補日を確定する
⑥告知や調整の場合は「誰に、どの順番で、何を、どのように」伝えるのかを確認する

①から③はもちろん、プロジェクトを立ち消えさせないためには⑤が大事だということを強調されていました。曜日固定にして、参加者が少なくても止めずに、常にプロジェクトを動かし続けることが重要です。

最初のゴールは達成できた?

6時間にわたる濃厚な学びの時間もいよいよ終わりが近づき、振り返りの時間を迎えます。

冒頭で提示されていたこの日のゴールは、「明日からこれやってみよう!が見つかっている」、「グループで話す時に次はこうしてみよう!と思えている」でした。会場の声を聴いていると、「この天気のアイスブレイク使ってみたい」など、今日の学びを今後の活動に活かそうとする声があちこちから聞こえてきました。みなさんそれぞれのゴールを達成できているようでした!ゴールを提示して、そこまでしっかりと導く、山本さんのファシリテーションの真髄が見られました。

次回は12月10日に行われる、DAY5「余白の時間① これまでの学びを振り返って今後のアクションを考えよう!」です。とよなか地域創生塾も折り返しになりますが、ここまでで学び、使ってきた知識をもとにたくさんの面白いプロジェクトが生まれる予感がします!


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